2015/10
〜10月に読んだ本〜

ジャイロスコープ ☆☆ なりたい ☆☆☆ まったなし ☆☆☆ 淵の王 ☆☆☆
地方消滅 ☆☆☆ 意次ノ妄 ☆☆☆ 岳飛伝M撃撞の章 ☆☆☆ 劉邦 上 ☆☆☆☆
劉邦 中 ☆☆☆☆☆ 劉邦 下 ☆☆☆☆ スクラップ・アンド・ビルド ☆☆ オールド・テロリスト ☆☆☆☆

冊数が多いのは真面目に仕事をしていない証拠

読書記録の目次に戻る

15/10/29
『オールド・テロリスト』:村上龍(むらかみ りゅう):2015年6月30日:\1800:文藝春秋:県立M高校図書館
★★★★
 もうひとりの村上と言われ続ける人だが,骨のある本を書くぞ!
〜出版不況でフリーライターの仕事が激減し,妻子に逃げられたセキグチは,元上司のオガワから取材を依頼された。満州国の生き残りを名乗るヨシザキという老人の,NHK西玄関でテロを起こすというのだ。半信半疑で出向くと,外注技術スタッフらしき若い男の表情がトツキンに似ていると注視していると,異様な臭いが流れ,直後に火柱が揚がった。若い男女の犯行声明では「赤身」を使ったと云い,他にも仲間がいて武器も多様だと隷書で書かれ,排気ガス中毒で死んだ。珍しい書体と学んだのが駒込の文化センターだと聞いて訪ねていくと,老人達が古い歌謡曲を歌い,持ち上げられた老人が真剣でチャイナ服を着せられた藁人形を斬る奥で,カツラギという二十代後半の女性が楷書を練習していた。スコーンを食べないかと誘うと,テラスに行きたいと言われ,たまプラーザに着いて内ポケットにマイクロフィルムが貼り付けられた紙片を発見する。契約した出版社の同室のマツノ君に見せると,文字化けしているが画像だろうと云われ,修復すると簡単な線で描かれた人物が回転するもので切断している稚拙な絵で,大田区池上柳橋商店街@26日夕方とある。此処へはマツノと二人で出掛けたが,祖母を自転車で撥ね殺された恨みを持つ無職の男性が,樹木の枝葉を刈る刈り払い機を用いて母子二人乗りの自転車を襲い,男性一人の首を綺麗に刈り取って,自分の首もその刃あてがって自殺した。犯人のタキザワをカツラギは知っていると云い,渋谷の心療内科医・アキヅキは色々な話を糸電話で交わしながら,映画を見るなら歌舞伎町で・原発で日本を焼け野原にするのなんかは簡単だと言い始める。普通にコミュニケーションがとれる様になったカツラギとマツノを連れて,アイドルのドキュメンタリー風映画を見に行くと,NHKで嗅いだ臭いが漂いはじめ,更に異常を感じて非常口へ移動する際,イペリットという糜爛性ガスが巻かれたことを悟ったのは,付着した足が大きく腫れていたからだ。脱出後,大急ぎでサウナでガスを洗い流し,不安を抱える三人はセキグチの4畳半で生活を始めるが,死者867人で怪我人を加えると千人になる。はカツラギはおじいちゃんの知り合いに会いに行こうという。その老人は面影橋の小さな二階屋で寝ているが,寝室には最新の医療機器がある。コンドウ・サノ・ヨシムラともいう満州国亡霊のともいうべき老人は,カツラギユリコの口を介して,アキヅキは組織の暴走を知って自殺したが,カツラギを守ってキニシズギオの暴走を停めろという。手掛かりはアキヅキの連絡先,小学生時にカツラギにアヌルセックスを求めた叔父・ナガタは分析の専門家であると云うが,中学生になったキサラギに迫って片腕を切り落とされた。税理士事務所から資料を盗み出すのに最適なのは,ロックウェストの店主の知り合いである,イランとのハーフ・ジョーが思い浮かんだ。ジョーは拳の威力を見せつけて,500万で資料を売ることを強要し,領収書まで取っていた。書類を分析して解ったことは,アキヅキ医師がこの所頻繁にバイク便を利用している事で,届け先は新光興産という老舗輸入業の関連会社で,光石幸司という70歳代の人物が浮かび上がってきた。