2013/2
〜2月に読んだ本〜

パワー<上> ☆☆☆ パワー<下> ☆☆☆ ギフト ☆☆☆ ヴォイス ☆☆☆☆
「経済効果」ってなんだろう? ☆☆☆☆ 編集ガール ☆☆☆☆ 会津春秋 ☆☆ 黒王妃 ☆☆☆☆
神様のみなしご ☆☆☆ 橋下徹vs石原慎太郎 へこたれない人 ☆☆☆☆☆ 一生一途に ☆☆☆
それでも地球は回ってる ☆☆☆ 大富豪アニキの教え ☆☆☆ ソロモンの偽証第T部偽証 ☆☆☆ ソロモンの偽証第U部決意 ☆☆☆☆
ソロモンの偽証第V部法廷 ☆☆☆ 木槿ノ賦 ☆☆☆ 大人の国語力大全 ☆☆  

冊数が多いのは真面目に仕事をしていない証拠

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13/02/26
『大人の国語力大全』:話題の達人倶楽部(わだいのたつじんくらぶ):2012年1月5日:\1000:青春出版社:東部台文化会館
★★
 この一冊で面白いほど身につく!
〜1表現力が200%アップする!できる大人の慣用句;2誰も教えてくれなかった敬語のコツ;3さりげなく使いこなしたいカタカナ語;4知らないと話にならない漢字;5覚えておいて損はない四字熟語;6教養が試される国語の常識;7品のよさを演出する大人のことわざ・故事成語;8気になる語源の本当の話〜
 40年前の大学の教科書ほどの簡便な造り。カタカナ語が役に立つかな? そう・・・イシュー(論点),パースペクティブ(遠近法→見通し),ソフィストケーテッド(世間ズレした→都会的に高度に洗練された),スキーム(計画・体制・概要),インセンティブ(刺激),アントレプレナー(起業家),ヘゲモニー(主導権),メタファー(隠喩・暗喩)・・・って処か

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13/02/25
『木槿ノ賦』:佐伯康英(さえき やすひで):2013年1月13日:\648:双葉社:茂原市立図書館
★★★
 三部作なの?
〜豊後関前藩の江戸屋敷を舞台にしたお家騒動は終息し,小梅村では正睦と照埜を交えた情愛溢れる生活が続く。藩主は養子とした俊次を伴って出府し,田沼一派の妨害を排除して将軍に拝謁が叶い,継嗣として正式に認められた。俊次は小梅村の尚武館道場に入門が許され,喜んで通うが,鈴木清兵衛の江戸起倒流による嫌がらせは続いている。その都度,配下の霧子や弥助,小田らが撃退しているが,陸路を帰る磐音の両親が襲撃されるのを予想し,鎌倉の切り通しの一つで,迎え撃ってこれを撃退した。正睦の思惑は藩主の正室の逃げ込んだ東慶寺を訪ねて,藩主の書を渡すことだった。武村家の嫡男・修太郎も道場に通うようになったが,さぼり癖がつき,下谷広小路で破落戸の仲間に加わっているらしく心配は広がる。田沼親子に系図を奪われた佐野は憤懣を持ち,道場へ磐音を訪ね,遺恨を晴らすといきり立つが,磐音に斬りかかって相手にならず,自重するように説得される。呼ばれて出掛けた吉原では,山形に嫁いだ奈緒の亭主が馬に蹴られ,商売が傾き懸けていると知らされ,妓楼の幼女を人質にした遊女の足抜け騒ぎを解決し,25両の謝礼を受けた。25両を持って,研ぎ師・百助を訪問すると,旧道場の床下の瓶から出てきた短刀の茎(なかご)には「三河国佐々木国為代々用命 家康」という言葉が葵の紋に添えられていた。その頃,稽古を終えて船で藩邸に帰る俊次が襲われ,供の慈助が槍で太腿を刺され,弥助・重次郎らが救援に駆けつけて,親玉の鬢に弥助の鉄菱が命中したが,霧子は短弓の矢を腿に受けていた。双方とも毒が塗布されており,意識不明に陥る。捕らえた起倒流の師範・池内大五郎を引っ立てて起倒流に抗議に行き,重富利二郎は客分の三田二郎左衛門をあっさりと打ち倒し,磐音は真剣で向かってくる鈴木清兵衛を木刀の突きで打ち倒した〜
 三部作という割にだらだら前半は流れていき,最後の10ページほどで怒濤の展開,しかも終わっていないし。田沼の権勢に陰りが見え始めて,この一連の三部作は終わりかぁ。これは42冊目

