2013/10/11
宮部さんは凄いなぁ〜

「桜ほうさら」
〜宮部みゆき〜

『桜ほうさら』:宮部みゆき(みやべ):2013年3月11日:\1700:PHP研究所:県立M高校図書館
 甲州で騒がしくて落ち着かない様を「ささらほうさら」という
〜古橋笙之介が暮らす富寛長屋には板塀の向こうに桜が見える。まだ一分咲きだが,笙之介は故郷である搗根を思い出している。小藩の小納戸役だった父が収賄を疑われ庭で切腹し,偽の書状を作った犯人を捜そうと江戸留守居役の東谷を頼り,貸本の村田屋の写本作りと共に紹介された住まいだった。夢うつつで桜の精を見たが,見掛けない切り髪だった。思えば,東谷から本人も見分けが付かないほど手跡を真似る名人を捜せと言われたが,手掛かりがない。村田屋からは死んでしまった牢人で押込御免郎という者が書いた,どぎつい色模様と腹黒い悪役に酷い目に遭わされて敵討ちを誓う若侍の物語を書き直せと云われても,人生経験がなく,筆が進まない。それよりも起こし絵の方に興味が湧く。花見に誘われたのは瀬戸物屋だが,二階から見つめる桜の精と目があった。仕立ての和田屋の娘で右半身に痣のようなものがあるので,人目を避けていると教えられる。長屋に古橋笙之介という名だけで訪ねてきた侍は奥州の三八野藩で隠居した藩主の世話をしている年配の侍だが,息子に藩主の座を譲って気鬱になった隠居が漢字ではない漢字のような者を見事な手跡で書いているのだが,若い頃に出会った古橋笙之介に教わった判じ物だとは理解しているが,何を書いているのか理解したいと江戸に出てきたのだと打ち明けられる。流行病で寺子屋が閉鎖になり,もてあましている元気な子を流行らない鰻屋の二階に集め,客寄せの為に訳の分からない字を唐紙や障子紙に書く提案をしたのは和田屋の娘・和香だ。評判になって鰻を諦め,小料理で勝負を掛けるが,読める女性が現れた。男と放浪し,漢詩を面白半分に書き換えたのだという。昔を懐かしがっているだけだと知った老侍は帰国するが,礼に救荒策の本を残していった。村田屋の知り合いの貸席の娘が拐かしに遭った。身代金の受け渡しに用心棒として付き合った笙之介は,これが狂言であることを見抜いていたのだ。父親の矢立の筆で左手で書いたものだ。村田屋は納得しないが,証拠を集めていくと,父親が白状する。女中が身重になり,密かに産んだ子は預かり,母親は年寄りの後添いとして嫁がせた。生みの母親が探し出し,対面を果たし,その男と男の息子が共謀したものだった。代書屋を当たり続けた笙之介だったが,探している人物が酔っぱらって笙之介の前に現れ,真相を知りたければ,兄に聞けと言い残して姿を消す。それは死んだはずの押込御免郎で,すっかりねじ曲がった中年の牢人だった〜
 ふんわりとした登場人物たちに仕上がっているのは三木謙二という画のおかげもあるだろう。笙さんの故郷は東金だろうね。一章が終わるたびに物語の行く末はどうなるのだろうかと心配したが,ちゃんと繋がっていて,やはり大したものだと思う。これが連載されたのは月刊「文庫」だというが,どんなものだろうか。今は珍しく新聞小説を読んでいるが,大した構想力だなあ,宮部さん

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最終更新日 : 2013.10.11

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