伝票には地名が書かれ,それはテロが起こった場所を示しており,さらに原発が置かれている地名と「88」という数字も浮かんできた。老人は信頼できる政治家か官僚に相談しろと云うが,思い浮かぶのは売春組織と係わった山方吾郎という人物だけ。山方に話すと,怒りを貯め込んでいる人達の行動は面白く,その活動に飛び込んでみたいとも云う。老人に報告すると,ナチスドイツ製の88ミリ高射砲を満洲から3機運び入れ,砲弾は100発だという。暴走した活動を阻止するために10億の金が用意され,三軒茶屋のビルのワンフロアが用意されたが,老人が死んだと弔問に出向くと,件のミツイシから声を掛けられ,静岡で生シラスを食べさせる食堂に招待したいという。セキグチは逃げ出したいが,カツラギとは離れたくない。自分は必要とされていないと考え始めたマツノは故郷の青森に帰り,ミツイシはカローラで迎えに来た。カローラが食堂に着くと,そこには将棋道場とNHKで見掛けた太田が元気な姿でいて,更にカラオケで剣舞を披露していたカリヤが来る。現実逃避のためにアルコールと安定剤を飲んで過ごした二人は,夕方,太田の倉庫兼工場で,高射砲を目にし,犠牲となる若者三人も用意された。ミツイシは真実を書いて知らしめろという。マスコミは特定秘密法護法施行後,恐れをなして真実の報道をしなくなった。セキグチなら書けるはずだと云われる。25発の砲弾が原発施設に向けて速射され,ミツイシが付けたラジオでは,炉から1km離れた原発の見学施設が爆弾で破壊されたという。近くの駐車場も粉微塵に吹き飛ばされていた。三軒茶屋に帰っても書き出せないセキグチは山元に連絡を取り,違和感を持つのは経済が絡んでいるからに違いなく,外資系のエコノミストに意見を聞けと云う。思い浮かんだのは,シアトルにいる元妻の由
美子。上司に連絡を取ったカツラギから渡された携帯で事情を話すと,元女房は,「あなたが書いたら円が大暴落し,中国が日本企業の買収に走る」と告げた。内閣府の副大臣・西木にアポを取ると言う。3時間の確認の後,内閣府にトウゴウの手配したハイヤーで向かって会談すると,明らかに軍人であるアメリカ人が同席し,もう一度あの工場にメンバーを集められないかという。理由が見あたらないとセキグチが戸惑うが,カツラギはルポを書くのに集合写真が必要だと言えば良いという。決まったは決まったが,ミツイシ達が特に嫌いな訳ではなく,逡巡していると,ミツイシから次の水曜はどうかと言ってきた。ハイヤーから行った先が分かり,内部の通報でアメリカ海兵隊が掃討作戦を展開することを知りながら,敢えて受けて立つ気になったのだ。水曜日,ヘリは高射砲であっさり斥け,満月の夜,どう攻めてくるか訝りながら待つと,目の前の太田の顔の上半分が吹き飛んだ。機関砲を備えたドラム缶ほどの8の字形をしたドローンによる攻撃だった。気を失って地下室に連れ込まれたセキグチはミツイシから,カツラギと一緒に梯子を登るように指示した。かれらが地上に辿り着くと,ガソリンで満たされた地下に発火筒が投げ込まれ,セキグチはこの事実を書かなければと固く決心した〜
 カツラギの分類法は@動物・植物A元気・病人・死人Bおじさん・普通・おばさん,だ! あとがきで,70代から90代の男性は社会から軽視されているから…と述べているが,確かに社会のお荷物で,早くあの世へ旅立てば良いのに…と思うことがある。その一方で運動しているじいさん達は元気だよぉ。テレビでレギュラー番組を持っているけど,それもいろいろ役に立っているだろうけど,ちょっと余計じゃないかという情報もあるね。例えば,中野のゲイの喫茶店,元プロスポーツ選手を買いに来る女性向け秘密売春クラブとかが代表例だけど・・・青森に帰しちゃった若者も元ボクサーのジョーとか必要だったのだろうか?

