2013/9
〜9月に読んだ本〜

死神の浮力 ☆☆ 赤目姫の潮解 世界地図の下書き ☆☆☆☆☆ 晴れた日は図書館にいこう ☆☆☆
千両かんばん ☆☆ 望郷 ☆☆☆ 日本語の<書き>方 ☆☆☆☆ 新世界より 上 ☆☆☆
新世界より 中 ☆☆☆☆ 新世界より 下 ☆☆ 新たなる希望 ☆☆☆ 僕のつくった怪物 ☆☆☆☆
幸せをはこぶ天使のパン ☆☆☆ 逮捕されたらこうなります! ☆☆☆ 地図を破って行ってやれ! ☆☆☆  

冊数が多いのは真面目に仕事をしていない証拠

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13/09/30
『地図を破って行ってやれ!』:石田ゆうすけ(いしだ):2013年7月25日:\1300:幻冬舎:東部台文化会館
★★★
 7年半かけて自転車で世界一周した人の自転車旅行記
〜東京一周。茨城は水郷から水戸まで。琵琶湖一周寄り道だらけ。種子島・屋久島・口永良部島。高知。北海道は礼文,利尻,宗谷から網走。熊本。岩手〜
 岩手の旅は前と後。うわぁ行ってみたいと思う場所があちこちにあるけど,車やバスでは行けないなぁ。ユースホステルって年配者も留まって良いとは知らなんだ!熊本で伯父の死を知り,小倉の葬式に平服で行って戻る。久慈をあまちゃん以前に知っていたのは良いねぇ。サイクルスポーツという雑誌に書いた紀行文40の中から選んで加筆

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13/09/27
『逮捕されたらこうなります!』:Satoki(さとき):2013年6月28日:\1400:自由国民社:東部台文化会館
★★★
 御法川被疑者が黙秘権を行使しているのを憤る人が身近にいるが
〜Webライターをやっている著者が詐欺容疑で逮捕され,飛行機の後部座席に乗せられて東京へ。写真と指紋採取と任意だがDNA採取の為の血液を採られ,72時間。送検され留置場に入れられたまま,勾留は10日で延長されて更に10日間。不起訴は告げられないが,証拠として押収された携帯電話が返却されたら,まず不起訴。期限の前日までに起訴通知書が届かなくても不起訴。起訴されると拘置所に移されるが,留置場より良いという人も,留置場の方が良いという人もいる。弁護士は被疑者段階から付けることが出来るようになり,当番弁護士を呼ぶこともできる。勿論,黙秘権を行使することもできるが,供述調書にサイン・捺印するときは用心〜
 警察の取り調べはえげつない。そこで取り調べの可視化が2014年に国会の提出される予定だが,警察・検察も喜ぶ向きがある。保釈金は帰ってくることが前提。刑事訴訟の99%以上100%未満が有罪だが,起訴率は50%未満だから,特別に日本の警察が優秀というわけではない。福岡から護送されて釈放されても,帰り道は保障してくれていない。証拠品の返還も自腹はないよな

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13/09/26
『幸せをはこぶ天使のパン』:宇佐見総子(うさみ ふさこ):2010年4月5日:\1300:主婦と生活社:県立M高校図書館
★★★
 食パン1200円という事で,逆転の好感触
〜小学生の頃から競輪選手になろうとトレーニングに励み,中学でラグビー部,高校で陸上競技部に所属し,高校卒業前から競輪学校の適性検査に落ち続け,年齢制限ぎりぎり技能で合格。レポーターをやっていた4歳年上のモデル・女優・舞踏家と結婚,入籍前から鎌倉に作っていた家に住み始めて3ヵ月,埼玉で落車事故に巻き込まれ,中心性頸髄損傷で一生寝たきりになる可能性を指摘されたが,必死の看病とリハビリで3ヵ月後に自宅へ。左半身に麻痺が残り,頭痛も酷いので,大学病院で診察を受けると高次脳機能障害の診断を受け,起こりっぽくなったり,手順通り進まないとパニックを起こす原因が分かった。得意だったケーキ作りをイベントのショップで披露し,手先を使うなら陶芸よりもパン種を捏ねることに使ったらどうかと思案し,大当たり。3時間掛けて一つの食パンを焼いて,3つ4つと細々と世に出していたが,口コミと紹介テレビで評判となり,3〜4年待たないと食べられず,天使のパンと評判を取るに至った〜
 35年のローンは競輪の労災補償で返済できるが,生活費は奥さんの収入に頼る。1200円の値段は一斤分ではないだろう。三斤分なら決して高くない。美味いなら猶のこと。大変だろうけど,頑張ってください