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13/02/23
『ソロモンの偽証第V部法廷』:宮部みゆき(みやべ):2012年10月10日:\1800:新潮社:県立M高校図書館
★★★
 読み終わったー
〜8/15開廷日:井上判事の中学生とは思えない態度の挨拶。午前は楠山教諭と野田健一と津崎元校長と葬式帰りに大出とコンビニで会った土橋雪子の証人,午後は卓也の父・柏木則之とHBS記者の茂木悦男と柏木宏之の証言。二日目:城東署の佐々木礼子刑事と井口充と美術の丹野教諭と元HBSアルバイトの小玉由利の証言。3日目:非公開にした教室で三宅樹理と橋田祐太郎の証言。終わってから森内教諭に嫉妬して怪我を負わせた隣人の垣内美奈絵が出頭前に証言台に立つ。4日目:午前は大出らの強盗致傷の被害者である増井望と花火師の国選弁護人である今野弁護士の証言。午後は被告人である大出俊次の証言。終了後,小林電気店の小林店主から公衆電話を使っていたのが弁護人・神原和彦だと藤野涼子は聞いて意外にも腑に落ちる。5日目:終日休廷し,それぞれの時間を過ごす。20日最終6日目:予定外で,柏木や神原が通っていた塾の経営者である滝沢卓と小林店主の証言。そして最後の証人である神原和彦は,電話は柏木から,思い出の地を辿って電話を掛けて心境を確認するゲームの後で,真夜中の中学校の屋上に呼び出され,きちんと話をしなければ明日以降は会うことはないと脅され,付き合いきれないと帰ったことを後悔していると証言する。簡単な検事側の最終論告と弁護側の最終弁論で結審。直後に三宅樹理は立ち上がって発言を求め,再主尋問を行い,目撃したのは自分一人で,心配した松子が目の前でダンプに撥ねられて死んだことを深く後悔していると告白する。陪審員による評議の結果,被告は無罪。強いて云うなら,柏木卓也が未必の故意によって柏木卓也を殺害したと事実認定を告げる。いつの間にか,裁判で裁かれているのは柏木卓也になっていて,三宅樹理も神原和彦も自分を責めていた。二十年後,国語の教員になった野田健一は母校に戻り,現校長に「あの裁判が終わってから,僕ら−−友達になりました」と語る〜
 「ソロモン」は賢者の意味かな? 立派な中学生で,20年後には3人の法律家と警察官と格闘家と将棋指しがいそうだね。考えすぎで嫌われて,人騒がせで嫌な奴はいるよね。この第V部,意外な展開はなかったね。伏線はあったが,隠し玉の人物を証人として登場させるのが宮部さんの手だったね

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13/02/19
『ソロモンの偽証第U部決意』:宮部みゆき(みやべ):2012年9月20日:\1800:新潮社:県立M高校図書館
★★★★
 第T部よりも読みやすい・・・わりとすんなり・・・1冊目が読めればね
〜藤野涼子は振り回されるのが嫌で,3年の夏休み直前の旧2年A組が卒業制作に何をやるか話し合う場で,一連の事件・事故で何を思い感じたかを綴ろうと提案した。担任代わりの高木教諭は黙っていられず,涼子の頬を平手で打っていた。涼子は作戦が功を奏したのを確信し,体罰を盾に学校側に校内裁判の開廷を認めさせる。自分は弁護人役,話し合いに積極的に参加してくれるのは,佐々木吾郎と萩野一美で涼子のアシスタントをやるという。高坂幸夫や倉田まり子,大出俊次と付き合っていた不良女子の勝木恵子は陪審員に収まった。判事は副委員長の井上康夫と決まった時に,被告である大出俊次が親爺から藤野が弁護人ではダメだと殴られた姿で現れる。柏木卓也の小学校からの友人が他校生である神原和彦を皆に紹介し,神原も弁護なら引き受けると云う。言い出しっぺの涼子は検事になるしかなく,弁護側のアシスタントに名乗り出たのはユーレイ的扱いを受けていた野田健一だった。この裁判には50代の北尾教諭がサポートしてくれる。涼子の父は,大出家の火事については触れるなと忠告し,やがて大出勝が母の反対を押し切って放火させ,売り払って新事業の資金にしようとしていることを突き止める。関係者はマスコミでなく中学生が真相を突き止めるために裁判を実施することに概ね好意を示しており,元校長と元担任も調査事務所に依頼して,隣家の女性が郵便物を抜き取っている事実を把握し,裁判に証人として立つ気持ちも伝えた。柏木家の長男は12月24日の通話記録を取り寄せ,弁護側・検察側も調査を進め,近所の病院・赤坂・新宿・秋葉原の公衆電話から掛かっていることを突き止めた。大出俊次も当日のアリバイを証明しようとするが母はディナーショーに出掛け,父は来客があるので家にいるように命令されたという。大出母に尋ねるとディナーショーは翌日で,麻雀をやる来客と夫を接待していたのは午前2時までだったと証言する。大出俊次は母のことに関わることを極端に嫌っているが,父親が母親にも暴力を振るっているからだと思われる。怪文書を出した三宅樹里はHBSにも裁判が始まったことを報せるべくワープロで新たな文書を作っているのを母親に見つかり,慌てた母親は茂木に匿名で電話し,思わず娘の名を告げてしまった。樹里は告発状を書いたのは浅井松子で,夜中に由起が珍しくて外出した松子が柏木が大出らに引き回されて屋上に連れてこられ,落とされたのを目撃したと伝えられたのを検事側に伝え,証人になることも引き受けた。弁護側が柏木のことを調べていく内,神原の様子が尋常でなくなるのを野田健一は見るようになり,自分も親殺しをしたかも知れない事実を打ち明けられないでいる。神原は酒乱の父が母を殴り殺し,自分は首を吊って自殺した後,和彦は和裁職人の夫婦の養子になったのだった。涼子は死んだ松子の目撃談と隣の中学生に大出たちが行った強盗事件を大出の暴力性の証明として,11月の喧嘩を動機として裁判に臨む積もりだが,自分が勝つことは勿論,目指していない。大出勝が警察の数度の取り調べの後,逮捕される〜
 この本は2006年から2009年に書かれたもので,第T部から一月遅れで刊行。物語の中盤に差し掛かって漸く冒頭の雪の中で公衆電話を掛ける少年の話が出てくる。しっかり構成を建てているんだなあ。それにしても「ソロモン」って何の謎だ?

