2013/09/15
瀬戸内の島を舞台に〜

「望郷」
〜湊かなえ〜

『望郷』:湊かなえ(みなと):2013年1月30日:\1400:文藝春秋:県立M高校図書館
 読むべき本がなくて手に取ったが,まずまず読める
〜瀬戸内の白綱島で暮らす30女は認知症の母を抱えて暮らし,旅人と駆け落ちして出て行った姉が作家として市の閉幕式で作文を読んでいるのに呆れている。出たくて出たくて仕方なかったのに,望郷の思いを語るのだ。姉が島を出た理由は,父が役場の若い女性を車に乗せて共に事故死し,父の居なくなった家庭に畑を売る話が舞い込み,3倍に膨らませた行きずりの男が仏壇の通帳を漁って居るところを見た母が刺し殺し,記念碑の土台に埋め込んだのを姉が手伝ったからだった。父が失踪した家で釣りでおかずを獲ろうとした男の子に,大きな魚介類を差し出した漁師の男は,網に掛かった父の遺体を再び海に流し,その負い目から母子家庭に近づいたのだった。屋敷に住んで奥様と言われる祖母は,跡取りを生まない母にきつく当たり,ちょっとでも楽しそうにしていると不機嫌になるため,TDLに行きたいなどとは言えない。籤で特賞が当たっても辞退し,楽しみにしていた修学旅行も該当する年から長野のスキーに切り替えられた。出たくても出られないのは大学に行ってからも同じで,教育実習で再会した同級生といきなり深い仲になってしまったが,子どもが生まれ大きくなって乗り物に乗れるようになって出掛けたTDLは憧れであったのに,いきなり張りぼてに見えてしまう。母が父を刺し殺し,住みにくくなった島を出た男は,歌手として名が売れるようになると,いじめっ子が会社の創立パーティーに呼び出した。島で暮らす母や姉の事を思うと断れず,嫌な思いをして発作的に海に飛び込んだが,そもそも母が父を刺したのは,酒乱の父が幼い男の首を絞めて殺そうとしたからだった。父が鬱病で自殺し,父方の祖母に預けられていた2年間,唯一できた友達も家庭内に問題を抱えていた。娘が苛めに遭って転校先に島を選んだのは,その経験があるからだが,島に72年振りに大型台風が上陸し,祖母が暮らした家は浸水被害に遭い,助けを呼んでくれたのは,当時の友達だった。故郷の島の小学校でいじめ対策に手を焼いている男は,理由を聞かずに友達を突き飛ばした僕に手を挙げた中学教師だった父が急死した後も,不満が一つある。約束していた島最後の進水式出席を父が反故にしたからだ。しかも1人の生徒の肩に手を置き,親しそうにしていた。島の放火騒ぎの被害が独りでいた我が家に及び,病院に収容された僕を見舞ったのは,父を尊敬し同じ中学教師になった,かつて苛め被害に遭っていた少年だった〜
 白綱島って大変だなあ。架空の島だけど,一島一市だったって,小豆島だろうか。小豆島って何処かと合併しただろうか。まあ,いじめ問題ね,広い意味での。疲れるなあと読んでいて思ったが,彼女の書くものは全部がそれだ(違うか?)という印象が強い。今回の舞台は北海道ではなくて,瀬戸内だけど。全部を見渡すと,設定が上手にできている事を実感する。まあ,関連が出てくるのかという期待は外れたが,雑誌に散発的に発表していたものだから,それは望めない。単行本化するに当たって書き直しするのを編集者が提案するのは,売れっ子作家に申し出にくいのだろう。それらしき島は小豆島ではないようだ・・・

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最終更新日 : 2013.09.15

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