2013/10
〜10月に読んだ本〜

スラム化する日本経済 4分極化する労働者たち 奇譚を売る店 ☆☆☆ 岳飛伝E転遠の章 ☆☆☆ 桜ほうさら ☆☆☆☆
柴犬ゴンはおじいちゃん ☆☆ 政と源 ☆☆☆ 撲撲少年 ☆☆ ミサキア記のタダシガ記 ☆☆☆☆
有松の庄九郎 ☆☆ つばめや仙次ふしぎ瓦版 忘れ簪 夢を売る男 ☆☆☆☆
小説フランス革命]U革命の終焉 ☆☆☆☆ ロスジェネの逆襲☆☆☆    

冊数が多いのは真面目に仕事をしていない証拠

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13/10/29
『ロスジェネの逆襲』:池井戸潤(いけいど じゅん):2012年6月28日:\1500:ダイヤモンド社:県立M高校図書館
★★★
 ドラマ半沢直樹の続き
〜バブル入行組の半沢直樹は東京セントラル証券の営業部長に出向し,電脳雑伎集団から東京スパイラルの買収アドバイザーの話を受けたが,直属の同出向組の諸田は,生え抜き担当の森山ではなく子飼いの三木をチーフに据えた。妙手を捻り出せない三木を急かし2週間後にプレゼンに赴くと,契約は破棄され,親会社の東京中央産業銀行の証券部が新たなアドバイザーに選ばれた。三木には辞令が下り,銀行の証券部だが総務グループに紛れ込んだ。よく聞くと買収先のスパイラルの社長は,森山の中高の同級生で親しくしていたらしい。電話を掛けろとせっつかれて声を聞くと昔に戻ったようで,太陽証券からホワイトナイトを紹介され,PC通販のファックスであるという。フォックスを調べると,銀行からの500億の融資を受け,新規発行株を引き受けてくれるという。創業時からの社員と今後の営業戦略で袂を分かち,彼らの株が電脳に渡っていることを知った瀬名は,半沢のアドバイスを受け,フォックスの買収に乗り出す。フォックスの子会社は有望であり,莫大な資産を持っている。スパイラルの株価は上がり,追加融資をしないと事案が解決できない副頭取派は根回しを続けるが,電脳の元財務担当は子会社を調べるように森山と半沢に耳打ちする。電脳の粉飾決済を知った半沢は銀行の取締役会で説明する。電脳の立て直しに銀行から送る出向者は誰か〜
 半沢直樹の続編が単発か,連続化でドラマ化されるらしく,この本はソレ。テレビは見なくても良くなったか,それとも原作との違いを検証すべきか。子どもとか奥さんは出てこないね,少なくとも。そうなると女優が入らないなあ