読書記録の目次に戻る

15/10/25
『スクラップ・アンド・ビルド(文藝春秋)』:羽田圭介(はねだ けいすけ):2015年9月1日:\970:文藝春秋社:県立M高校図書館
★★
 単行本より,今ある雑誌の方が直ぐ読める。カワセミの表紙の文藝春秋9月号で,よく売れる
〜長崎から埼玉を経由して東京南西部に来た祖父の口癖は,死にたい・死んだ方がいい・早くお迎えが来て欲しいだが,母は冷淡だ。87歳の祖父が早く死んだ方が,子孫のためになるのは間違いがない。カーディーラーを7ヶ月前に退職した健斗は,筋力を弱めて寝たきりになって,薬漬け病院に入院して死期を早めるのが良いと思って,要求された用を足した方が良い。中高とスキー部の冬以外の訓練を思い出して走ったり,彼女との3度目の性交ができるように鍛え,痛みに耐えながら筋肉を鍛え,行政書士の受験勉強をし,三流大学でも中途採用してくれる会社の面接を受ける〜
 「火花」の方が,直木賞っぽいって思うんだけど,これが直木賞かと思ったら,両方とも芥川龍之介賞でした。第153回です。介護小説ですって!

読書記録の目次に戻る

15/10/24
『劉邦 下』:宮城谷昌光(みやぎたに まさみつ):2015年7月20日:\1600:毎日新聞社:県立M高校図書館
★★★★
 最後になって先生≠チぽくなちゃった。史記にはこう書いてあり,漢書にはこうかいてあるが,どういうことか判断つかないってね
〜楚は趙を救いに秦の1/10の兵で向かいこれを撃破し,碭に留まっていた劉邦にも征西の要請が届く。劉邦は,まっすぐ北へ向かわず,北の昌邑を攻めるが果たせず,酈食其の手引きで陳留に招かれる。開封から白馬へ進み,潁川郡と張良と再会を果たし,兵数は2万に,南陽で3万に,宛で7万5千に達する。南に迂回し,胡陵から武関に進み,𡸳関を落とし,藍田で二世皇帝の死に接し,咸陽で秦王となった子嬰の出迎えを受ける。臣下に諫められて覇上に退くが,函谷関を閉じて,項羽に疑いを持たれ,張良と項伯の交際に救われ,鴻門で謝罪が受け入れられた。漢中王となった劉邦は,逃げた韓信を連れ戻した蕭何に驚き,韓信を最上位の将に置き,関中から東征する策を受け入れる。櫟陽を整備した漢は,斉を攻めて釘付けになっている項羽の留守に彭城を陥落させるが,戻ってきた項羽に奪い返され,沛県で子二人を拾い,下邑を経由して碭県で態勢を整え,滎陽に籠もり,陳平に財宝を授けて項羽と范増を離反させ,一人で帰る范増は急病死したが,楚の包囲は堅い。囮を出して脱出した劉邦は,袁生の策で,櫟陽から武関を経由して南陽で楚軍の猛攻を受け,滎陽の兵に一息吐かせたが,気が付くと彭城にちょっかいを出された楚軍は泗水郡に南下した。これを斥けて帰着した項羽により滎陽は陥落し,次は成皋であるが夏侯嬰の勘が当たって脱出した劉邦は,修武で休息する韓信を訪問し,魏・趙・斉への遠征を命じる。広武山に逃げた漢軍と直ぐ隣の山頂に楚軍が対峙して膠着した。関中からの補給に滞りがない漢は,黥布を九江王に封じ,張耳を趙王,韓信を斉王として,三国で南方を攻めさせ,楚の補給路を断った。講和が成立し,引き上げる項羽を漢軍は追い続け,垓下で停まった楚軍は包囲された…〜
 行ったり来たりが素早い。距離は問題じゃなくて,気持ち次第って事かな。もう…断定して…こうだ!って書いちゃえば良いのにねぇ…小説なんだから…と最後は思った。史実に忠実でありたいんだろうけど