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13/02/17
『ソロモンの偽証第T部偽証』:宮部みゆき(みやべ):2012年8月25日:\1800:新潮社:県立M高校図書館
★★★
 分厚い本が3冊でなかなか手が出せないのだが,4日掛かった,ということは借り手が返すのは遅れて
〜藤野涼子は城東中の2年A組,父親は警視庁の捜査一課の刑事だ。しっかり者の剣道少女でクラス委員もやっている。クラスメイトの野田健一は目立たないように行動しているが,鉄道会社で夜間勤務もある父と精神病の母と3人暮らし,親しい友達としては向坂行夫しかいない。行夫から妹にクリスマスプレゼントとしてスケッチブックを買うために夕方にショッピングモールに行き,帰りに登校拒否している柏木卓也を見かけるが,黙って出て母が不安になったため,父に叱られ,終業式の行われる翌朝は家に居たくてなくて雪が積もっている中,早く着いたが,正門に嫌いな楠山がいることに気が付いて,通用門をよじ登って滑り,尻餅を着いた側に雪から突き出た腕を見つけた。夢中で掘ると柏木だ。涼子はパトカーが来たことに不安を感じ,偶々家にいた父親も様子を見に行く。全校集会は中止になり,放送で生徒が死んで発見されたことが,校長の津崎から告げられ,森内教諭に代わって教室に現れた高木主任が2年A組の柏木が死んだが,落ち着くように伝える。柏木は11月に不良の大出俊二,取り巻きの井口充・橋田祐太郎と理科室で喧嘩してから学校に来なくなった。鍵の掛かっているはずの屋上から落ちたこと,不審な点がないことから,自殺と警察も判断し,年内に葬式も行われたが,大出達は隣の中学校の生徒をカツアゲし,強盗事件に発展しそうな勢いだったが,大出の顧問弁護士が現れて示談に終わった。3学期始業式前日,大出達にニキビで苛められていた三宅樹理は大出に注目が行くよう,定規で描いた字で,目撃したことを書いて,優等生で嫌いな藤野と校長には学校宛で,嫌いな森内には江戸川区のマンションに送ったが,地元は拙いと,子分にしている浅井松子を誘い,東京駅から投函した。自宅で娘宛の速達を開いた藤野剛は,それを持って校長に会いに行くと,嘘ではあるが無視すべきでないと提案し,地元の刑事も交えて教育相談を行い,差出人に分からせてやる必要があると処置が決まった。城東署の佐々木礼子は養護の高木と面談を重ね,浅井と三宅だと気が付いたが,やるのはここまで。野田家は,母の具合が悪くなり,父は北軽井沢でペンションをやる気らしいが,健一には名案とは思えない。計画を止めさせ,解放される方法は,心中と見せ掛けるしかないと考えて,ようやく実行に移そうとするが,様子のおかしいことに気が付いた行夫が涼子と藤野を誘って駆けつけ,止めることができた。森内に速達で送られた告発状は,隣室に住む夫に捨てられた30代の垣内美奈絵がポストから抜き出し,MBSのニュース番組に転送されていた。これを見つけた契約社員の茂木は取材を開始し,遂に放送されると,間違ったことに手を貸してしまった浅井は車に撥ねられ死亡する。三宅は言葉が出て来なくなり,学校には出て行けない。3人組の一人,橋田はグループから抜け,バスケ部の練習にも出るようになったが,井口が珍しく出校すると,直ぐに喧嘩になり,弾みで井口は3階から転落する。親分の大出の自宅が放火され,物置で呆けかけた祖母が焼死する。涼子は周囲を嗅ぎ廻る茂木と会話を交わす内に,卒業記念作品として事実を解明する決意を固める〜
 次の借り手に回っていくのは遅くなる。何故,バブル末期の話なのか。子どもの質は既に変わっているだろうに。あっ今の子どもが読んでも昔の子はこういう風に考えてこういう風に動いていたのかと感心するのかも知れない。でも,この本の厚さはなかなか手が出せない。学校が法廷になるってことなんだけど,うーん,設定として無理はないかなぁ。この本は2002年から2006年に書かれたもので,まあこれだけの文量だから構想を練るだけで大変だけど,読み手も大変だ