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13/10/28
『小説フランス革命]U革命の終焉』:佐藤賢一(さとう けんいち):2013年9月30日:\1600:集英社:県立M高校図書館
★★★★
 ああ・・終わちゃった
〜エベール派とダントン派を粛正してサン・ジュストは邪魔が消えた気分だが,肝心のロベスピエールは腑抜けたようになってしまった。なかでもデムーランの死が堪えているようだ。革命の成就のためには,次なる敵を倒さなければならないが,サン・ジュストはベルギーの戦線に送り込まれた。最高存在の祭典は大成功であったが,ベルギーからオーストリアとイギリスを駆逐すると,戦時体制は採らず,最高価格法も廃止すべきだと,ブルジョワ寄りの意見が強い。戦地に派遣された国民公会の委員は悪事に手を染めたのだから告発されるべきだが,公安委員会と保安委員会は対立している。反革命分子の財産を貧民に再分配する法はサボタージュに遭っている。サン・ジュストはロベスピエールを急かすが,当の本人はジャコバンクラブで威勢の良い演説を打って脅しを懸けるだけで,国民公会にも公安委員会にも出席しない。サン・ジュストは両委員会の和解は本意でないが,ロベスピエールが独裁者呼ばわりされるのだけは容赦できず,やりたくもない和解策を探る。和解案には公安委員ロベスピエールのサインが必要だが,テュイルリ宮殿まで連れてくるのが漸くで,ロベスピエールは和解を壊すかも知れない危険な発言を繰り返す。一人静かに久しぶりに演壇での演説原稿を完成させたロベスピエールの弁舌に議員は謹聴するが,演説が終わると,自分の身に危険が及ばないように弁明する者と,告発される人物の名簿がある筈だという野次が飛ばされ,脅しを掛けるようにロベスピエールは誤魔化す。和解報告書を公安委員会控え室で作るサン・ジュストに疑惑の持たれている委員たちは書いている内容を読ませるように迫る。苛々しながら完成原稿は印刷に回して読ませると約束したサン・ジュストであったが,モヤモヤした気持ちを乗馬で晴らすと,約束は小さな事に思えてきて,登院しても事前に読ませることなく,報告を始めてしまう。報告を遮ったのは恋人が告発されている議員で,遅れてやってきた委員たちも妨害で及ぶ。議席からは暴君呼ばわりする声が上がり,ロベスピエールらの逮捕が決議される始末だ。公安委員会室から監獄に送られたが,パリ支庁の新規収監禁止の命令で,身柄は宙に浮いた。国民衛兵隊もパリ支庁前の広場に集まったが,新たな命令が出てこない内に大雨が降り始め,隊員は帰宅してしまう。国民公会寄りの国民衛兵が支庁に押し寄せて,ロベスピエールはバレ同様にピストル自殺を図るが,手許が狂って顎を打ち抜いて身柄が拘束される〜
 長期にわたった連作も終了。最後はロベスピエールの死で,この巻の主な語り手はサン・ジュスト。小説すばるへの連載は2012年の12月に終わっていて,単行本化するにあたり大幅に加筆・修正をしたというから,それだけで一冊分の労力は使っているのだろうけど,この本の前に読んだ百田の夢を売る男で垣間見た出版事情からすると,なかなか筆の進まない作家に締切を作ることで取り敢えず書かせ,単行本化する時が本当の勝負という具合だろうか。いい素材で,楽しくもあったんだけど,何せ会話が「」で囲まれず,「」の中身は心情の吐露というのが読みにくい。楽しませて貰ったから文句は言えないけど,少し長すぎるよなぁ。研究が豊富でどれも外せないのだろうけど,次々に死んでいくから語り手はいなくなっちゃう。俯瞰して書くと佐藤さんらしさが消えていく。難しい問題だなぁ。さてお話はテルミドールのクー・デタで終わり。総裁政府の話はなく,ナポレオンの話もない。次に書くべきフランスの大物となったら・・・ナポレオン?

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13/10/25
『夢を売る男』:百田尚樹(ひゃくた なおき):2013年2月26日:\1400:太田出版:県立M高校図書館
★★★★★
 自費出版させて,夢を叶えさせる
〜編集部長の牛河原はせっせと電話を掛け,豪華な応接室でジョイント・プレスの契約を著者と交わす。部下がクレームをつけられても,解決するのは,一流出版社で編集長を務めていて,物書きの心理を知り尽くしているからだ。順調な商売にライバルが現れ,潰しに掛かる。その手の一つは,文庫本を出すこと。もう一つは訴訟を起こさせること。編集者がどうしても出したい,未亡人の手記は会社の経費で出す〜
 今の出版事情がよく解りました。自分自身もネタにしているところがイイネ!

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13/10/23
『忘れ簪』:高橋由太(たかはし ゆた):2012年4月20日:\476:光文社:東部台文化会館
 えっえ?
〜大川に人魚が出たと噂になり,暇を持て余している年寄りや侍で賑わっている。一人娘を亡くした爺婆の茶店も繁盛しているが,手伝っているのは,宗庵の娘であるお由有。一人の武士の屍体が大川に浮かび,呪われた小藩の殿様も命を落とす。茶店の爺婆の姿が消え,宗庵とお由有の姿も消えた〜
 謎解きを不思議な生き物(人間)にやらせておいて,終わりってないだろう!よく解かんないし!

