2013/03/18
どこまで続くのか〜

「真夜中のパン屋さん 午前2時の転校生」
〜大沼紀子〜

『真夜中のパン屋さん 午前2時の転校生』:大沼紀子(おおぬま のりこ):2012年12月5日:\640:ポプラ社:県立M高校図書館
 価格据え置き
〜高校3年になった希美は隣席に転校生を迎える。腹話術で自己紹介する変わり者の男子だ。名は美作孝太郎。いきなり,危機が迫っていて,他人に親切にすると逃れられると売らない結果を話す。二人の通学途中に若い男が運転する車に轢かれそうになり,故意であるようだ。空席になっている希美の幼馴染みの涼香にも親切にすべきだと云い,特急電車に飛び込みそうな勢いに心配になった希美は海岸で,海外に移住する予定を聞き出す。顛末を弘基と陽介に話していると,こだまの父親が店にやってきて,名は美作,孝太郎の父だと明かす。こだまの母親は美作の元同僚・安倍の診療所で働いていて,その怪しい医師がこだまの母・織絵の新しい恋人で,自分の弟の新しい父に安倍医師がなるのが嫌だと孝太郎は告白し,希美に一緒に調べることを願い出た。サトさんという大きな看護師も不思議で,ブランジェリー・クレバヤシで怪しげな有料占いもやっている。老人を集めて明るく遺言状を書こうというのが最も怪しく,以前全財産を安倍医師に贈ると遺言状を書いた資産家老人の親族からも訴えられている。孝太郎と希美が夜の診療所に忍び込むと,希美を車で轢こうとした若い男がサバイバルナイフを持って押し入り,二人を縛り上げ,遅れてやってきた安倍も縛った挙げ句,孝太郎には父親に電話して,彼の妹を救おうとせず見殺しにした謝罪をしろと要求する。狙われていたのは,希美ではなく,神と云われる脳外科医・美作の息子だったのだ。電話をしても美作は取り合わず,GPSで通報したというのみ。パトカーのサイレンに慌てる犯人に,安倍は戸棚の後ろの隠し扉から逃げるように忠告する。美作は過去の医療事故を隠し,そのとばっちりを受けた安倍が退職したことを知った孝太郎は,父を恥ずかしく思い始める。不法侵入の罰として診療所を手伝っていた孝太郎は,白い怪しい粉が詰まったビニール袋を発見する。弘基の同級生で怖いお兄さん達に通じている多賀田は,それが覚醒剤でちんぴらが一人で強奪して行方が知れなくなっているものだと教え,預けることになった。孝太郎は父の破滅を願い,安倍医師を覚醒剤所持で脅して父が過去に犯した医療ミスを広く世間に知らせて,高名なドーキング博士の脳外科手術で更に名を挙げることを阻止に掛かる。色よい返事をしない安倍医師を調べると,大学時代は善意サークルを立ち上げ,そのグループ内では集団暴行事件も起こしている。業を煮やした孝太郎は,その筋になくなった覚醒剤は診療所にあると情報を流し,診療所はさんざんに荒らされ,安倍医師は姿をくらましサトさんもこだまも織絵もパン屋の二階に避難することとなった。父親破滅作戦に反対する希美は,美作医師を勤務病院に訪れて息子との和解の道を探るが受け入れて貰えず,二人が別れて直ぐ,美作医師の悲鳴で振り返ると,妹への医療過誤で腹を立てている若い男が美作医師の腹にナイフを突き入れ,携帯を破壊して,誰にも看取られず死ぬ人の気持ちを思い知れと捨てぜりふを残して去っていく。希美の持っていた体育用のタオルで止血が叶った美作は自分の勤務する病院に担ぎ込まれ,どこからともなく出現した安倍は,駆けつけた孝太郎に徹底的に破滅させる絶好の機会だと死に神らしい本領を発揮する。輸血が不可欠な状況で輸血可能な安倍医師に,孝太郎は父を救ってくれるように必死の願いを告げるのだった。安倍はこれこそが魔法であり,善意は人には伝わりにくいと嘆息するが,善意の王国を諦めたわけではないと語る。看護婦のサトこそは覚醒剤を強奪したちんぴら・柴田悟であった。暮林が店番を務めるパン屋に痩せ細った希美の母・篠崎律子が現れる〜
 登場人物同士の複雑な関係が絡み合ってきて,この作品全体に対する作者の意気込みの高さが感じられる。ちょっと,あざとらしいが・・・。安倍医師や美作医師の詳しい情報が集められなかったのは,脚本家の斑目が長期海外出張中だったというエクスキューズや,孝太郎が希美に接近した理由が,腹違いの弟・こだまが目的ではなくて,みんなと仲良くしたかっただけという子どもの発言だとか,織絵の前だけに姿を現したカッコウの母・律子が密かに暮林に連絡をとっていたとか,律子が痩せ細っているとか,孝太郎とこだまの父・元史が外科医としては致命的な網膜色素変性症だとか,次作に繋がる布石は打てるだけ打っている

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最終更新日 : 2013.03.18

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