2015/08/03
〜出来過ぎた話〜

「潮鳴り」
〜葉室麟〜

『潮鳴り』:葉室麟(はむろ りん):2013年11月10日:\1300:講談社:県立M高校図書館
 剣の達人であることが前提
〜伊吹櫂蔵は襤褸蔵と揶揄される豊後・羽根藩の舟手奉行の跡取りだったが,日田の掛屋で商人に媚び諂う武士の姿に触れ,剣の腕前を見せろと言われて,畳を叩いて持ち上げ,居合いで真二つにした不始末で,異母弟に跡目を譲って,浜の漁師小屋で暮らしている。新田奉行並になった弟の新五郎が突然訪れ,不始末で家財を売った一部を置いて,翌日切腹した。櫂蔵に遺した文では,日田掛屋の小倉屋に,藩で行われている明礬作りを振興するため,5千両を借りたが,江戸での費用として送られてしまい,詫びるつもりで297両を充てたというのだ。3両を呑んで博打ですってしまった櫂蔵は激しく後悔し,入水して果てようかと思い詰めたが,浜で飲み屋を開いている女・お芳に止められた。弟の直接の上司・勘定奉行の井形清左衛門が殿・三浦兼重の温情で,致仕していた櫂蔵に弟と同じ職で再び出仕する気はないかと聞いてきたのだ。生さぬ仲の継母・染子は,戻るなら奉公人は召し放ちにするという。櫂蔵は俳諧師で,三井越後屋の大番頭をしていた咲庵と,惹かれていることに気が付いた・お芳をゆくゆくは妻にしたいと,屋敷に連れてきて,更にかつての父の手先の宗平と娘の千代も伴ったが,継母の染子は極めて冷淡な態度だ。出仕すると,新田掛の配下の四五十代の侍のやる気はなく,若手の笹野信也は山廻りをして隠し田を見つけては新田として届けさせることに腐心しており,小見陣内は井形の間諜だ。咲庵が帳簿を調べると,何もしていない普請に公金が支出され,茗荷金として暫く後に同額が還ってくるが,それは博多の豪商・播磨屋が絡んでいることが判った。櫂蔵は播磨屋の出店に番頭を訪ねるが,唐明礬の輸入を止めて明礬の値崩れを起こさせない工夫を播磨屋は承知していることは判明し,追い返されてしまう。日田に行き,小倉屋に挨拶をしても同様だが,利があれば,商人を味方にすることができると咲庵は言う。染子に追い出されそうな女中勤めをしている芳は,風邪引きの自分に粥を作って取り入ろうとしているのかと詰られるが,お芳は汚れているかも知れないが嘘だけは吐かないのだと反論し,次第に染子に認められていく。サトという娘が親の為した借金の肩として女衒に売られそうになるのを見掛けた信也は,サトは死んだ新五郎の思い人で十両あれば救い出せると訴え,咲庵の伝手で十両を差し出した櫂蔵の気配りで救われたかに思われたが,他に三両の借金があって,博多に売られていった。配下の三名は,主君の吉原での乱費を止めようとして,国許に帰され,井形の監視を受けていたのだが,里の娘を親身になって心配する櫂蔵が,改革に本気であることを知らされ,再び改革の先手になる覚悟が伝わってきた。博多で商家の主と対面してあしらわれた櫂蔵は,咲庵の息子から,唐明礬を一手に扱う商家が播磨屋だと知らされ,江戸へ送られるはずの5千両は城下の播磨屋の蔵に眠っていると推量した。これを取り戻し,西国郡代を通じ,賄賂を送って,明礬輸入止めを実施させたらと小倉屋からの知恵を手に入れる一方,お芳を揺さぶって圧力を掛けようと言う井形の思惑は,お芳が井形の脇差しを奪って自分の胸を突いて自害した。復讐は弟の遺志を全うすることだと覚悟した櫂蔵は,大名貸しの播磨屋の主人が資金不足で5千両を博多に動かす企みを察知し,郡代の手先を連れて大八車を奪い,小倉屋に返還した。染子から井形の悪事を告げられた兼重の母・妙見院は,井形を閉門蟄居とし,息子が養子を迎えて隠居することを条件に,家中のすべての女が主君の敵になることを止め,櫂蔵は幕閣との交渉を行う勘定方として江戸に行こうとしていた〜
 豊後羽根藩が舞台だけど,豊後って佐伯君も好きでよく舞台にしてますね。何故でしょう。さて…櫂蔵は剣の達人で,畳を叩いて立ち上がらせ,居合いで真っ二つにしただけでなく,大八車を襲って立ちはだかる小見の髷を切り落とすシーンがあるので含みとしては重要,でも人は斬らない。「落ちた花は二度と咲かぬ…か」,落ちた花をもう一度咲かせてみようじゃないかという決意と共に酒を断つ。襤褸蔵と呼ばれ侮辱されても死なない覚悟を持てるのは櫂蔵だけでなく,芳も咲庵もさともそうだった

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最終更新日 : 2015.08.03

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