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13/10/20
『つばめや仙次ふしぎ瓦版』:高橋由太(たかはし ゆた):2011年7月20日:\476:光文社:東部台文化会館
 どこに瓦版が出てくるの?
〜薬種問屋の次男坊・仙次は商売上手の兄の許で呑気に暮らし,ふしぎな話を拾っては瓦版にしている。幼馴染みの剣道場の若師範梶ノ助とは医師・宗庵の娘・お由有との恋の好敵手だ。宗庵の商売敵は拝み屋の八兵衛だが,呑気に構えて,敵に塩を送るような行動を取る。旗本の子を甦らせたと評判の拝み屋が破落戸や侍に狙われる。旗本・三森家へ養子を送り込もうとしている小牧父子の謀を瓦版の師匠である鬼一と潰しに掛かる〜
 なんでしょうね,大仰に構えていて,中身はすかすか。最初から自作をあてに書いていて,文庫本書き下ろしの手の一つかも知れないが,瓦版を作ったり売ったりする場面がなくて,この本が瓦版というオチなのだろうか?

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13/10/17
『有松の庄九郎』:中川なをみ(なかがわ):こしだミカ・絵:2012年11月30日:\1500:新日本出版社:東部台文化会館
★★
 2013年の課題図書。小学校高学年向け?
〜徳川の世になった尾張の阿久比,武家出身の母を持つ庄九郎は読み書き算盤を仕込まれたが,兄嫁の仕切る家で次男の身は立場がない。高札場に鳴海と知立の間の山道に開拓者を募集していると出て,村の若者をまとめ上げ,村長の娘を嫁に,困難な道を歩み始める。松ばかりの森だが,東海道に面し,人がいないのは物騒だという判断だが,伐採しても土が優れず,作物は実りそうもない。尾張名古屋城の築城に志願人足として出掛け,石の下敷きになりそうな男を助け,礼に貰った手拭いに度肝を抜かれる。藍の絞り染めだ。豊後絞りの技は教えて貰ったが,藍の事は分からない。お荷物だった弥七を紺屋に行かせて発酵を学ばせると,街道の名物になり,阿久比から人手を呼ぶこともできた〜
 教訓じみたことを読み取らせようと言うのだろうか。別に感じないけど,粘りと不退転の決意かな?

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13/10/17
『ミサキア記のタダシガ記』:三崎亜記(みさき あき):べつやくれい絵:2013年6月28日:\1400:角川書店:県立M高校図書館
★★★★★
 ニヤっ,ふっ,ふっ。絵があって良かったと思えるエッセイ
〜便座カバーを持っている程度の幸せ。携帯って言葉が定着した。クールビズって本当に環境に良いのか。蝉の声は騒音か。隠すと目立つモザイク処理。水節約に努めた結果,水道代値上げ。流行を決められるのは嫌だが。島を小さくする虫がいる。ツィッターが流行る訳。「地球のために!」は万能の合い言葉。B級があるならZ級も。最高と普通しかなくなった。二律背反より二律共存を。骨盤体操で花粉症軽減。グローバルを地球外から見たら。風評って怖いけど。バルス!「友」「供」「共」ダ・ヴィンチから本の旅人へ。先進国って言う概念は曖昧。馴れ馴れしい寿司。福岡の居酒屋チェーンぶあいそ。見せたくない番組にみんな詳しい訳は。イケメンって奴は。傾いている状態が普通だと気持ちいい。全国居酒屋甲子園〜
 三崎の視点,それを読んだべつやくの連想が面白く,にやっと笑ってふっと鼻から息が出る。読んでいる人も似たような感性を持っていて,文字にしてくれているようだ。痛快とはいわないが,忍び笑いが止まらない。三崎って女だったっけ?と思わず調べたのはイラストのせい

