2013/11/22
地味な装幀だが,中身は爽やか〜

「螢草」
〜葉室麟〜

『螢草』:葉室麟(はむろ りん):2012年12月23日:\1500:双葉社:県立M高校図書館
 今月読んだ本でピカイチで,いやあ泣かされた(ドライアイのせいかもしれないが)
〜菜々は村の叔父宅から城下の風早家に女中奉公に出た。25歳の主人市之進は家族と女中と共に食事を摂る家族思いの男で,奥方の佐知は優しく子ども思いで,菜々の憧れだ。奉公を始めたのは,叔父嫁が煩いことや,従妹との結婚を考えている宗太郎が煩わしいこともあるが,城勤めの父が刃傷に及んで切腹させられた張本人の轟平九郎を捜し出し,仇を討つことが希望だったからだ。正助ととよも可愛く,良い家に奉公したと喜んでいるが,気懸かりは奥方が死んだ母と同じような嫌な咳をしているからだ。半知借上で家計は楽でなく,野菜を貰いに村に一月に一度行くことを許された帰り道,小汚い浪人の行き倒れに出会い,思わず団子20皿を奢ることになってしまった。浪人の名は壇浦五兵衛というが,菜々の頭にはだんご兵衛と焼き付かれた。ある日,村からの帰り道で,鏑木藩の剣術指南に納まっただんご兵衛を訪ね,団子の礼に月に一度の剣術指南を願って渋々引き受けさせたが,主家に帰ると,若侍の桂木仙之助が門前にいて,狂犬が出て注意をしなければならないのに,子ども達が遊びに出掛けて帰って来ないのを病気をおして佐知は探しに行ったという。雨が降る中,母子を狙っている犬を見つけ,だんご兵衛の突きの心得を思い出した菜々は,傘を突き出して,犬を倒したが,雨に濡れて佐知の病状は重くなった。市之進は家宝の茶碗を質草に十五両を借り受けて来て欲しいと菜々に願う。質店は元芸者の舟という後家が切り盛りしているが,茶碗を丁寧に畳みに置く仕草を見て一芝居打ち,髑髏の半纏を着た女主人をおほねさんと記憶した。人参の効果もなく,子どもの世話を菜々に託して,佐知は労咳で亡くなり,号泣した。藩政を改革したい風早市之進の家には,改革派の武士が集まってきたが,隠居した大殿が出入り商人の日向屋と結託して資金を得て政を壟断しているらしい。それを手引きした江戸詰めの轟がお国入りをした。悪を除こうとする若侍は数を恃んで平九郎を暗殺しようとするが,傷を負わされて敗れ去った。改革派の柚木弥左衛門が市之進を訪れ,罠を仕掛けてくると忠告を受け,市之進は菜々を呼び,江戸に送られたら家宝の茶碗を持ち出して暮らしを立てうことと,菜々の父が大殿の不正を証す書面を捜し出して欲しいと願った。心配は現実のものとなり,門は閉じられ,平九郎が乗り出してきて書面を捜すが,女中が大したものを持つはずがないと見逃された。質屋を頼ると,隠居所の荒れ屋を借りることができ,大八車も借り受けて,従兄の宗太郎が運んでくれる野菜を商うことで生計を立て,裏に住む椎上(死に神)という儒者に子どもらの手習いを頼み,正助には自分に代わってだんご兵衛の剣術指南を受けさせた。母の遺した金と共に赤村から運び出した父の遺品の中に駱駝の絵を見つけた。商いが巧く回り始め,地回りのヤクザに場所代を払えと脅されるが,見よう見まねが得意な菜々は子分達を返り討ちにしたが,涌田の権蔵という大男の親分には木刀をへし折られてしまった。とよが小石を投げつけると,ラクダの親分は大袈裟にひっくり返って退散し,翌日は詫びだと言って,あばら屋の修理をしてくれる。江戸に送られて詮議を受ける市之進を峠まで見送り,菜々は佐知に教えられた螢草を月草と呼ぶ和歌を大声で読み上げ,こどもをしっかり世話することを暗に伝えたが,結果,市之進は死罪にはならず,北国に流刑となった。桂木仙之助が菜々を訪れ,無実を証明する書面が見つかったら教えて欲しいと云ってきたため,父の遺した和歌の本の父の書き込みの解読を死に神先生に頼むと,本を開かないから解らないのだ説教をされ,めくると他と違い暑い箇所がある。貼り合わせて書面を隠していたのだった。その事を野菜売りの最中に仙之助に話すと,仙之助は平九郎に脅されて動いていることを恥じ,預かれないと言う。その夜,血まみれの仙之助がやってきて,平九郎がやってくるので直ぐ逃げろと告げるが,時既に遅く,助っ人・権蔵も斥けられ,子どもを殺すと菜々は脅されて,米櫃に隠した書面を差し出して焼かれてしまった。約束を反故にして,皆殺しにしようとする平九郎の前に現れたのはだんご兵衛。小娘に何もできないと踏んだ平九郎は,分が悪いと引き揚げた。殿様が国入りする時に武芸大会が開かれると聞いた菜々は,審判を務めるだんご兵衛に,殿様の前での敵討ちを願ってくれないか,一太刀を避ける方法の伝授も願う。自分が殺した武士の娘だと判った平九郎は立会に同意し,御前試合が真剣で行われる。手練れの手は見えないと考えた菜々は目を瞑って対峙するが,平九郎は後ろに回って首筋を狙っていた。とよが自分を呼ぶ声を聞いた気がして目を開けた菜々は眼前にいない相手の気配を後に感じて跳び,刃筋をかわして,父の脇差しを鞘に収め,主君の前に走り出て,書面を差し出し,吟味を願った。柚木の取りなしで,書面を見た殿は,菜々の身柄の安全を保障し,市之進を呼び戻す算段を始める。閉じられていた門は開けられ,正助ととよは,市之進の叔父夫婦に迎えられたが,帰国する市之進には家老の娘との縁談があると,菜々が家に入るのを許さない。宗太郎は村に帰ってこいと誘うが,野菜と草鞋を辻で商う菜々に良い品と藁を届けてくれる。大八車が軽くなるのを感じた菜々は,正助ととよが,自分を母上と呼ぶのを聞く〜
 いやぁ,いい話だわぁ・・・。今月の一番だな。地味な装幀で,露草に似た絵が書いてるが,ホタルグサっていうのかぁと思っていたが,螢草・月草は露草の別名だった。あんまり派手な装幀は似合わないけど,何か工夫はないのかと出版社の姿勢を疑ってしまう

11月の記録にジャンプ

読書記録の目次に戻る

最終更新日 : 2013.11.23

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送