15/10/22
『劉邦 中』:宮城谷昌光(みやぎたに まさみつ):2015年6月20日:\1600:毎日新聞社:県立M高校図書館
★★★★★
 三巻同時かと思ったら月毎だった
〜沛県に凱旋した劉邦は郡府の周苛が窮地に陥っていると踏み,薛県の陳武が挙兵するので,薛を攻めてほしいとの依頼に樊噲が乗り込み,郡守にやむなく従った周苛・周昌を救い出した。薛兵の間に入って,陳武を救い,胡陵の監平を捉えたが解き放ち,亢父と万与は落としたが,雍歯が魏に近寄って籠もった豊邑を落とすには兵数が不足していた。兵を借りるために出向いたのは留県で,景駒を楚王に建てた秦嘉に願い出るが,往きに出会ったのが,韓の再興を期す張良で,留県で協力を申し出たのは,かつて劉邦を救った寧君であった。寧君も五彩の気を見たのだった。劉邦と寧君が豊邑に向かう途中,陳勝は殺害されていた。碭県からは,陳濞・陳賀が現れ,秦兵を追い払ってくれる様にとの懇願に応じ,攻撃目標を碭に変更した。遭遇戦となった司馬イに敗れるが,取って返して,碭県を解放したのは,張良の献策だった。豊邑を攻め続ける,南から7万の兵を擁する新勢力が現れたという。項梁と,その甥・項籍(羽)だ。秦嘉は敗死し,寧君は救われ,劉邦の軍勢は1万に達した。薛に入った項梁の様子を蕭何に探らせ,連携の道を模索する。項梁から将兵を借りた劉邦は豊邑を落とし,任敖にこれを託して,二つ目の根拠地となった碭に帰還した。楚王の孫・懐王を奉戴したしらせに,張良は馳せ参じた武人達の中に,韓王の遺児・横陽君を発見し,劉邦から泣く泣く離れていった。この時点で,秦の他に,張耳・陳余が作った趙,韓広の燕,周市が宰相の魏,田・の斉の5国が存在した。秦の将・章邯が東阿を討つ作戦で,章邯は敗走し,劉邦と項羽は西行した。亢父・東緡・爰戚・甄城・都関・城陽を攻め落とし,濮陽で手こずると定陶から先は劉邦が単独で臨斉・巻・滎陽と攻め落とし,定陶に留まっていた項羽が追ってきて油断をした定陶は項梁が攻め落とした。しかし,外黄・陳留を項羽が中心で落としたいた裏で,韜晦していた章邯が定陶を落として項梁が殺害された。彭城を根拠とした楚王・懐は,宋義を上将に任命し,関中を制した者を王とすると宣言するが,応えたのは劉邦と遅れて項羽。許されたのは劉邦だけだった。宋義の本隊の露払いとなった劉邦は,安陽から杠里,さらに宋義が向かう斉の途中にある昌邑を攻めるが,宋義の狙いが斉との連携にあって趙の救出にないと気付いた項羽は,宋義を殺し,楚王から上将に任命され,西を目指す〜
 いやいや動き回ること,動き回ること! 中巻から地図が付いたが,これがないと判らない。二次元の地図だから大変さは解らないけど,動き回るねぇ。さあ,関中を目指すぞ!

読書記録の目次に戻る

15/10/20
『劉邦 上』:宮城谷昌光(みやぎたに まさみつ):2015年5月20日:\1600:毎日新聞社:県立M高校図書館
★★★★
 どういう劉邦を描くかと思ったら,実にオーソドックスで,不思議な力を持っている人物として
〜47歳の劉季は豊邑の出身だが,跡取りではなかったから少年としてあちらこちらを流浪し,客となって過ごしたが,いわば不良で悪党の一歩手前。富裕な呂公が泗水に越してきて挨拶に出向き,ありもしない祝い金の金額を他の十倍書いて目に留まり,次女を貰うことになった。曹氏という女性がいて子もなしていたが,所詮は妾。毒には毒でと,泗水亭長という吏員になったが,目立った働きはない。張耳に世話になっていたが,郡界を逃げ回っていてお尋ね者になった寧君が,その恩人かも知れない。夜,川で小用を足していると,気配がして目の前の川に飛び込んだが,剣士に追い掛けられ,絶体絶命の危機を救ってくれたのは,寧君だった。始皇帝が死亡し,二世皇帝が即位し,り山に泗水と豊邑の百人を引き連れていくが,二泊目に豊邑から来た三十名の内三名を除いて逃亡した。全員が罪の問われることは必然,皆を集めて,亭長が逃亡したと言えば罪に問われないと言い聞かせ,泗水に返すが,30名余りが劉季に従った。県界の山沢に一同は住み始め,義弟であるハンカイが沛県に知らせる。妻の呂雉は夫の居所が分かると訪ねてきた。北の警備に行こうとして大雨に阻まれた陳勝・呉広が反乱の兵を集め,陳県を中心に10万の兵を率いるようになり,陳勝が王を名乗ると,沛の県令も慌てだし,簫何と曹参に謀ると,劉季の罪を赦し招くべきだという。この意見を入れ,赦免状をハンカイに持たせると,劉季と同日生まれの幼馴染みである豊邑の廬綰に夏侯嬰も加わった。沛県に着くと令は心変わりがしたようで,簫何と曹参も暗殺されそうになって,逃げ出してくる。簫何は父老を動かすために矢文を放ち,翌朝,劉季は県令として迎えられ,一月余りで有望な行政官としても認められる。豊邑の富豪・雍歯は外に力を示せと言う。薛県の二城を攻めるが落とせず,豊邑に滞在中,秦の軍勢・監平に取り囲まれたが,狙いは自分の命だと理解した劉季は,自分が守る北門に全戦力が投入されると読んで,本陣を襲う埋伏部隊を用意してこれを殲滅し,沛県に凱旋した〜
 過去を振り返る時,時系列が逆転する時には,一行空けてくれると読みやすいのになぁと思っていたのだが…まあ,それも馴れる。とばして読まなければ良いだけの話だ。人物の描き方に癖がなくて,まっすぐだ。劉邦を誣告した人物が誰だか描かれていないが,これからそれが明らかになるのだろうか? 読み終わって,奥付を見ると毎日新聞社が出していて,三巻同時だから書き下ろしかと思ったら,新聞連載! 新聞連載は,書き換えて辻褄を合わせる場合があるのだが,宮城谷先生は加筆修正せず,だから,一行空けることもしていない。印刷の段階で,一ページの行数を抑えているので,行間が広くなっているのも読みやすくなっている部分だろう。字のポイントも多少大きいのかも知れない。ふりがなもふってくれているし…って事は,編集部が偉い?

