2013/03/27
隠し球という意味が〜

「喫茶店タレーランの事件簿」
〜岡崎琢磨〜

『珈琲店タレーランの事件簿』:岡崎琢磨(おかざき たくま):2012年8月18日:\648:宝島社:東部台文化会館
 また会えたなら,あなたの淹れた珈琲を
〜浮気を疑われて彼女に大内刈りで倒された僕は京都の町を追い掛けて珈琲好きで有名なタレーランの名を冠する喫茶店を見つけ,その味と可憐なバリスタに魅せられたが,投げられた時に財布を落としたらしく,携帯番号とアドレスをメモして取りに戻った。その金を返すために再び訪れるとバリスタは僕の名をアオヤマだと云い,誕生日も神無月の末日だと推理する。勿論,バリスタ切間美星はアドレスから推理したわけだが,彼女の淹れるエスプレッソと大叔父というオーナーの藻川又次という老人の作るアップルパイは絶品だ。二回分の代金を払って帰ろうとすると,僕のモスグリーンの傘がなくなっていて赤い傘が残されていた。手回しミルで豆を挽きながら,間もなく傘は返ってくるとバリスタは断言する。果たして戻ってきた先客の一人はマミーに言い付けると叫びながら僕の頬を張って出て行った。戸部奈美子は,別れたくて避けている元カノの友人だったのだ。遠縁で帰国子女の小須田リカが彼氏の浮気を疑って僕に祇園祭の夜,浮気現場の写真を撮る様に依頼してきたが,僕にそんなゆとりはない。バリスタに相談すると,藻川老人が張り込みを引き受けてくれた。写真を見せられていた僕が学食を利用していると,リカのボーイフレンドと出会い,話をすることができたが,浮気をするような男ではない。しかし,老人は祇園さんで彼を見つけ,恋人繋ぎで手を繋いでいる浮気現場を写真に納めてきた。浮気を疑った根拠は,ブラック珈琲を飲めないと云っていた彼氏が,ツイッター内で「家で一人でコーヒーを呑んでいる」という書き込みをしたことで,駆けつけたリカが部屋に上げて貰えず,テーブルの上にブラックコーヒーが置いてあったことだったが,バリスタはブラックの意味がアメリカでは異なっていること,つきあってくれの意味をリカが取り違えたことが原因だと推理する。8月初めに牛乳を奢らされた西洋人の風貌を持つ小学生が8月末の水曜にランドセルを背負い,あちこちに痣を作って帰ってくる場面に遭遇し,その直前に男の子3人が給食袋を振り回したり蹴りつけて帰っていく場面を見た僕とバリスタは,学校で子犬か子猫を飼うために牛乳を欲しがり,8月最終週に始まった二学期早々,クラスメイトに見つかって小競り合いになった挙げ句にいじめっ子が猫を給食袋に押し込んで帰っていく場面だと推理した。飼いきれない子猫はシャルルと名付けられ,喫茶室の看板猫に収まった。僕の出先に元カノが先回りして追い掛けてくる。逃げ回る内に辿り着いたタレーランに5分後に追いついた虎谷真美に新恋人がバリスタ美星だと告げると仕方なく引き上げたが,直後に出現した訳を美星はオーナーの藻川が奈美子を通じて教えていたことを言い当てる。休みの日,ココロフトという雑貨店でダーツの矢を見ているとスーツ姿の青年が試投してみてはと勧めてくる。店員は携帯電話を使っていて職務怠慢であるが,投げてみて3投目,目を瞑ると真ん中に突き立ち,買おうと決意して振り返ると,商品の山は消えていた。店を出ると,バリスタ美星が紙袋を持って声を掛けてくる。夕食に誘うと喜んで付いてくるが,木屋町の京風居酒屋で僕の欲しかったダーツの矢を取り出してきた。携帯を使っていた店員が彼女の親友だったのだ。スーツ姿の青年が誰なのかは,向こうから声を掛けられ,美星が客の心を開こうとして惚れられ,断ると逆恨みしていることを,かつての常連客・胡内だと携帯電話の番号を渡される。その名をバリスタに告げると卒倒したが,胡内こそが逆恨みしている本人だと告げられる。胡内は僕に対し彼女に接近することを禁じる警告を発していたが,僕は猿珈琲を餌に彼女を自分の家まで誘うことに成功した。コンビニに紙フィルターを買いに出入りした後,サプライズで用意した熊のぬいぐるみは手足にひっかき傷が付けられていた。胡内か,元カノの真美か。クローゼットにシャルルが隠れていることを言い当てる。タレーランからの帰り道,バリスタは胡内に襲撃された。僕は美星と別れる決意を電話で胡内に告げ,クリスマスの夜8時で,約束は守るから来てくれるなと宣言する。胡内は来るなと云われても美星を見守るためにやってきて,僕と一緒に歩き出す彼女に拳を振るおうとしたところを,彼女の一本背負いが決まった。そう,僕の名はアオヤマではなく青野大和,ロックオン・カフェのバリスタで行く行くは独立を考えている。美星役は復縁を約束した真美だ。二度と美星につきまとわない約束をさせ,僕もタレーランを訪れない覚悟であったが,美星はすべてを見透していた〜
 第7章の「僕」が誰なのか,判然としない。第10回「このミス」大賞の隠し玉とは・・・応募作はミステリーの部分が弱く,大幅に書き換えを求めて,この本にしたということ。なるほどねえ。確かにミステリー仕立てが整っているね,云われなければ分からないけど

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最終更新日 : 2013.03.28

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