2013/10/28
ああ・・・終わちゃった〜

「小説フランス革命]U革命の終焉」
〜佐藤賢一〜

『小説フランス革命]U革命の終焉』:佐藤賢一(さとう けんいち):2013年9月30日:\1600:集英社:県立M高校図書館
 ああ・・終わちゃった
〜エベール派とダントン派を粛正してサン・ジュストは邪魔が消えた気分だが,肝心のロベスピエールは腑抜けたようになってしまった。なかでもデムーランの死が堪えているようだ。革命の成就のためには,次なる敵を倒さなければならないが,サン・ジュストはベルギーの戦線に送り込まれた。最高存在の祭典は大成功であったが,ベルギーからオーストリアとイギリスを駆逐すると,戦時体制は採らず,最高価格法も廃止すべきだと,ブルジョワ寄りの意見が強い。戦地に派遣された国民公会の委員は悪事に手を染めたのだから告発されるべきだが,公安委員会と保安委員会は対立している。反革命分子の財産を貧民に再分配する法はサボタージュに遭っている。サン・ジュストはロベスピエールを急かすが,当の本人はジャコバンクラブで威勢の良い演説を打って脅しを懸けるだけで,国民公会にも公安委員会にも出席しない。サン・ジュストは両委員会の和解は本意でないが,ロベスピエールが独裁者呼ばわりされるのだけは容赦できず,やりたくもない和解策を探る。和解案には公安委員ロベスピエールのサインが必要だが,テュイルリ宮殿まで連れてくるのが漸くで,ロベスピエールは和解を壊すかも知れない危険な発言を繰り返す。一人静かに久しぶりに演壇での演説原稿を完成させたロベスピエールの弁舌に議員は謹聴するが,演説が終わると,自分の身に危険が及ばないように弁明する者と,告発される人物の名簿がある筈だという野次が飛ばされ,脅しを掛けるようにロベスピエールは誤魔化す。和解報告書を公安委員会控え室で作るサン・ジュストに疑惑の持たれている委員たちは書いている内容を読ませるように迫る。苛々しながら完成原稿は印刷に回して読ませると約束したサン・ジュストであったが,モヤモヤした気持ちを乗馬で晴らすと,約束は小さな事に思えてきて,登院しても事前に読ませることなく,報告を始めてしまう。報告を遮ったのは恋人が告発されている議員で,遅れてやってきた委員たちも妨害で及ぶ。議席からは暴君呼ばわりする声が上がり,ロベスピエールらの逮捕が決議される始末だ。公安委員会室から監獄に送られたが,パリ支庁の新規収監禁止の命令で,身柄は宙に浮いた。国民衛兵隊もパリ支庁前の広場に集まったが,新たな命令が出てこない内に大雨が降り始め,隊員は帰宅してしまう。国民公会寄りの国民衛兵が支庁に押し寄せて,ロベスピエールはバレ同様にピストル自殺を図るが,手許が狂って顎を打ち抜いて身柄が拘束される〜
 長期にわたった連作も終了。最後はロベスピエールの死で,この巻の主な語り手はサン・ジュスト。小説すばるへの連載は2012年の12月に終わっていて,単行本化するにあたり大幅に加筆・修正をしたというから,それだけで一冊分の労力は使っているのだろうけど,この本の前に読んだ百田の夢を売る男で垣間見た出版事情からすると,なかなか筆の進まない作家に締切を作ることで取り敢えず書かせ,単行本化する時が本当の勝負という具合だろうか。いい素材で,楽しくもあったんだけど,何せ会話が「」で囲まれず,「」の中身は心情の吐露というのが読みにくい。楽しませて貰ったから文句は言えないけど,少し長すぎるよなぁ。研究が豊富でどれも外せないのだろうけど,次々に死んでいくから語り手はいなくなっちゃう。俯瞰して書くと佐藤さんらしさが消えていく。難しい問題だなぁ。さてお話はテルミドールのクー・デタで終わり。総裁政府の話はなく,ナポレオンの話もない。次に書くべきフランスの大物となったら・・・ナポレオン?

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最終更新日 : 2013.10.29

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