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13/09/26
『僕のつくった怪物』:乙一(おついち):2013年7月10日:\1500:集英社:駅前学習プラザ
★★★★
 マンガの原作になりそうな小説で,アメリカ人が書いたタッチが最初は感じられたが,やっぱり日本人だね。アークノアの第1作
〜アールは12才,弟のグレイは9才で,父が失踪し,母と三人で暮らしているが,学校では最初にグレイが嫌がらせを受け,それを止めようとしたアールも上級生に散々な目に遭わされている。学校での銃撃事件が起こると,自分の学校でも起こらないかと期待してしまう二人だが,父が遺した拳銃があるかも知れないと,父のクローゼットを漁っていると,不思議な絵本を発見する。出所を突き止めるため,図書館で話を聞くが,判然としない。帰り道,いじめっ子に遭遇して,逃げ込んだ空の屋敷の開けてはならない食品庫の扉を開けて,流れ着いた世界はアークノアだという。送り返すために,ハンマー・ガールやドッグ・ヘッドに引き合わされるが,異邦人が辿り着いた時には,怪物も出現するという。怪物を退治できれば,元の世界に帰れるが,グレイの生み出した大猿は森の大部屋に出現した。大部屋を照らしているシャンデリアを4000mから落とせば,ロケット砲の通用しない大猿を対峙できるかも知れないと,命を賭して作戦が実行される。空班に加わったアールは,リゼ・リプトンが転落死したが,翌朝には地上で生き返った。空班の誰かが知能を持ったアールの作り出した怪物なのかも知れない。アールが消えれば怪物も姿を消す。だけに子殺しを続けさせてはならないと考えた者がアールを襲うと,雀斑だらけの赤毛の若者がそれを阻止し,アールにパパと呼びかけてくる。アールは空中に身を投げ,それを救おうと首を伸ばした20m長の蛇が掛かっている隙に,生き返って上の階層から来たリゼは吊り下げられているシャンデリアの太い鎖を電気爆弾で切断し,大猿に落下させ,下の階層の深い海に沈めることができた。グレイは千の扉の寺院から母の許に帰るが,アールはアーク・ノアに残され,新たに出現した竜退治に同行することが決まった〜
 世界で通用しそうな物語だが,やっぱり日本人臭さが滲み出てくるなあ。リプトンにウェッジウッド,名前の付け方も創造主任せってのは良いけど,準主人公の兄弟にアールとグレイと名を付けることはなかったんじゃないかなあ。次作への期待を込めて☆4つ

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13/09/23
『新たなる希望』:三谷幸喜(みたに こうき):2013年8月30日:\1100:朝日新聞出版:茂原市立図書館
★★★
 三谷幸喜のありふれた生活11
〜2011年,生誕50周年を記念して,映画「素敵なカナシバリ」を制作し,誕生祭を催し,小林聡美と別れて犬との暮らしを開始し,映画宣伝の為に露出を多くした〜
 シットコムは見たし,誕生祭も何故か見ている。紅白歌合戦のタキシードの胸を飾ったポケットチーフはコシノジュンコが折ったペーパータオルだったとは・・・