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13/02/14
『大富豪アニキの教え』:兄貴(丸尾孝俊)(あにき(まるお たかとし):2012年6月21日:\1600:ダイヤモンド社:東部台文化会館
★★★
 ヤバイデ,オレ 人生を変えるとんでもない秘密をバラしてしもうた
〜(1)一番大切なのは「相手を自分ごとのように大切にする心」(2)相手のために,お金を使い続ける(3)自分の「童心」を取り戻せ(4)自分から会いにいく(5)最強の問題解決は,自分から会いにいくこと(6)相手の自分の家に泊まらせる(7)最初から「恥」をさらして,相手の信用を得る(8)常に「失敗」と共にあることで成長する(9)仕事で生き残る人の条件は,義理と人情と職人技(10)リミッターを外して,本気にある(11)仕事に思い入れている時間を,長くする(12)儲かる仕事が優先。「天職」は1つの仕事を続ける中で見つかるもの(13)「ご縁をつなぐこと(紹介)」に目を向けると,人生が変わる(14)「五分と五分の実力を保つライバル」を持ち続ける(15)独立する前に,独立後のお客さんを確保する(16)人が「一丸」となっている会社を選べ(17)「お金」は稼げるだけ稼ぐ(18)1日14時間以上働きまくる(19)100万円貯まるごとに「金(きん)」に換えてお金を増やせ(20)「人とのつながりが育まれない投資」はしない(21)生きるもtくてきは,少しよくして次の世代に伝えるため(22)親に生きるエネルギーを与えることが親孝行(23)子育てで,もっともいけないのは「過保護」(24)親がやっていることを,子どもがやるようになる(25)相手の面倒を見れば,必ず返ってくる〜
 自己啓発セミナーに行くよりは,この本を読んだ方がマシ。鈴木一郎が出会った5歳年上の3軒の居酒屋をやっている二郎さんが,一カ所だけ次郎さんになっているね。一月で5刷まで行っているけど版を重ねるほどじゃないね。「また,再び,」というのも直すほどじゃないか。「たいていは,親より少し出来がいいように産んでくれてるわけやしな」ってのは同感

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13/02/14
『それでも地球は回ってる』:三谷幸喜(みたに こうき):2012年9月30日:\1100:朝日新聞出版:東部台文化会館
★★★
 三谷幸喜のありふれた生活10
〜2010年4月30日から2011年5月26日まで。仕事としては連続人形活劇「新・三銃士」,夏休みドラマスペシャル「サザエさん2」,「三谷幸喜のコトバのソムリエ」,舞台「ろくでなし啄木」,「国民の映画」,「ベッジ・パードン」があるが,「すてきな金縛り」の宣伝も。演出家の福田陽一郎,作家の井上ひさし,俳優佐藤慶が死に,この連載が十年を越え,仔猫のペーパーが来た。一人旅でロンドンに行き,ホテルでの朝食の卵は沸騰したお湯に7分間がいいのだが,注文通りにはなかなか行かない。東日本大震災に見舞われ,散歩中に頭を切って初めて救急車に乗る。そして小林聡美と離婚〜
 離婚の話は最初の方に出てくるかと思ったが,最後だった。年末の話だと記憶していたが春だったんだ。対談は和田誠と大竹しのぶ

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13/02/13
『一生一途に』:竹浪正造(たけなみ まさぞう):2012年8月15日:\1300:廣済堂出版:東部台文化会館
★★★
 2冊目
〜正造じいちゃん(94歳)の戦争体験記と57年間のまんが絵日記〜
 たいしたものですが,もうマスコミは取り上げないのだろうか

