2015/10/29
面白いんだけど,とてつもなく眠くなる時が来て…〜

「オールド・テロリスト」
〜村上龍〜

『オールドテロリスト』:村上龍(むらかみ りゅう):2015年6月30日:\1800:文藝春秋:県立M高校図書館
 もうひとりの村上と言われ続ける人だが,骨のある本を書くぞ!
〜出版不況でフリーライターの仕事が激減し,妻子に逃げられたセキグチは,元上司のオガワから取材を依頼された。満州国の生き残りを名乗るヨシザキという老人の,NHK西玄関でテロを起こすというのだ。半信半疑で出向くと,外注技術スタッフらしき若い男の表情がトツキンに似ていると注視していると,異様な臭いが流れ,直後に火柱が揚がった。若い男女の犯行声明では「赤身」を使ったと云い,他にも仲間がいて武器も多様だと隷書で書かれ,排気ガス中毒で死んだ。珍しい書体と学んだのが駒込の文化センターだと聞いて訪ねていくと,老人達が古い歌謡曲を歌い,持ち上げられた老人が真剣でチャイナ服を着せられた藁人形を斬る奥で,カツラギという二十代後半の女性が楷書を練習していた。スコーンを食べないかと誘うと,テラスに行きたいと言われ,たまプラーザに着いて内ポケットにマイクロフィルムが貼り付けられた紙片を発見する。契約した出版社の同室のマツノ君に見せると,文字化けしているが画像だろうと云われ,修復すると簡単な線で描かれた人物が回転するもので切断している稚拙な絵で,大田区池上柳橋商店街@26日夕方とある。此処へはマツノと二人で出掛けたが,祖母を自転車で撥ね殺された恨みを持つ無職の男性が,樹木の枝葉を刈る刈り払い機を用いて母子二人乗りの自転車を襲い,男性一人の首を綺麗に刈り取って,自分の首もその刃あてがって自殺した。犯人のタキザワをカツラギは知っていると云い,渋谷の心療内科医・アキヅキは色々な話を糸電話で交わしながら,映画を見るなら歌舞伎町で・原発で日本を焼け野原にするのなんかは簡単だと言い始める。普通にコミュニケーションがとれる様になったカツラギとマツノを連れて,アイドルのドキュメンタリー風映画を見に行くと,NHKで嗅いだ臭いが漂いはじめ,更に異常を感じて非常口へ移動する際,イペリットという糜爛性ガスが巻かれたことを悟ったのは,付着した足が大きく腫れていたからだ。脱出後,大急ぎでサウナでガスを洗い流し,不安を抱える三人はセキグチの4畳半で生活を始めるが,死者867人で怪我人を加えると千人になる。はカツラギはおじいちゃんの知り合いに会いに行こうという。その老人は面影橋の小さな二階屋で寝ているが,寝室には最新の医療機器がある。コンドウ・サノ・ヨシムラともいう満州国亡霊のともいうべき老人は,カツラギユリコの口を介して,アキヅキは組織の暴走を知って自殺したが,カツラギを守ってキニシズギオの暴走を停めろという。手掛かりはアキヅキの連絡先,小学生時にカツラギにアヌルセックスを求めた叔父・ナガタは分析の専門家であると云うが,中学生になったキサラギに迫って片腕を切り落とされた。税理士事務所から資料を盗み出すのに最適なのは,ロックウェストの店主の知り合いである,イランとのハーフ・ジョーが思い浮かんだ。ジョーは拳の威力を見せつけて,500万で資料を売ることを強要し,領収書まで取っていた。書類を分析して解ったことは,アキヅキ医師がこの所頻繁にバイク便を利用している事で,届け先は新光興産という老舗輸入業の関連会社で,光石幸司という70歳代の人物が浮かび上がってきた。伝票には地名が書かれ,それはテロが起こった場所を示しており,さらに原発が置かれている地名と「88」という数字も浮かんできた。老人は信頼できる政治家か官僚に相談しろと云うが,思い浮かぶのは売春組織と係わった山方吾郎という人物だけ。