2015/08/14
三部作完結〜

「春雷」
〜葉室麟〜

『春雷』:葉室麟(はむろ りん):2015年3月20日:\1600:祥伝社:県立M高校図書館
 豊後羽根
〜羽根藩の御勝手方総元締・多聞隼人は15年前に仕官した者であるが,年貢の取り立て・禄の半知借り上げなどで鬼隼人と嫌われている。出入りの商人・白金屋の若い女房が女中として入っているが,隼人が通う元筆頭家老の旧隠居宅である欅屋敷の女人は元妻ではないかとも噂されている。何度も計画が頓挫している黒菱沼の干拓を命じらると予想した隼人は,大庄屋の七右衛門の訪問を受け,重い菓子折を貰うが,干拓に一枚噛ませろとの意向だ。幾つも新田開発を成功させた七右衛門は,百姓をただ働きさせ,開発地は自分のものとして身代を大きくしている,人食いと綽名される。干拓の絵図面を引くためには,酔って暴れた千々石臥雲を牢から出す必要がある。当然,農民の反対も予想される。家老の末席に加えて貰わねば改革はできないと,名君の誉れ高い藩主・兼清に掛け合うが,藩主は筆頭家老・勘右衛門の了解を取れと云う。隼人は,15年前の出来事を持ち出して了解を得るが,新参者が出しゃばることを嫌い,正義を振りかざす儒者・白木立斎とその弟子の修験者を遣って脅し,殺害も企てる。剣のみならず柔術の達人である隼人は,これを撃退し,首領の玄鬼坊を捕らえ,鉄砲で口封じされそうな処を助けて脇腹に傷を負うが,玄鬼坊を現場の差配補助として手に入れた。干拓事業が始まるが,妨害も本格化。白金屋太助が播磨屋に訴えられ,播磨屋から買ったはずの土地を取り上げられそうになるが,店を畳み,七右衛門の番頭になることで,立ち直りを図る。勘右衛門は博打打ちを遣って一揆を起こさせ,七右衛門を殺して財産を取り上げ,隼人を失脚させて干拓事業を棚上げ,秋成物の銀納を軽減することで自らの権勢を保つことを考えた。一揆が起こりそうな気配に,七右衛門は覚悟を決め,欅屋敷が隼人の大事な場所だと考えて襲わせ,沼の作事小屋の焼き討ち計画が進む。太助と屋敷に帰った七右衛門は大坂の店の権利を太助に譲ると書状を認め太助を作事小屋に帰すと,襲ってきた一揆衆の前に姿を現し,博打打ちが差し出した脇差しの前に胸を突き出した。欅屋敷は鬼火が出たと騒ぐ孤児たちに大木に上らせ,油を染みこませた布や紐に火を付けて,欅の枝も燃やして,一揆の勢いを止めた。作事小屋では,臥雲が捕らわれ,隼人に引き取りを命じてきた。隼人は山の神社に一人で出向き,家老として年貢減免を約束した上で,七右衛門を殺害した博打打ちを袈裟懸けで打ち倒した。証拠もないまま領民を殺したことを咎めた筆頭家老の切腹の沙汰に,隼人は15年前の出来事を持ち出し,初のお国入りの際に峠で乗った馬の蹄に掛けて殺した娘に詫びろと迫り,閉門蟄居の沙汰は受け入れた。翌朝,切腹の上意を伝えた立斎を殺害し,討っ手を数名返り討ちにした後,鉄砲の前に我が身を晒した。一揆を鎮めた家臣を殺した藩主は隠居に追い込まれ,百姓の中にも隼人を鬼ではなく,世直し様と呼ぶ者が現れる〜
 主人公は剣の達人で,正義感溢れる人物であるが,守旧派に妨害される…そんな人物が,このシリーズでは三名。「蜩ノ記」も読んだはずだが,内容を覚えておらず,その次のタイトルは何だったっけ…「潮鳴り」で襤褸蔵だったね。祥伝社は山本一力の深川駕籠シリーズを読んで呆れたが,この物語は構成がしっかりしているのか,後の加除訂正が効いているのか,丁寧だわ

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最終更新日 : 2015.08.14

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