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13/10/15
『撲撲少年』:仁木英之(にき ひでゆき):2013年6月28日:\1400:角川書店:県立M高校図書館
★★
 僕僕先生とは無関係で,騙された感じがする
〜勇吾は大学生だが卒業するのに必要な単位を計算し間違えて留年決定となった。父に相談しても無駄だとは分かっていたが報告せざるを得ない。家電の営業で転勤を繰り返した父は松本にいるが,学費は出さない,アルバイトに精を出して,無事に4年になったら,学費援助すると言うが,貯金は30万しかなく,生活費にも足りない。メールで報せてきたのは,知り合いの中村を病院に見舞えと言うないようだったが,登山家は事故で両足を失い,時々見舞いに来てくれれば,乃木坂のマンションを使わせると提案し,更に吉祥寺のタイカレー店でのアルバイトも用意してくれていた。カレー店の取材に来た雑誌記者は松本時代の幼馴染み,湊だった。三人組のもう一人に再会させると連れて行かれたのは赤坂の総合格闘技ジム,いきなりスパーリングを申し込まれ,チビの鉄也になら負けないと受けるが,こてんぱんにやっつけられた。悩んだ末に入門したジムでは,それほど真剣でもないのにプロの練習に加えられ,最強の先輩が試合で負けたのも目の前にする。合宿では他の道場と一緒になり,その中には鉄也も含まれていた。有明の試合が催され,先輩二人が出場するが前座試合への出場を打診され,何となく承諾したのは,練習スパーでもの足りなさと,鉄也への闘志が燃えたからだった。DVDを持って研究に協力してくれた湊に恋心を抱き,夜中に遭いたくなって市川まで出掛けていくが,公園で鉄也といちゃつく姿を見せつけられ,何もかも嫌になってしまう。試合を断る気力もなく日々を過ごすが,病院から一歩も外に出ない中村さんが試合を見に来ると知り,会場までやっとの思いで出掛け,慌てて準備しても,やれることは限られている。肩の力を抜くことができたのは,1ラウンドで鉄也に好きなようにあしらわれた2ラウンド目からだった〜
 原題はMMA boysだったが,単行本化するのに,人気に肖って撲撲に変えたらしい。出版社に説得されちゃったんだろう,気の毒に。大学4年だとしても,同級生の湊も22歳,出版社に勤めて一人で取材できる経験はないだろうに・・・。山仲間の結束力は固い・・・。納得できないことが多いぞ

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13/10/14
『政と源』:三浦しをん(みうら):2013年8月31日:\1400:集英社:東部台文化会館
★★★
 頂けないのは装画で,装幀は素晴らしい
〜国政は隅田川と荒川に囲まれたY町に生まれ,疎開後に焼け野原になった故郷に帰ってきたが,幼馴染みの源二郎はつまみ簪職人として戦争中も残り,肉親を失った。大学を出て銀行に勤めた政は,源の大恋愛を駆け落ちの形で助け,その後見合い結婚をして娘二人を得たが,仕事に没頭して家を顧みず,73歳の今は横浜で結婚生活を送っている娘の所に妻は行ったっきりで,一人暮らしを余儀なくされている。源は40代で最愛の妻を亡くし,子供もいないが,20歳の徹平という弟子を迎えて,その恋人である美容師のマミも出入りして賑やかに暮らしている。風邪で休んだ徹平は,昔の悪仲間に嚇かされ,源と政は暴力でこれを撃退した。台風の最中にぎっくり腰になった政を気遣った源に世話になり,一人暮らしの侘びしさを思い知らされ,七五三の祝いにつまみ簪を孫娘に送っても写真が一枚送られてくるだけだった。徹平は七歳上のマミと結婚を考えているようだが,双方の親が納得しない。徹平はつまみ簪の技で,今風のアクセサリーを作り始め,師匠である源もまんざらでもなさそうだ。正月も一人で過ごす政は,源と徹平に招待されるが,いそいそと出掛けたりするのも癪で,妻も連れ戻せと源に言われ,正月三日に横浜を訪ねるが,けんもほろろに追い返された。徹平とマミは結婚すると言い,仲人はちゃんとした人ということで政が頼まれるが,妻は承伏せず,せっせと葉書を書き送った。死ぬのかと心配して妻が訪ねてきて,仲人だけは引き受ける。離れて暮らしても,家族の幸福は祈れると国政は思うのだった〜
 装幀と初期設定は面白いのに,ストーリーには山がなく,テーマは家族愛。少女漫画風の装画がイマジネーションの発露を疎外している。残念