読書記録の目次に戻る

15/10/18
『岳飛伝M撃撞の章』:北方謙三(きたかた けんぞう):2015年8月30日:\1600:集英社:茂原市立東部台文化会館
★★★
 秦容と岳飛の北進・東進が進む一方で,海陵王は南宋と講話して梁山泊への侵攻を準備
〜岳飛が景嚨を進発して,大理から南宋領を侵すが,高山兵のお陰で城を落とし,成都府まで十の砦を築いた。南宋の組織的な反攻がないのは,秦容が小梁山の兵を率いて北進しているからだ。王清が潜んでいる陳家荘が南宋に潰されそうになって,南へ脱出するが,港で会った張朔は王清と妻・鄭涼を十三湊へ送り込んだ。李俊が金居のような暮らしをしている。岳飛が東へ進むと背後に殺気を感じて,横に注意が払われなかったところを程雲に奇襲を掛けられた。梁山泊は胡吐児に父・楊令の吸毛剣を史進に託して届け,金の総帥・兀朮は北辺の地へと送り出す。楊令の剣で梁山泊と戦ってはならないという気持ちが双方に通じていた。南宋の秦檜は桑の栽培と絹織物を物産の軸に据え,戦費を楽々と稼ぐと踏んでいる。秦檜の腹心であった許礼は大理との国境線に追いやられれ,半年後の反転攻勢へ備える〜
 この前の巻で,西遼の執政を母大虫と書いたが,顧大嫂でした!! 日本で隠居暮らしをしている李俊は,溺れそうになった日本人少年を助けて,王清に船に引き上げられたけど,結局・息を引き取ったのだろうなぁ

読書記録の目次に戻る

15/10/15
『意次ノ妄』:佐伯泰英(さえき やすひで):2015年6月15日:\1300:文藝春秋:県立M高校図書館
★★★
 「妄」とは出鱈目のことだそうだ。居眠り磐音シリーズ49
〜速水左近が小梅村を訪ねてきて城中の噂として田沼意次が病死したという。密かに屋敷を抜け出した意次直属7人の剣客は,弥助が追って,寸又峡で山籠もり中。松平定信への復讐をなす積もりだろうが,騒動を起こさせてはならない。刃を坂崎道場に向けるべく,利次と霧子の夫婦が寸又峡を分け入っていく。田沼屋敷で働いていた糸女がやってきたが,馬はここまでと馬子に言われ,書状を預かることができた。寺の和尚に偽書を認めて貰い,様子を見る。里に下りてきた一味は服と髪を整えるが,酒好きは酒屋に出向いて只酒を飲もうとして,女房に咎められ刺殺するが,それを見ていた霧子が咄嗟に後ろから心臓を刺して一人始末した。宿を取ろうと先送りした一人は,田沼の使いの糸女と出会ったが,利次が彼らを気絶させ,髪をばっさり切り落として人前に出られない姿とした。沼津では道場破りで宿を得,箱根に向かったかに見せかけたが,船を奪って伊豆を大回りするつもりらしい。先に帰ってきた弥助・利次・霧子は事情を磐音に告げ,老中の警護に数名の門弟を送り出す傍ら,前田奈緒の商売が奢侈禁止令で左前になる前に,吉原への手蔓を使った。ある日,道場の稽古終わりに武芸者がやってくるが,磐音の娘・睦月と九つで一人稽古を続ける空也が人質になってしまった。空也は自分に刃を突きつけている卑怯者と立ち合いたいと願う。空也の木刀が示現流で振り下ろされ,磐音の太刀が柳生永為の首筋を捉えた〜
 珍しく短いあとがきがあったので読んでみると,50巻で完結のつもりだったが,来年の1月に50・51と一緒に出て,終わるというエクスキューズ