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13/09/21
『新世界より 下』:貴志祐介(きし ゆうすけ):2011年1月14日:\790:講談社:県立M高校図書館
★★
 一応はクライマックスを迎えるが
〜町に戻って保健所に勤務し異類と呼ばれるバケネズミの原種であるハダカデバネズミの観察をしながら,バケネズミの管理を行っているが,奴らは無届けで抗争をしているらしい。大雀蜂コロニーが勝つに決まっているが,塩屋虻が奇狼丸と女王を除いて全滅したらしい。夏祭りの夜,ヒトモドキを送り込んできた野狐丸の戦略で,総攻撃が始まった。簡単には撃退できず,奴らは悪鬼を用いている。清浄寺に本部があると這々の体で辿り着くと,母の伝言が残されていて,東京に悪鬼を止める最終兵器があると語っていた。捕らえられていた奇狼丸と,乾という鳥獣管理官と,覚と早季は,小型のアーカイブ端末を持ち,潜水艇で東京へ赴く。野狐丸は悪鬼と兵士の一部を率いて追跡し,地下に逃れて兵器の保管場所を目指すが,数億の蝙蝠と虫に悩まされながら,先に進む。ビルの1階の大きな執務室の壁に設置された金庫の中から,サイコ・バスターと名付けられた炭疽菌兵器を見つけ出し,覚が相打ち覚悟で悪鬼の足許に投げつけたが,早季は咄嗟に菌を発火させて無効にしてしまった。火傷を負った悪鬼は,赤い髪と年頃から察して,死んだ友二人の忘れ形見に違いないが,人語を解さず,バケネズミとして育てられたのに違いない。同族を傷つけられないという機能が働けば,悪鬼は奇狼丸を襲えない。奇狼丸は覚に変装して悪鬼の前に飛び出す〜
 ストーリーを考えながら書いているとは思えない。まあ,〆方は最初に考えているだろうけど,思いついたままに変な生き物を登場させているようで,展開がちゃんと見えないのでハラハラはするけど,きっと結末は決まっているからドキドキはしない。バケネズミは,ハダカデバネズミに普通の人間の遺伝子を組み込んだものだったというオチねぇ・・

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13/09/20
『新世界より 中』:貴志祐介(きし ゆうすけ):2011年1月14日:\724:講談社:県立M高校図書館
★★★★
 これがアニメ化されたらしいけど,流石にラブシーンはカットだろうな
〜大雀蜂コロニーによって町へ送り返された5人は,それぞれ教育委員会の査問を受けるが,何らお咎めもなく放免され,隠し持っていた真言で呪力(PK)も取り戻す。2年後,瞬がもう会えないと言い残し,集落に引き籠もっているらしい。覚と早季は新たに張られた結界の外に踏み出すと,懐かしい瞬の家は擂り鉢状の穴の下にあり,ようやく見つけた小屋に住む瞬は10分だけの面会の後,ネコダマシを撃退して,早季を放り投げて自らを擂り鉢の中で消滅させた。漏れ出た思念が本人も気づかず,周囲を変化させる業魔となりかけていたのだ。瞬の事をXとしか思い浮かべず,新たなメンバーにも違和感を抱きながら生活するが,守が処分されると感じ取り,家出した。後を追い掛けた三人は,かつて水路で命を救ったバケネズミによって雪崩から救出されかまくらで寝かされている守を発見するが,真理亜は守と一緒に町を出て自活するという。やむなく覚を先に帰し,翌朝戻った早季は教育委員会の呼び出しで処分されそうになるが,倫理委員会の委員長の取りなしで,3日間を掛けて守と真理亜を連れ戻すように命じられる。夕べの野営地はもぬけの空,一緒にいたバケネズミのコロニーを訪ねて手掛かりを掴むしかないが,またしてもバケネズミ同士の抗争に巻き込まれてしまう。二人は雪崩に巻き込まれて死亡したと報告するしかないが,いざとなったら自分達も逐電するしかないと覚悟を決めた早季と覚は結ばれる〜
 うーん,やっぱりアニメにするとお子さんが見てはならない部分が出てきて,カットすると話の筋が変わるよね