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13/02/12
『へこたれない人』:佐藤雅美(さとう まさよし):2013年1月17日:\1700:講談社:東部台文化会館
★★★★★
 物書同心居眠り紋蔵シリーズの?
〜稲が嫁いだ蜂屋あらため剣持鉄三郎が腹痛で役目を休んでいると聞いた紋蔵は,小日向近くに見舞うが,帰りに知り合いの寺男から倅が行方不明だと聞かされ,助言を求められる。帰宅してみると,鉄三郎が亡くなり,文吉を連れて来るように蜂屋からの伝言が残されていた。駕籠で駆けつけると,稲とよちよちの娘・千鶴の生活を守るため,文吉を養子とし,ゆくゆくは文吉が千鶴と結婚して剣持家を継ぐように求められる。文吉はちよと約束を交わしており,2歳の赤ん坊を将来の嫁にするのは心配だが,養父の紋蔵の勧めは断れない。南町奉行所で紋蔵と同僚の山本庄蔵は馬廻り同心だが,本業より金貸しや婿嫁取りの仲介に忙しい。小さな石碑を解読した三河の寺が幕府と尾張から貰う10両を元手に金貸しをするのを浅草の荒れたお堂で行うのを手伝うため,葵の紋の入った提灯を高張りにしたことが問題とされた。更に卒の身分でお供を連れているのは前例がないとされるが,商家でも女も供を連れていて,士分が供を連れてはならないのは理不尽だと庄蔵が云えば,その通りかも知れない。不届きであり罰さざるをえないが,紋蔵が前例を調べ処払いは重すぎるので,扶持召放が相当だと上に揚げると裁許が下った。庄蔵はへこたれず,供を連れて副業を本業として張り切り,美女ちよの縁談をまとめようと動き回る。持ち込んだのは40万両分の土地を持つ人形屋の倅だったが,ちよは喧嘩の弱い男はだめだと,自分を振った文吉と喧嘩で勝ったら話を進めると言い出す。久太郎と文吉は木刀で立ち合うが,両者とも肩の骨を折り引き分けに終わった。久太郎の見届けは岩吉,文吉の見届けは旗本の内藤夢之助だった。夢之助は元は大名家にいて親戚の旗本に養子に入ったが,愛嬌がある短躯で醜男,隣家の娘を嫁に貰ったが,風采が上がらないと実家に戻ったが,夢之助が新たな嫁を貰ったことが気に入らず,大雨が降れば水が溢れる池を作って嫌がらせをし,内藤家も糞がついた褌を干して匂いが漂う対抗策を巡らしている。遊びに出向いた文吉は褌を掲げさせた人物の品が悪いと云い,夢之助も止めると隣の池も埋め戻された。町場暮らしがしたい夢之助は紋蔵に長屋を借りられないかと相談し,それは無理だと断って,あくどい早稲田の名主が内藤新宿にも曖昧宿を持っていることで,処払いにする計画を思いつく。床屋の株を買いたいが金の不足する職人に金主を紹介する舞台として奉行所を選んだ庄蔵だったが,借りた金を女房に預けて近所に鍋を食いに行き,フグの白子の毒に中って亡くなり,女房は金を持って昔の男の処に走ってしまった。金主は庄蔵が請け人であるから補償しろと云うが書き付けはなく,舞台が奉行所内であったことで,次には奉行所を訴えると言い出した。処置に困った奉行所は庄蔵に責任を取らせようとするが,大名貸しの借り換えを請け負った奉行所役人は多く,不正を暴かれると困ったことになる。幸いにも逃げ出した男の処で髪結いの女房は見つかり,残った金を返済にあて,何事も起こらなかった。夢之助は兄と父が死んで越後村山5万7千石の藩主となったが,見映えの良い甥が相応しいと考える国家老らの嫌がらせに会い,相談された紋蔵は文吉を屋敷に送って楽しげに講学と武芸の稽古に励ませる。次第に夢之助の人柄に惹かれた若い侍から信望を集め,国家老も手が出せなくなってきた。通町で小間物屋を継いだ兄が,寄席の席亭に収まり,弟には旨い商売ではない小間物屋を担わせていたが,弟は独自の工夫で紙入れを売り出し評判を集めていた。兄は30両余りで分家させ,息子に跡を継がせたく,奉行所に訴えると,結論は兄の主張通りで,世間の評判は悪い。奉行所に迷惑を掛けたと考えている庄蔵は,弟との許にいた職人達を口説き落とすことに成功した。稲には蜂屋が新たな縁談を持ってきて,渋る稲も首を縦に振らざる得ず,文吉は律儀にも将来の嫁に挨拶を繰り返する〜
 音羽の岡場所が取り締まられる前に同心や岡っ引きが手を回していたことや玉子問屋の後添いと義理の息子の話,奥絵師・狩野が乳母の倅を救おうとした話は,巧く盛り込むことができなかった。流石,佐藤さんって気がするけど,シリーズを読み継いでいないで,いきなりこの本を読み出した人は訳が分からないだろうなあ。ちゃんとした説明を,話の流れを切らずに入れているのも流石だよね。こうした複雑な絡みを書けるだけでも凄い

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13/02/12
『橋下徹vs石原慎太郎 二人は国を救えるか? 名宰相待望論52の魅力』:松本幸夫(まつもと ゆきお):2012年11月1日:\1300:あ・うん:東部台文化会館
 肩書きはスピーチドクター?
〜橋本徹と石原慎太郎の話し方を分析して本を出版してみたらという話に乗って書いた〜
 書かなければ良いものを読んじゃった

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13/02/11
『神様のみなしご』:川島誠(かわしま まこと):2012年4月8日:\1500:角川春樹事務所:東部台文化会館
★★★
 ある大物政治家の別荘だった,キリスト教の児童養護施設・愛生園
〜牧浦郷治は両親に虐待を受けて禄に食事を取らせて貰えず押入で寝ていた6年生だが身体は小さく3年生にしか見えない。からかってくる同級生に給食のおかずを少ししかよそって貰えず2度目のお代わりのシチューをそいつに頭からかけて取っ組み合いになり,相手の小指を噛み切らんばかりの粘りを見せた。宮本ABは祖父母から公衆便所と呼ばれている母と人殺しになったかも知れない父から生まれたが,中2で施設に来た。サッカーの地区別勝ち抜き戦で活躍し,優勝した。県庁所在地の川沿いにあるちょんの間で母が殺された前川裕貴は容貌が父親似らしく,全寮制のキリスト教中高一貫校に入れて貰えるのは美しい外見のせいらしいのは礼拝所の奧に若い神父がつれこむことからも分かるが,感情を表に出さない障碍がある。浅田陽一は生まれてこの方飯場暮らしだった。谷本理奈は町工場を営む両親が倒産を苦に自殺してやってきたが,妹は母方の祖母叔母と仲良くやっている。今にして思うと,父親は娘二人も道連れにしようとし,母が救ってくれたのだった。地域の人達との交流のために催される,お披露目会で劇をやることになったのは,理奈とBと黒木だ。王子と乞食を舞台をここに変えてやるつもりだが,Bは突然,久里浜帰りだと黒木の秘密をアドリブで入れ始めた。父親を殺そうとしたのは事実だが,久里浜の高等少年院じゃなくて医療少年院だけどねと黒木は笑っている。浅田が卒園し,外食系の鮨屋に勤め始め,先輩から教えられた園長の不正は元高校教諭を雇っていることにして年間500万円を受け取っていたことだった。出て行く子ども達に園長は戻ってくるなと云いつつ,在園者にはここは家だと云っている。ホームカミングデイの案内が来て,前田も前川も戻ってみる〜
 取っ組み合いの喧嘩より驚いて泣きだし先生が呼ばれてお終い・・という展開の方があり得る。孤児院の今を連作で描いたが,発表雑誌は雑多。作者は1956年,京大卒,1983年に短篇で作家デビュー。映画化された本もあるそうだが,知った本がなく,物書きとして喰っていけてるのか心配だ。副業というか本業というか,もう一つの仕事は持っているんだろう。余計なお世話でした

