2013/02/12
さすが・さすが〜

「へこたれない人」
〜佐藤雅美〜

『へこたれない人』:佐藤雅美(さとう まさよし):2013年1月17日:\1700:講談社:東部台文化会館
 物書同心居眠り紋蔵シリーズの?
〜稲が嫁いだ蜂屋あらため剣持鉄三郎が腹痛で役目を休んでいると聞いた紋蔵は,小日向近くに見舞うが,帰りに知り合いの寺男から倅が行方不明だと聞かされ,助言を求められる。帰宅してみると,鉄三郎が亡くなり,文吉を連れて来るように蜂屋からの伝言が残されていた。駕籠で駆けつけると,稲とよちよちの娘・千鶴の生活を守るため,文吉を養子とし,ゆくゆくは文吉が千鶴と結婚して剣持家を継ぐように求められる。文吉はちよと約束を交わしており,2歳の赤ん坊を将来の嫁にするのは心配だが,養父の紋蔵の勧めは断れない。南町奉行所で紋蔵と同僚の山本庄蔵は馬廻り同心だが,本業より金貸しや婿嫁取りの仲介に忙しい。小さな石碑を解読した三河の寺が幕府と尾張から貰う10両を元手に金貸しをするのを浅草の荒れたお堂で行うのを手伝うため,葵の紋の入った提灯を高張りにしたことが問題とされた。更に卒の身分でお供を連れているのは前例がないとされるが,商家でも女も供を連れていて,士分が供を連れてはならないのは理不尽だと庄蔵が云えば,その通りかも知れない。不届きであり罰さざるをえないが,紋蔵が前例を調べ処払いは重すぎるので,扶持召放が相当だと上に揚げると裁許が下った。庄蔵はへこたれず,供を連れて副業を本業として張り切り,美女ちよの縁談をまとめようと動き回る。持ち込んだのは40万両分の土地を持つ人形屋の倅だったが,ちよは喧嘩の弱い男はだめだと,自分を振った文吉と喧嘩で勝ったら話を進めると言い出す。久太郎と文吉は木刀で立ち合うが,両者とも肩の骨を折り引き分けに終わった。久太郎の見届けは岩吉,文吉の見届けは旗本の内藤夢之助だった。夢之助は元は大名家にいて親戚の旗本に養子に入ったが,愛嬌がある短躯で醜男,隣家の娘を嫁に貰ったが,風采が上がらないと実家に戻ったが,夢之助が新たな嫁を貰ったことが気に入らず,大雨が降れば水が溢れる池を作って嫌がらせをし,内藤家も糞がついた褌を干して匂いが漂う対抗策を巡らしている。遊びに出向いた文吉は褌を掲げさせた人物の品が悪いと云い,夢之助も止めると隣の池も埋め戻された。町場暮らしがしたい夢之助は紋蔵に長屋を借りられないかと相談し,それは無理だと断って,あくどい早稲田の名主が内藤新宿にも曖昧宿を持っていることで,処払いにする計画を思いつく。床屋の株を買いたいが金の不足する職人に金主を紹介する舞台として奉行所を選んだ庄蔵だったが,借りた金を女房に預けて近所に鍋を食いに行き,フグの白子の毒に中って亡くなり,女房は金を持って昔の男の処に走ってしまった。金主は庄蔵が請け人であるから補償しろと云うが書き付けはなく,舞台が奉行所内であったことで,次には奉行所を訴えると言い出した。処置に困った奉行所は庄蔵に責任を取らせようとするが,大名貸しの借り換えを請け負った奉行所役人は多く,不正を暴かれると困ったことになる。幸いにも逃げ出した男の処で髪結いの女房は見つかり,残った金を返済にあて,何事も起こらなかった。夢之助は兄と父が死んで越後村山5万7千石の藩主となったが,見映えの良い甥が相応しいと考える国家老らの嫌がらせに会い,相談された紋蔵は文吉を屋敷に送って楽しげに講学と武芸の稽古に励ませる。次第に夢之助の人柄に惹かれた若い侍から信望を集め,国家老も手が出せなくなってきた。通町で小間物屋を継いだ兄が,寄席の席亭に収まり,弟には旨い商売ではない小間物屋を担わせていたが,弟は独自の工夫で紙入れを売り出し評判を集めていた。兄は30両余りで分家させ,息子に跡を継がせたく,奉行所に訴えると,結論は兄の主張通りで,世間の評判は悪い。奉行所に迷惑を掛けたと考えている庄蔵は,弟との許にいた職人達を口説き落とすことに成功した。稲には蜂屋が新たな縁談を持ってきて,渋る稲も首を縦に振らざる得ず,文吉は律儀にも将来の嫁に挨拶を繰り返する〜
 音羽の岡場所が取り締まられる前に同心や岡っ引きが手を回していたことや玉子問屋の後添いと義理の息子の話,奥絵師・狩野が乳母の倅を救おうとした話は,巧く盛り込むことができなかった。流石,佐藤さんって気がするけど,シリーズを読み継いでいないで,いきなりこの本を読み出した人は訳が分からないだろうなあ。ちゃんとした説明を,話の流れを切らずに入れているのも流石だよね。こうした複雑な絡みを書けるだけでも凄い

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最終更新日 : 2013.02.13

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