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13/09/18
『新世界より 上』:貴志祐介(きし ゆうすけ):2011年1月14日:\724:講談社:県立M高校図書館
★★★
 あの「悪の教典」の作者。似たような内容かなと思っていたら,和風SFファンタジー。ハリーポッターの世界のような魔法ならぬ呪力の世界,不思議な生き物がぞろぞろ出てくる百年後の日本
〜渡辺早季は市長の父と司書の母と共に神栖66町に住んでいる。この町の人口は3千人,周囲は50kmで八丁標(しめ)が張り巡らせているから安心だが,その外は危険な生物がおり,悪鬼や業鬼には気を付けなければならない。和貴園に6才になると入学したが,卒業して全人学級に入るのは,徴が来てからだ。早季は仲間の秋月真理亜や覚,瞬などが卒業して取り残されたが,ある夜家中が振動して,徴が現れた。結界の外の寺で無愼上人により一度呪力は取り上げられ,真言(マントラ)と共に授けられた。学校では呪力を磨くことが求められるが,班で川を遡るキャンプでは,他校出身の守と5人で,警告を無視して,筑波山に登っていった。そこで見掛けたのはミノシロモドキ,何とか捕まえようと,トラバサミを使うと捕らえることが出来たが,ミノシロに擬態しているのは,国立図書館のアーカイブで,脅すと本に載っていることは何でも答えてくれる。この世界の成り立ちについて聞くほど,学校で習ったのは違って驚きの連続である。更に聞こうとすると僧形の離塵師が現れて,ミノシロモドキは白い炎に焼かれ,5人の子どもたちの呪力も封印されてしまった。町へ連行する途中,体調の優れない師は外来系のバケネズミの矢に当たって落命し,呪力のないまま,バケネズミに追われることになる。散って追っ手を振り切ろうとしたが,早季と覚は従順なハゲネズミのコロニーに連れて行かれ,外来種との戦いで神として参戦せざるを得なくなる。土蜘蛛は塩屋虻に毒ガスで攻め掛け,巣の中で死にかけるが,早季は意識が朦朧としてきた覚の耳元で思い出した覚の真言を唱え,覚の呪力と加勢に来た大雀蜂の力で土蜘蛛を掃討する〜
 SFの作家だったんだね。世界観に馴染むまでは読み進められない。虫や動物・植物の名はカタカナで書くの一般化しているが,漢字でふりがなを振ってくれるのが嬉しい。架空のものまでね

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13/09/17
『日本語の<書き>方』:森山卓郎(もりやま たくろう):2013年3月19日:\840:岩波書店:県立M高校図書館
★★★★
 書き方と打っていて懐かしい感じがしたのは,小学校時代の習字の時間だ。で,<書く>と括弧を付けたんだろう
〜T基礎編1まずは「文字」から(漢字・かな)2どんな「語」を使う?(ボキャブラリーの輝き)3「文」を組み立てる4「段落」をまとめるU応用編5わかりやすく伝える(報告文)6私の考えを主張してみる(論説文)7ちょいと文学してみる(詩,俳句,短歌,随筆,物語など)8心を伝える(手紙文)〜
 1960年生まれで早稲田大学文学学術院の教授だそうだ。しかもこの歳で他大学の名誉教授。最近は大学院教授の肩書きを多く見るようになったが,昔に較べて安っぽい肩書きになったような気がする。40年前は,学部の先生が院生の面倒も見ていたと記憶しているが,今は違うのだろうか。中学の頃に書いた作文が,みんなの前で曝されて,ここがダメ,そこもダメと言われたことが今に結びついているようだ。それを先に書いてくれると,シンパシーが湧くのになぁ