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13/02/11
『黒王妃』:佐藤賢一(さとう けんいち):2012年12月6日:\1900:講談社:茂原市立図書館
★★★★
 フランス王アンリ2世妃カトリーヌ=ドゥ=メディシス
〜メディチ家からフランス王フランソワ1世の次男に嫁いだカトリーヌは,料理を始めとする文化を持ち込んだが,地味な女として知られ寵姫ディアーヌ・ドゥ・ポワティエの陰に目立たない存在だった。ディアーヌはスペインに父の身代わりに人質となる7歳以来,母親の愛情に飢えていたのだが,ディアーヌだけは優しく額にキスをして送り出したのだ。北西と南東と西に戦いに駆けめぐり,大元帥の保身の為に煮え湯を飲まされ,王妹の輿入れのための馬上槍試合で試合に勝ったにも拘わらず相手の折れた槍が面貌内に入り,右眼を失って命を落とした。そもそも一つ年上の兄フランソワが生きていれば王になることもなく,冷遇の故に無口になった夫だった。フランス王家で喪服は白と決まっていたが,カトリーヌが黒を使ったのは王家こそが我が家であると自覚できたからだった。長男フランソワ2世の年上の嫁マリー・スチュアールはスコットランドから我が家を奪いに来た女に見える。中耳の膿が脳に回ってマリーは必死に開頭手術を求めるが,我が子に余分な苦しみを与えないことが母の愛だと断念した。嫁はそうそう郷に帰す。次男のシャルルを王にして実質摂政と地位の占めるが,新教徒も旧教徒も王家の権限を奪いに来る。シャルル9世を数年に及ぶ行幸を続け,体格に優れた王となったが,新教徒との戦いに王家を担ぎ出そうとする勢力にはうんざりだ。精力は外に及ぼすべきだが,力を注ぐべきは長女の嫁ぎ先であるスペイン・フェリペ2世ではなく,反乱を起こしているゴイセンのネーデルラントでもなく,半島であるべきなのだ。子の中でしっかりしているのはスペインに嫁いだエリザベトだが,すっかりスペイン人になって死んでしまった。一番可愛いのはアンジュー公アンリで,シャルルを抑えて戦功を挙げさせることができたが,男色に走っている。次女マルグリットは兄たちと関係を持ち,新教徒のキーズ公アンリとも関係を持っているとなれば気が気でない。シャルルは新教徒のコリニィ提督を父の様に慕ってネーデルラントに誘い出そうとしている。気を変えるためには,マルゴとナヴァル王アンリの婚礼で,コリニィの暗殺を仕掛け,母か父代わりかを選ばせ,狂喜に走らせるしかなかった〜
 イタリア女にとって最も大切なのは家族。店屋の娘と蔑まされたカトリーヌ=ドゥ=メディシスにとっては,夫の寵姫が威張り散らしている一家を夫の死に際して自分のモノとすることだけが大事だった。世界史の中で出てくるサン=バルテルミの虐殺を詳細な検証により,旧説を覆らせる大胆な試みだ。でも・・・王母の回想があちこちに飛んでしまって,しかも登場人物が多くて,関連が複雑だから,ちょっと視点が元に戻せないなぁ

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13/02/07
『会津春秋』:清水義範(しみず よしのり):2012年11月25日:\720:集英社:東部台文化会館
★★
 2009年に書き始めたから,大河ドラマに乗っかったんではないだろうけど
〜秋月新之介が象山塾に通うのは会津藩主・松平容保に西洋兵法を伝えるためだが,詳証術が苦手で明確に劣等生だ。津軽藩が買う大砲の試し打ちをするというので,上総姉崎に来てみたが,同じように手持ちぶさたにしている男に真ん中で堂々としていろとアドバイスしたが,火薬を増量して大砲が破裂し,頭と足に怪我を負わせてしまった。男は薩摩の橋口八郎太という同じ年で,見舞いに行って親しくなった。劣等生同士で話が弾み,小伝馬町に住む塾を手伝っている旗本・馬場の妹に両者とも心を寄せているのが分かった。大地震が起き,馬場家の下敷きになって娘は死に,二人の青春時代が終わった。次に会ったのは新之介が京都守護代となった容保に従ってからで,八郎太は西郷に従っていたが,島流しとなって,京の薩摩屋敷に勤めていたのだ。宮城占拠を狙った長州を薩摩の援軍で撃退したが,孝明天皇が崩御し,西郷が京に出てきて,薩長同盟が成立し,敵同士となった。江戸に戻った新之介を大阪商人に変装して訪れた八郎太は,会津が長州に攻められるよりも薩州に攻められた方がマシだという。鶴ヶ城に籠城した会津藩士は一月持ちこたえ,長州が来る直前に降伏した。廃藩置県で青森に移った後,妻の勧めで東京に出た秋月は,大尉となった八郎太に出会って,巡査の職を得た。征韓論で敗れた西郷が鹿児島に移ったのに同行して,八郎太も薩摩に戻り,薩摩の挙兵にも加わった。一方の新之介も警察隊として熊本に赴き,田原坂で再会を果たしたが,八郎太は銃弾に倒れた〜
 会津の長州に対する憎しみはまだ残っていることを知って,敵同士にならざるを得なかった若者二人を描く気になったらしい。駄作だね