読書記録の目次に戻る

15/10/10
『地方消滅』:増田寛也(ますだ ひろや):2014年8月25日:\820:中央公論新社:県立M高校図書館
★★★
 896の市町村が消える前に何をすべきか/東京一極集中が招く人口急増
〜日本は2008年をピークに人口減少に転じ,2050年に9708万人,2100年に4959万人。僅か百年足らずで約40%,明治末の水準まで急減する。合計特殊出生率,2005年に過去最低の1.26を記録し,2013年に1.43まで回復しているが,人口置換水準2.07に及ばない。地方の多くは既に高齢者を含めて人口が急減する事態を迎えている。地方から大都市圏への人口移動は進み,特に東京圏の人口は今より過密になる。東京の出生率は1.13と低くて人口再生産力に乏しく,地方の人口が消滅すれば,東京への人口流入がなくなり,いずれ東京も衰退する。東京を持続可能な都市とするためにも人口の一極集中を改善する必要があり,東京の超高齢化対策も必要だ。日本は,今後若年女性数が急速に減少するため,出生率は少々上昇しても,出生数は減少し続け,今から生まれてくる世代が子供を持ち始めるまでの数十年間,人口は減少し続ける。出生率改善が5年遅れる毎に将来の安定人口が300万人ずつ減少する。日本国民の中に子供を持ちたい希望(希望出生率1.8)は多い。子育て支援だけでなく,晩婚化や若年層の所得問題など総合的な対策ができれば,政策により出生率が向上しているフランスやスウェーデンのように出生率が向上する。日本を多民族国家に転換する程の大胆な受け入れをしなければ出生率低下はカバーできない。撤退・反転として,地方中核都市が人口流出のダムの役割を果たすべきで,その道は産業誘致型・ベッドタウン型・公共財主導型・学園都市型・コンパクトシティ型があり,産業としては観光・農業・林業・中小製造業もある。東京は人口のブラックホールとなってしまう〜
 2015新書大賞第1位…って印刷しちゃうのが嫌だなぁ。これはムックにして売るべきだろうが,新書の方が暫く,オフィスの本棚に置いて貰えるから新書にしたのだろうね。雑誌スタイルだとすぐ捨てられちゃう。5年置いて貰って,国勢調査が更新されたら新しい本を買わせるという売り方だね。ま,政策担当者に呼んで貰うことが大事だからね。著者は東京生まれで東大を出て,建設省に入って,95年から岩手県知事2期,07年から総務大臣で,2011年日本創成会議座長。若い女性は地域で大事にしなくちゃ!!