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13/09/15
『望郷』:湊かなえ(みなと):2013年1月30日:\1400:文藝春秋:県立M高校図書館
★★★
 読むべき本がなくて手に取ったが,まずまず読める
〜瀬戸内の白綱島で暮らす30女は認知症の母を抱えて暮らし,旅人と駆け落ちして出て行った姉が作家として市の閉幕式で作文を読んでいるのに呆れている。出たくて出たくて仕方なかったのに,望郷の思いを語るのだ。姉が島を出た理由は,父が役場の若い女性を車に乗せて共に事故死し,父の居なくなった家庭に畑を売る話が舞い込み,3倍に膨らませた行きずりの男が仏壇の通帳を漁って居るところを見た母が刺し殺し,記念碑の土台に埋め込んだのを姉が手伝ったからだった。父が失踪した家で釣りでおかずを獲ろうとした男の子に,大きな魚介類を差し出した漁師の男は,網に掛かった父の遺体を再び海に流し,その負い目から母子家庭に近づいたのだった。屋敷に住んで奥様と言われる祖母は,跡取りを生まない母にきつく当たり,ちょっとでも楽しそうにしていると不機嫌になるため,TDLに行きたいなどとは言えない。籤で特賞が当たっても辞退し,楽しみにしていた修学旅行も該当する年から長野のスキーに切り替えられた。出たくても出られないのは大学に行ってからも同じで,教育実習で再会した同級生といきなり深い仲になってしまったが,子どもが生まれ大きくなって乗り物に乗れるようになって出掛けたTDLは憧れであったのに,いきなり張りぼてに見えてしまう。母が父を刺し殺し,住みにくくなった島を出た男は,歌手として名が売れるようになると,いじめっ子が会社の創立パーティーに呼び出した。島で暮らす母や姉の事を思うと断れず,嫌な思いをして発作的に海に飛び込んだが,そもそも母が父を刺したのは,酒乱の父が幼い男の首を絞めて殺そうとしたからだった。父が鬱病で自殺し,父方の祖母に預けられていた2年間,唯一できた友達も家庭内に問題を抱えていた。娘が苛めに遭って転校先に島を選んだのは,その経験があるからだが,島に72年振りに大型台風が上陸し,祖母が暮らした家は浸水被害に遭い,助けを呼んでくれたのは,当時の友達だった。故郷の島の小学校でいじめ対策に手を焼いている男は,理由を聞かずに友達を突き飛ばした僕に手を挙げた中学教師だった父が急死した後も,不満が一つある。約束していた島最後の進水式出席を父が反故にしたからだ。しかも1人の生徒の肩に手を置き,親しそうにしていた。島の放火騒ぎの被害が独りでいた我が家に及び,病院に収容された僕を見舞ったのは,父を尊敬し同じ中学教師になった,かつて苛め被害に遭っていた少年だった〜
 白綱島って大変だなあ。架空の島だけど,一島一市だったって,小豆島だろうか。小豆島って何処かと合併しただろうか。まあ,いじめ問題ね,広い意味での。疲れるなあと読んでいて思ったが,彼女の書くものは全部がそれだ(違うか?)という印象が強い。今回の舞台は北海道ではなくて,瀬戸内だけど。全部を見渡すと,設定が上手にできている事を実感する。まあ,関連が出てくるのかという期待は外れたが,雑誌に散発的に発表していたものだから,それは望めない。単行本化するに当たって書き直しするのを編集者が提案するのは,売れっ子作家に申し出にくいのだろう。それらしき島は小豆島ではないようだ・・・

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13/09/13
『千両かんばん』:山本一力(やまもと いちりき):20137年7月20日:\1600:新潮社:茂原市立図書館
★★
 大した話題じゃないけど,出てくる人が皆立派過ぎて
〜飾り行灯職人の武市は,弟弟子が作った活魚処の大きな看板が評判を呼んでいるのを目にして,気が気でない。本来なら自分が造っていたかも知れないが,自分を子ども時分から可愛がっていてくれた親方が急逝して,おかみと反りが合わずに追い出されたからだ。深川の乾物問屋の飾り行灯を任されたが良い思案は浮かばない。加賀様の行列を見て,あの赤色を使いたいと思い,子どもが漕いでも跳んでもなく速い猪牙舟を見て,屋根の上に舟を飾ったら人目を惹くと思案した。あちこちに繋ぎを付けて,実現に漕ぎ着けた〜
 なんじゃ,なんじゃ・・・って感じ。赤い色って陽に曝されて褪色するんだよね。彼の造った看板の赤い紋所は大丈夫だろうか。大丈夫じゃないだろうなぁ