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13/02/06
『編集ガール』:五十嵐貴久(いがらし たかひさ):2012年10月20日:\1600:詳伝社:東部台文化会館
★★★★
 ハッピーエンド
〜原宿に住み有楽町の永美社という出版社で編集経理の仕事をしている私は高沢久美子は,長沼社長が全社員に課した企画書が採用され,通販とウェブとマガジンの合体を目指す新雑誌編集長になったが,27歳で編集の仕事の経験はない。部員は31歳で,内緒で付き合っている加藤学,書籍編集局の副編集長と,コンピュータシステム管理の同じ年の河本次郎,新入社員の販売部・丸山早織,広告部で定年退職間近な白沢慶文だ。コンセプトと云われてもアイデアのない私は,学が書いた台割と企画内容を自分が作った振りをして説明するしかない。取り敢えず30日の着回しで,社長がタイアップ先として選んだ六本木のドクターDJという通販会社の商品でコーディネートをするが,学が呼んできたスタイリストとカメラマン,ヘアメイクアップ,デザイナは違う方向を向いているようだし,男どもが推すモデルも可愛らしさが全面に出て,服を買わせようと云う狙いとはずれている。思い切って全てを振り出しに戻し,多くの編集部に顔を出してアドバイスを受けると,学は自分の方を見なくなった。伝手を辿って撮影に踏み切り,チェックにチェックを重ねると,社長は売り出し中の売れっ子モデルを表紙と巻頭インタビューに使えと命じてきた。突破口が見つからないと焦っていると,広告部にいた白石がマネージャーをよく知っているという。表紙も決まり,最後の追い込みの最中,気を失って次に気が付くと,病院の医師から一人だけの身体ではないから十分に気を付けるようにと命じられる〜
 ま,プライベートはどうなることやらと思ったがハッピーで結構

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13/02/05
『「経済効果」ってなんだろう?』:宮本勝浩(みやもと かつひろ):2012年8月20日:\1600:中央経済社:東部台文化会館
★★★★
 阪神,吉本,東京スカイツリーからスポーツ,イベントまで
〜直接的な経済効果に一次波及効果と二次波及効果を加えたものをマスコミで使われている「経済効果」だが,経済学的専門用語では「経済波及効果」という。例えば,観光地が世界遺産に登録された場合,交通費を使い・観光料金を払い・土産物を買い・飲食し・宿泊するのが直接効果。飲食をすると米・肉・魚・アルコールを販売している店屋の売り上げが増す。これが一次波及効果。社員旅行が実施されたり,従業員同士の飲食が増加するように,直接・一次の売上げ増で経営陣や従業員がその一部を消費に向けるのが二次波及効果。国や自治体が公共投資をする場合,非常に大きな期待に沿った計算結果を導き出すから,第三者的な機関に計算を依頼すべきである。吉本興業はシュンペーターのイノベーション理論で考えると,@新しい財貨の生産A新しい生産方法の導入B新しい販売先の開拓C新しい仕入れ先の獲得D新しい組織の実現により,年間の直接効果が550億円前後,一次が450億円程度,全国産業関連表を用いて二次波及効果は300億円程度となる。2003年星野タイガース優勝の直接は917億,一次1209億,二次272億,合計1481億と計算した。2005年岡田タイガース優勝は643億だ。AKB48の直接推定額は240〜300億,合計は564億,雇用創出は6556人,粗付加価値創出は494億と空前絶後だ。和歌山電鐵はたま駅長で10億9400万円だが,宣伝広告効果は2億3250万円に上る。京都北部の福知山市動物公園のウリ坊とみわちゃんは5.69億。ダルビッシュのテキサス入りはアメリカで1323万ドル,年俸が1000万ドル。日本での効果は移籍金40億から考えて82億円となった。斎藤投手の北海道地域へは52億ほど。石川遼プロ入り2009年はは341億,雇用創出1761人と驚くべき数字。2009年の食博覧会・大阪の予測値は大阪府内で128億だったが検証値は111億円。一人あたりの飲食費と土産物購入費が減った結果だ。2011年の大阪マラソンは予測124億,検証値は133億。東京スカイツリーは総事業費1320億で,観光客の経済効果は835億,ツリー及び周辺建築が1861億,周辺施設の観光・買い物客の効果が1485億。奈良大仏の建造費用は総額4567億と出した〜
 ここ十年間はニアピン賞続出だから,関西大学大学院会計研究科へどうぞ