読書記録の目次に戻る

15/10/08
『淵の王』:舞城王太郎(まいじょう おうたろう):2015年5月30日:\1500:新潮社:県立M高校図書館
★★★
 雑誌「新潮」の1月号に掲載…三部構成の意味が分からないょぉ
〜中島さおり:彼氏の西村三奈想とはセックスを済ませているが,夢中になれず好きでないのかも知れない。大学進学で福井から東京に出てきて,何となく交際は終わり,大学の友達と行った鹿児島で,桜島の噴火に遭遇し,麓に住む人達を救いに行かなくて良いのだろうかと想ってしまう。小学校時代に忘れ物を取りに戻って暗くて一人で帰れず,縋った杉田浩輝君の事が気になる。地元に残った大橋伊都ちゃんが色々教えてくれるが,杉田君の彼女からDVで相談を受けていると云う。結局,二人は結婚し,子供も出来たが,子育ても衣都は相談に乗っているのだ。ある夏,さおりが帰ってこないと,衣都は余所の子を殺してしまうかも知れないと涙ながらに訴えるのだ。尋常でない事態に深夜バスで福井に帰ったさおりは,衣都が新たに借りた部屋で我が物顔に振る舞う母子を見て,杉田を駄目にした原因が女の方にあると理解し,出て行くように宣言すると母となった女は椅子を振り下ろし,幼い娘に鋏で首を刺すように命令する。その鋏を蹴り入れようとするのは,運転手となって行動していたさおりの弟に阻止された。堀江果穂:古びた文学全集を読もうと決めていた果穂は,読んでも覚えていないことを姉に告白するが,読んだという事実が大事だといい,漫画も薦められる。グルニエにたくさんあるというが,そのグルニエ自体が果穂の家にはない。中学時代から始めたテニスは,中学時代も高校時代も都の準優勝。高校時代は,コンビニで漫画を立ち読みするようになったが,さりげなくお尻を触る親父に舌打ちをすると,待ち伏せされていそうな雰囲気を察知し,公園で撒いて逆に住まいを確かめる。2年後,親父は女子高生を追い回した挙げ句,刺して逮捕される。アパートに寄ってみると,同じ学年の痴漢の息子が話しかけてくる。両親は離婚しているが,彼は学校にいられなくなるが,電話番号を交換し連絡を取り合う仲になる。大学に通い始めて再会した広瀬順は,漫画だけでなくアニメを紹介する。トトロを気に入った果穂は,さつきを描きたくなり,練習するが納得いかない。果ては,美術学校に通い始めて絵を習い,雑誌にテニス漫画を投稿する。不思議な設定の漫画は受けて売れっ子になるが,顔の表情がないお化けのような女性を無意識のうちに描いていた。お化けは退治されなければならないと考える果穂は,新たな漫画でお化け退治を始め,久し振りに帰った実家のリヴィングからありもしないグルニエに36歳で処女のまま果穂は消えていく。中村悟堂:会計事務所に勤める悟堂の彼女:湯川虹色は共通の友人である斉藤範子の話題を持ち出す。結婚して福井に住んでいるが,子供が生まれるというのに旦那は浮気しているという。子供は死産で旦那とは離婚となったが,その影響があってか脳溢血で斉藤さんは倒れたのだ。布団・・・ごごご悟堂と叫んでいたというので,悟堂も来てみると,斉藤さんは普通に話をしている。慰謝料代わりに貰った新築の家の片づけに,悟堂と虹色が来てみると,妙な物音がして,丸裸の男を追いかけてグルニエを覗くと,上半身しかない犬が屋根裏でうろつき廻り,腹の膨れた女が居て,更に闇の中に消えつつある穴が見えた。女は元旦那の浮気相手,放置されてミイラ化した斉藤さんが産んだ子を犬に喰わせ,その犬を女が喰ったのだが,犬の胃袋はミイラ化した女の子を消化できず,そのまま女の腹を破裂させたのだ。虹色に今云うべき事は言うべきだと詰め寄られ,病室で斉藤さんに悟堂が別れを告げて戻ると,虹色の行方が知れなくなっていた。虹色の家族が失踪届を出すが,悟堂は暗闇の穴が関連していると考え,斉藤さんから家を買い取って住み始める。一度は虹色の声を聞いたが,その後二年経っても何も進まないまま,家は荒れ果てていく。虹色の妹・湯川里佳が心配するが,斉藤さんは再婚が決まって,悟堂に福井を離れて東京に出てくるように勧めたのは結婚式当日だった。式場には呼んでいない元旦那と招待された里佳も来ていて,元旦那は里佳を見て驚いた挙げ句,車で撥ねて連れ去った。悟堂は屋根裏で斉藤さんから聞き損ねていた怖い話を聞いて,穴を呼び出し,穴に飛び込み,出た先は斉藤さんの元旦那の三鷹のアパート。元旦那の竹内敦之は,2年前に湯川を殺して,床下に隠していたが,その妹にも同様の扱いをしようとしていたのだ〜
 賞が欲しいのだろうなぁ。福井の西暁と調布市仙川or国領は相変わらずで,懐かしくもあるが,鬱陶しくもある。何なんだよぉ〜もおぉ

読書記録の目次に戻る

15/10/06
『まったなし』:畠中恵(はたけなか めぐみ):2015年6月15日:\1300:文藝春秋:県立M高校図書館
★★★
 まんまことシリーズ第五弾
〜隣町の祭りのための寄進が今年に限って集まらないのは,出来る手代がいる間は店も余計な口出しをしないが,若い跡取りが一人になると,町名主の心構えを言われて嫌気が差し,そうそうに引き上げてきたからだった:消えた仔犬が発見された場所と火事の因果関係は,犬を探して長屋の奥に入り込み,煙管の火でで空き家に火を付け,小火を起こしていた,まだ幼い大工の跡取り見習いだった:大江戸とは思える見知らぬ景色から帰る方法は,麻疹もどきに掛かっているからだが,船に乗せられそうになり,上流へ向かえば良いと気がつく:幼い子どもを悪名高い高利貸しに預けたのは一体なぜ:父である棟梁の弟子と結婚することになった娘は婚礼用の白無垢の仕立てを弟子が付き合っていた針子に依頼したが,染みを付いていた。雨の染みでないとすれば誰が付けたのか…娘の兄は大工だったが,弟子は身を引き,縁談は破れた。自分の地位が危ういと自棄になり,上酒を思わず掛けて染みを拵えていたのだ。かというと:親友・清十郎の縁談が一向に進まなくなった理由は,清十郎の義母・お由有に再度嫁がれては,思いが遂げられないと焦った幸太の実の父・横平屋の達三郎が上方から帰ってきて,清十郎の昔付き合った女達が,お安では地味すぎてダメだと騒いでいると思わせる細工をしていた。早く縁づいて,手出しが出来ないよう,金貸し・丸三の妾・お虎は派手な着物を見繕い,化粧を施して,清十郎の前に連れ出し,好いていると言わせることに成功した〜
 シリーズの流れを掴めていなくって,忘れても良いように粗筋をまとめておいて良かった。麻之助の妻・お寿ずが死んだのが第三作で,娘を産んだが母娘共に死んでしまったのだ…そうだったのかぁ…この本の関連図でまたお寿ずが出てくるから生きてるかと思っちゃったじゃないか!けしからん! この本では終始,清十郎の縁談で,同心見習いの吉五郎の出番は少なく,影も薄い。麻之助とお由有の経緯が改めて判った。お由有は札差・大倉屋の妾腹の娘で,麻之助が好きだったが,二つ年上なので遠慮していた…麻之助から文が来たと喜んで上野に出掛けていったら,連れ込まれて手籠めにされ,子どもを身籠もった…こどもを産む決心をして,跡取りがいる八木家の後家に収まった…当時16の麻之助には,人の子を我が子として育てる決心は出来なかった…って訳でした。妖怪は出てこなくて,全体に暗い話で,お気楽モノと言われている麻之助も悲しい過去を引き摺っている…んで,楽しくない!!! そもそも,八木清十郎は本文で設定されているキャラと,挿絵・TV俳優のイメージとも外れているんじゃないか? 喧嘩に強うそうじゃないゼ!