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13/09/11
『晴れた日は図書館にいこう』:緑川聖司(みどりかわ せいじ):20137年7月5日:\580:ポプラ社:県立M高校図書館
★★★
 ほのぼのしすぎの感がある
〜小学校5年の茅野しおりは,両親が幼い頃に離婚しているため,編集者の母と地方小都市に暮らしている。母が不在の時は従姉が司書として勤める図書館で過ごすの好きだ。ある日も児童書を手にしていると,一人で来ている幼い女の子に「私の本,カナの本」と言われて戸惑う。作家の母親が入院し,祖父母が可哀想だと真実を告げなかったので,カナは母が度々訪れていた図書館に捜しに来て,母が娘の名を混じらせた,著作のかな入りタイトルを幼い娘は憶えていたのだった。同級生の男子・安川君から,60年以上延滞している本を返すと罰金は幾らか聞かれ,司書の美弥子に訊ねると,罰金はないと言う。祖父が借りて疎開の為に越して返せなくなったチェーホフの初恋を返しに来たのは祖父の亡くなった後だった。同級生の茜ちゃんが「名もない花はない」と教えてくれて,母に話すと有名な話らしい。図書館の返却ポストが使えなくなったのは,悪戯で水浸しになったからだという。茜が持っていた「本の名前」を手に取ると,中のページが濡れて汚れていた。安川君は,水辺に落としたのを誤魔化すために,幼馴染みの竹沢君が工作したのだと見破った。児童書が次々に不明本になる。同じイラストレーターが装画を手掛けていることに気が付き,そのキャラクターをポスターに使用すると,名乗り出てきたのは小3の男子。ファンタジーを借りるのを同級生に見られるのは嫌だと,無断で持ち出していたのだが,美弥子にその作家が男だと告げられて,図書館祭りのポスターを描くことで協力してくれた。楽しみにしていた祭に騒いでいる子を注意しない母親に腹を立てると,それを褒めてくれたのは中年の男性だった。その男は土地の出身の作家として講演し,しおりは自分の父親だと直感を働かせていた。美弥子は雨の中で図書館から借りた本を声を出して読む女性の真意を小5の同級生の男の子と共につきとめる〜
 2003年10月に小峰書店から出た単行本に最後の短編を加えて文庫化。その短編だけ語り手を替えてアクセントをつけた。世の中,こんなに穏やかだった平和で良いけど,離婚問題だけは取り上げて,現代らしい陰を与えている

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13/09/10
『世界地図の下書き』:朝井リョウ(あさい):20137年7月10日:\1400:集英社:県立M高校図書館
★★★★★
 エエ話や・・・
〜太輔が事故で両親を失い,入った児童養護施設には,同学年の淳也とその妹の麻利がいて,2つ違いの中間にはお洒落な美保子がいる。もう一人は6才上の佐緒里で班のまとめ役。大学進学を夢見ていたが,弟の入院費を負担してくれた遠い地の親戚から,高校卒業後は経営する印刷所を手伝うように言われる。資金不足で中断している願い飛ばしを園を出ていく前に実現したい4人は小学校の卒業生を送る会での実行を決意する〜
どこかで見たような画風だと思ったら,スタジオ・ジブリの人だった。ジブリのアニメにしたらほのぼのとして良いかも知れないな