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13/10/11
『柴犬ゴンはおじいちゃん』:影山直美(かげやま なおみ):2013年3月9日:\950:メディアファクトリー:県立M高校図書館
★★
 柴犬の漫画と雑文で稼いでいる
〜柴犬のゴンは14歳。人なつこくて営業部長としての地位を築いている。弟分のテツがいるが,ナンバーワンの座は明け渡した。膝の脱臼を左右共にやり,毛が白くなって,家でおしっこもするようになった〜
 柴犬の本を5冊書いている。ふ〜ん

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13/10/11
『桜ほうさら』:宮部みゆき(みやべ):2013年3月11日:\1700:PHP研究所:県立M高校図書館
★★★★
 甲州で騒がしくて落ち着かない様を「ささらほうさら」という
〜古橋笙之介が暮らす富寛長屋には板塀の向こうに桜が見える。まだ一分咲きだが,笙之介は故郷である搗根を思い出している。小藩の小納戸役だった父が収賄を疑われ庭で切腹し,偽の書状を作った犯人を捜そうと江戸留守居役の東谷を頼り,貸本の村田屋の写本作りと共に紹介された住まいだった。夢うつつで桜の精を見たが,見掛けない切り髪だった。思えば,東谷から本人も見分けが付かないほど手跡を真似る名人を捜せと言われたが,手掛かりがない。村田屋からは死んでしまった牢人で押込御免郎という者が書いた,どぎつい色模様と腹黒い悪役に酷い目に遭わされて敵討ちを誓う若侍の物語を書き直せと云われても,人生経験がなく,筆が進まない。それよりも起こし絵の方に興味が湧く。花見に誘われたのは瀬戸物屋だが,二階から見つめる桜の精と目があった。仕立ての和田屋の娘で右半身に痣のようなものがあるので,人目を避けていると教えられる。長屋に古橋笙之介という名だけで訪ねてきた侍は奥州の三八野藩で隠居した藩主の世話をしている年配の侍だが,息子に藩主の座を譲って気鬱になった隠居が漢字ではない漢字のような者を見事な手跡で書いているのだが,若い頃に出会った古橋笙之介に教わった判じ物だとは理解しているが,何を書いているのか理解したいと江戸に出てきたのだと打ち明けられる。流行病で寺子屋が閉鎖になり,もてあましている元気な子を流行らない鰻屋の二階に集め,客寄せの為に訳の分からない字を唐紙や障子紙に書く提案をしたのは和田屋の娘・和香だ。評判になって鰻を諦め,小料理で勝負を掛けるが,読める女性が現れた。男と放浪し,漢詩を面白半分に書き換えたのだという。昔を懐かしがっているだけだと知った老侍は帰国するが,礼に救荒策の本を残していった。村田屋の知り合いの貸席の娘が拐かしに遭った。身代金の受け渡しに用心棒として付き合った笙之介は,これが狂言であることを見抜いていたのだ。父親の矢立の筆で左手で書いたものだ。村田屋は納得しないが,証拠を集めていくと,父親が白状する。女中が身重になり,密かに産んだ子は預かり,母親は年寄りの後添いとして嫁がせた。生みの母親が探し出し,対面を果たし,その男と男の息子が共謀したものだった。代書屋を当たり続けた笙之介だったが,探している人物が酔っぱらって笙之介の前に現れ,真相を知りたければ,兄に聞けと言い残して姿を消す。それは死んだはずの押込御免郎で,すっかりねじ曲がった中年の牢人だった〜
 ふんわりとした登場人物たちに仕上がっているのは三木謙二という画のおかげもあるだろう。笙さんの故郷は東金だろうね。一章が終わるたびに物語の行く末はどうなるのだろうかと心配したが,ちゃんと繋がっていて,やはり大したものだと思う。これが連載されたのは月刊「文庫」だというが,どんなものだろうか。今は珍しく新聞小説を読んでいるが,大した構想力だなあ,宮部さん