山方に話すと,怒りを貯め込んでいる人達の行動は面白く,その活動に飛び込んでみたいとも云う。老人に報告すると,ナチスドイツ製の88ミリ高射砲を満洲から3機運び入れ,砲弾は100発だという。暴走した活動を阻止するために10億の金が用意され,三軒茶屋のビルのワンフロアが用意されたが,老人が死んだと弔問に出向くと,件のミツイシから声を掛けられ,静岡で生シラスを食べさせる食堂に招待したいという。セキグチは逃げ出したいが,カツラギとは離れたくない。自分は必要とされていないと考え始めたマツノは故郷の青森に帰り,ミツイシはカローラで迎えに来た。カローラが食堂に着くと,そこには将棋道場とNHKで見掛けた太田が元気な姿でいて,更にカラオケで剣舞を披露していたカリヤが来る。現実逃避のためにアルコールと安定剤を飲んで過ごした二人は,夕方,太田の倉庫兼工場で,高射砲を目にし,犠牲となる若者三人も用意された。ミツイシは真実を書いて知らしめろという。マスコミは特定秘密法護法施行後,恐れをなして真実の報道をしなくなった。セキグチなら書けるはずだと云われる。25発の砲弾が原発施設に向けて速射され,ミツイシが付けたラジオでは,炉から1km離れた原発の見学施設が爆弾で破壊されたという。近くの駐車場も粉微塵に吹き飛ばされていた。三軒茶屋に帰っても書き出せないセキグチは山元に連絡を取り,違和感を持つのは経済が絡んでいるからに違いなく,外資系のエコノミストに意見を聞けと云う。思い浮かんだのは,シアトルにいる元妻の由
美子。上司に連絡を取ったカツラギから渡された携帯で事情を話すと,元女房は,「あなたが書いたら円が大暴落し,中国が日本企業の買収に走る」と告げた。内閣府の副大臣・西木にアポを取ると言う。3時間の確認の後,内閣府にトウゴウの手配したハイヤーで向かって会談すると,明らかに軍人であるアメリカ人が同席し,もう一度あの工場にメンバーを集められないかという。理由が見あたらないとセキグチが戸惑うが,カツラギはルポを書くのに集合写真が必要だと言えば良いという。決まったは決まったが,ミツイシ達が特に嫌いな訳ではなく,逡巡していると,ミツイシから次の水曜はどうかと言ってきた。ハイヤーから行った先が分かり,内部の通報でアメリカ海兵隊が掃討作戦を展開することを知りながら,敢えて受けて立つ気になったのだ。水曜日,ヘリは高射砲であっさり斥け,満月の夜,どう攻めてくるか訝りながら待つと,目の前の太田の顔の上半分が吹き飛んだ。機関砲を備えたドラム缶ほどの8の字形をしたドローンによる攻撃だった。気を失って地下室に連れ込まれたセキグチはミツイシから,カツラギと一緒に梯子を登るように指示した。かれらが地上に辿り着くと,ガソリンで満たされた地下に発火筒が投げ込まれ,セキグチはこの事実を書かなければと固く決心した〜
 カツラギの分類法は@動物・植物A元気・病人・死人Bおじさん・普通・おばさん,だ! あとがきで,70代から90代の男性は社会から軽視されているから…と述べているが,確かに社会のお荷物で,早くあの世へ旅立てば良いのに…と思うことがある。その一方で運動しているじいさん達は元気だよぉ。テレビでレギュラー番組を持っているけど,それもいろいろ役に立っているだろうけど,ちょっと余計じゃないかという情報もあるね。例えば,中野のゲイの喫茶店,元プロスポーツ選手を買いに来る女性向け秘密売春クラブとかが代表例だけど・・・青森に帰しちゃった若者も元ボクサーのジョーとか必要だったのだろうか?

10月の記録にジャンプ

読書記録の目次に戻る

最終更新日 : 2015.10.29

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送