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13/09/09
『赤目姫の潮解』:森博嗣(もり ひろし):2013年7月24日:\1700:講談社:茂原市立図書館
★★
 書き下ろしじゃなくて小説現代に連載されたものだった
〜赤目姫を乗せた小舟で湖を渡り,篠芝と鮭川は摩多井の屋敷に着き,部屋に案内されたがサンルームで過ごすことになった。赤目姫との思い出を交互に話すことになった。砂漠の中の緑目王子の宮殿で地中から吹き出す風を集めた遊具部屋や,砂で曼荼羅を描く部屋を見て,緑目王子の父に会ったこと。ナイアガラからトロントまでドライブしたこと。ドクタ・マタイが訪ねた先は,地球の自転の僅かな揺れで,地形が変わり,川の流路が変化したが,原子炉を動かして,サー・ロレンスの宮殿は潜水艦仕様となり,無事だったが,マタイそのものは人形だったことを知る。そもそも,人は神によって操られた人形かも知れない。赤目姫自体は喋ることができないが,他の生き物に意識を乗せられる異能を持つ。人形と人の違いは何なのか。大差ないのではないか。まだ,人形劇は続く〜
 何故,読みにくいのかと言うと,私がコロコロ変わるからだ。連載ものだとこうしたことは起こりやすいが,章の途中でも変わってしまうので,読者は戸惑う。読み通してみて,再読すると見通しができるかもしれないが,そこまでの気力がなくて残念

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13/09/02
『死神の浮力』:伊坂幸太郎(いさか こうたろう):2013年7月30日:\1650:文藝春秋:県立M高校図書館
★★
 序章に違和感があって
〜神と呼ばれるのが嫌な千葉は,娘が殺された作家の判定をするのだが,犯人の本城崇は用意周到に準備をしていて,証拠も残していない。かれは25人に1人のサイコパス,良心を持たない男なのだ。無罪の判決が出て,控訴期限の2週間の内に,山野辺遼と妻は復讐を企てている。スタンガンで武装して裁判後に攫って来る計画だが,本城は人を支配することを歓びとする人間だ。雑誌社が用意したホテルに踏み込んだが,千葉の一言で隙が生じて,逃がしてしまった。町を定点観測している引きこもりのビデオが無罪を証明する証拠になったが,その男を訪ねていくと,自分の車に爆弾を仕掛けられて拘束されていた。最初に山野辺に付いた編集者が,浜離宮にいると情報を寄越したが,赤と白と青のレインコートを着た男三人組にスタンガンで動けなくされ,千葉が千枚通しで痛めつけられている場面で,青のレインコートが拳銃を渡して,このままでは駄目なのではないかと唆す。千葉は殆ど痛みを感じないようで,拷問していた二人も呆気にとられて,逃げ出すことができた。千葉の情報では一人暮らしの老人宅に厳重なカメラ網を造って立て籠もっている。宅配食事サービスを利用していると知って訪れ,老人にメモを見せるが,老人は2時間後に来訪せよと返事を寄越した。2時間後は不自然だと考えた千葉が,早めに再訪することを提案すると,老人は毒に中って瀕死だった。山野辺二人が犯人にされた。編集者が捕まって多摩の蕎麦屋に呼び出されたが,送られてきたビデオの小さな音で,場所を突きとめ,編集者からは,鍍金工場から盗まれた青酸カリをダムに大量に流すらしい。それは山野辺の娘が新かちかち山で描いていたストーリーなのだ。騙された振りで山野辺が蕎麦屋に行くと,編集者を救おうと言って,実際にはダムに連れて行かれそうになった。千葉の漕ぐママチャリはワンボックスカーに追いつき,車と共に湖に本城は沈んだが,彼の判定者は20年の寿命を与えていたから,湖の中で20年過ごすことになる。山野辺に付いていた千葉は可の判定を下していた〜
 何だかプロローグで物語の世界に入り込めないので違和感が強かったが,他の部分が書き下ろしで,プロローグだけが雑誌発表だったからかも知れない

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13/09/
 
★★
 
 
 

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最終更新日 : 2013.10.02

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