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13/10/08
『岳飛伝E転遠の章』:北方謙三(きたかた けんぞう):2013年8月30日:\1600:集英社:県立M高校図書館
★★★
 岳飛が処断された
〜呉用が宣凱に遺した言葉は岳飛を救えというものだった。一度は帝に拝謁すべきとの言葉に,岳飛は臨安に出掛けたが,謁見の後はひたすら説得を受け,受け入れない岳飛は宰相府の奥に監禁される。解散を命じなければ,南宋の総力をもって潰すと脅され,直筆の命令書を作ったが,謀反の疑いが掛けられ,梁山泊が動き出す。皇太子が太祖七世の子孫だという品が交換品だ。秦檜が立会い取引は成立するが,臨安の朱雀門で解放された岳飛は,すぐに正規軍と南宋の陰の組織が動いて抹殺され掛かる。燕青は多くの偽物を走らせ,追っ手を捲き,南へ同行する旧岳家軍の脱走兵が出現し,大理へ向かう途中,襲われて,破傷風に倒れる。秦檜は金と講和を模索するが,金軍総帥の兀朮は,蒙古に備える北の国境地帯に遊びに行ったきりだ。韓成は西遼の西の果てまで出掛け,反乱分子を宣撫しながら,上清の許で軍営を築き,西域から大量の銀を金で買い,大儲けを画策している。南では,秦容が開墾した甘蔗が順調に育ち,上流の王の都まで行って,その存在を認められた。李俊は大量の板を制作し,船大工の元締め,張朔が来るのを待っていた〜
 メコンかと思ったら,現ミャンマーのエヤワディ川。おっと,マレー半島を迂回していたか〜。歴史上では,秦檜に呼び出された岳飛は騙し討ちに遭い,斬首されて,遺体は長江に流され,哀れに思った人が拾って,廟を作り,愛国者が門前の人形を踏みつぶしてからお参りするようになった・・ということなんだけど。フィクションとしては,生き延びていて名を変え,もう人踏ん張りという方が面白いね。この本で終わるかと思っていたのに,肩透かし。また,面倒臭い男達の話が続く

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13/10/03
『奇譚を売る店』:芦辺拓(あしべ たく):2013年7月20日:\1500:光文社:茂原市立図書館
★★★
 なるほど・・・そういう構成だったのか
〜また買ってしまった。西洋の古城のような「帝都脳病院」を見て模型を作り,二階から突き落とされる先祖の姿を見た。毒々しいタイトルのチープな作品ばかり書いている三流探偵小説家の悲運。名探偵・十文字竜作と助手の江楠君の痛快きわまりない冒険談と,そこの秘められた秘密。幻の合作映画「青鬚城殺人事件」の撮影をめぐる秘話と“不死人”の恐怖。『時の劇場』と称する大河ロマンめいた物語。古書店の店番をやりながら和文タイプで物語を打つ私〜
 小説を書くために商売人は古書を買うのだろうか。私や私たち。読む者も含めて私たち?

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13/10/01
『スラム化する日本経済 4分極化する労働者たち』:浜矩子(はま のりこ):2009年3月20日:\838:講談社:県立M高校図書館
 いつの話?と思ったら,震災前・今から4年半前
〜グローバル恐慌前夜の状況を説明。日本のバブル崩壊が,サブプライムローン問題を起こし,それが10年後の日本に襲いかかっている。インフレがデフレを起こし,労働者が分極する。擬似資本と擬似経営者が出現し,効率を求めて,賃金の下方柔軟性をもたらす。グローバル・ジャングルの中,世界はフラット化するが,縦方向の階層化も進展。早い者勝ち,弱肉強食で共存共栄を探らず,自分だけが良ければ良いという風潮が広がる〜
 NHKで特集をやっていた政府系ファンドの話も出てくる。この頃はアメリカのオバマに期待する向きが強かった。今や議会が対立して,予算が組めずに政府機関がストップする有様。安倍さんの政策に今の彼女は,どうコメントしているのだろうか?

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13/10/
 
★★
 
 
 

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最終更新日 : 2013.10.29

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