読書記録の目次に戻る

15/10/03
『なりたい』:畠中恵(はたけなか めぐみ):2015年7月20日:\1400:新潮社:県立M高校図書館
★★★
 妖・人・猫・親・立派に「なりたい」
〜寝てばかりの一太郎が店の役に立つため,薬を考案するが,材料として蜜蝋が必要だ。蜂蜜を納めている上総の西八谷村の甚平は,妖になれれば納めると云う。頭を打って一太郎の周りの妖がみえるようになったが,飛べなくなって寛永寺にいる仲間の天狗を訪ねたい天狗が,甚平を攫っていったが,寛永寺の僧に捕らわれた。手ぬぐい屋の店主だった兄は,死にきれず猫又になったが,猫じゃ猫じゃで有名な藤沢の頭を争う,虎と熊の間に入った一太郎は,人の顔当てと算盤勝負を提案するが,なくなった長崎屋の大福帳を探すことになる。江戸甘甘会の会員が殺されたと思ったら,正体は道祖神で,なぜ襲われたのかを探る。長崎屋から嫁に行って子を成さず出戻った女中が,煮売り屋に縁づいたが,そこには壺からこぼれ落ちた唐子の付喪神の三太の親を名乗る初老の男が名乗り出た。年頃が変だ。妖怪に親はいない。長崎屋の近所の大店の若旦那が死んだが,幽霊になっている。跡継ぎになった妹は,破談になったはずの縁談相手と上方に行こうと準備をしている。30両を払えという要求は,どこから来たのか〜
 中間や遠縁の手代が犯人だというのは,いただけないね

読書記録の目次に戻る

15/10/01
『』:伊坂幸太郎(いさか こうたろう):2015年7月1日:\550:新潮社:県立M高校図書館
★★
 七つの伊坂ワールドは,いままでの長編と異なるテイスト
〜助言ありマス。スーパーの駐車場にて“相談屋”を営む稲垣さんの下で働くことになった浜田青年。人々のささいな相談事が,驚愕の結末に繋がる「浜田青年ホントスカ」。バスジャック事件の"もし,あの時……≠描く「if」。謎の生物が暴れる野心作「ギア」。架空の人物を感じる慈郎の「二月下旬から三月上旬」。サンタクロースはNGOのような組織で動くが,松田君のギフトはプラスのドライバーだったり,鉄板だったり…「一人では無理がある」。東北新幹線を7分で清掃するコメットさんたちのリーダーは脳溢血で意識不明に…チームの皆が会った不思議な客たちの話しを繋ぎ合わせると,パウウェル国務長官好きの鶴田さんの人生なのか「彗星さんたち」。書き下ろし「後ろの声がうるさい」〜
 作家生活15周年を記念して,雑文っぽいオリジナル短編集。出来の悪さをカバーするため,インタビューが付いている。普通なら解説だけど,誰にも解説は書けないだろう。アイデアだけの勢いで書いているからだけど,皆を繋ごうとして書いた書き下ろしも,よく分からないし。彼は1971年千葉県で生まれ,東北大学の法学部を卒業している。だから,仙台舞台が多いんだけどね

読書記録の目次に戻る

15/10/
 
★★
 
〜〜
 

読書記録の目次に戻る

最終更新日 : 2015.10.29

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送