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13/02/04
『ヴォイス』:ル=グウィン:谷垣暁美(たにがき あけみ)訳:2011年3月20日:\950:河出書房新社:県立M高校図書館
★★★★
 西のはての年代記U
〜南のサル山を望む港町アンサルは東の砂漠から押し寄せたアスダーに占領され,多くの住民が殺され,書かれたものは悪だと多数あった書物を破棄され,17年が経過している。アンサルの実質的中心地のガルヴァマンドの主・道の長は悪魔の穴を教えなかったために拷問にかけられて両足を折られ不自由な生活で,館に住む人間も少ない。メマーはカルヴァ家の女性がオルド兵に乱暴された結果生まれた女の子だが,母から秘密の扉を開けて書庫に入る秘密を伝えられており,この書庫の存在を通じて道の長と館の秘密を共有し,文字の読み書きも習っている。オルドのガンドに招待され高名な詩人であるオレックがアンサルを訪れ,妻のグライが連れ歩くハーフ・ライオンを通じて,二人と一匹を館に宿泊させることになった。オレックは諸国を歩き,埋もれた詩や物語を集めている。文化が華開いたアンサルにも埋もれた書があるはずだとやってきたと打ち明けられるが,秘密は明かすことができない。自由の詩を著したオレックならば,オルドに支配されたアンサル市民を立ち上がらせることができると抵抗勢力があるが,元議事堂の前に設置された大テントに火を放ったが首謀者は殺害される。市民とオルド兵の間に緊張が走り,ガンドの息子はガンドを殺したとガルヴァマンドに兵を進めてきたが,ガンドの実質的妻であるアルサン女性のお付きから,ガンドと妻は大怪我をして息子に幽閉されていることが先に伝えられていた。一度,秘密の書庫に下がった道の長が表玄関に戻ってくると,枯れていたお告げの泉が復活し,お告げの書が人々に示され,幽閉されているガンドを開放するように人々は動く。解放されたガンドは兵に攻撃を禁止する命令を発し兵も従ったが,血気にはやる市民も存在する。解放されるために解放せよとお告げの書は伝えていたのかも知れないが,それは子ども向けの動物絵本だった。兵と市民の緊張が続く中,オルドからの小隊がアンサルに向かってくると聞いて,道の長はメマーを使者に立てて,ガンドと繋ぎをつけた。大王からの使者は,オルドに税を払えばオルドの被保護国にするという内容で,メマーは納得できないが,人々は大いに喜び,周辺からも使者が来て,交易が復活する模様だ。メマーは自分の読む力を超えたと判断した道の長は,読む力を更に身につけるため,オレック・グライと共に旅をすることを勧める〜
 こうやって,第三部に続くんだねぇ。なるほど,なるほど。訳者のあとがきは当にそのことを書いているが,やっぱり読者は本編よりもあとがきを先に読むことを承知して「あとがき」を書いている。「あとがき」で「本編を是非読んで欲しい」って云っているもの。まあ,それは良いとして,このシリーズでこのUが平和主義で貫かれていて良い。暗い状況の中で明るい前向きな姿勢が安心させるからだろう。このシリーズは読み終えたが,ル=グウィンのSFも機会があったら読んでみようと思う

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13/02/03
『ギフト』:ル=グウィン:谷垣暁美(たにがき あけみ)訳:2011年2月20日:\850:河出書房新社:県立M高校図書館
★★★
 西のはての年代記T
〜北の高地のブランターに伝わっている不思議な能力はギフトと云うが,低地の人々は魔法使いだと思っている。カスプロ家に父から息子に伝わるギフトは「もどし」だ。父カノックはこのギフトで低地から妻であるメルを得て,オノックが生まれたが,オノックにはギフトの兆しが見られない。父との訓練,母との読み書きの学習をしている内に,隣国を併呑したオッゲは「すりへらし」のギフトを振るった。親密な隣国「ナイフ」のギフトを持つターノックと「呼びかけ」のギフトを持つパーンの間にはオノックと同じ年のメルがいるが,「呼び掛け」のギフトをメルは動物たちとの繋がりを付けるために使いたく,母のように狩りに使いたくはない。父が蝮に襲われそうになるのを見て左手を挙げた途端に弾けたのを見てオノックは思いがけずギフトを振るったらしい。意志を持っても現れず,恐怖や怒りで発現するのか。メルから貰い受けた犬が乗馬を邪魔した時にも現れ,トネリコを見た後で見つめた蟻塚をもどそうとして,一帯を混沌に戻してしまい,荒ぶるギフトを持つと恐ろしいと考えたオノックは父と相談の上,眼の力を封じるために目隠しをして過ごす決断を行う。噂は噂を呼び近隣にも聞こえるようになったが,母が物語を字を連ねて書に残す作業では,自分の新たな物語を紡ぐ力,言葉を操って詩を著す力を知った。オッゲの孫娘との縁談が出てくるドラムマントへの訪問で,オノックは散々弄られ,母は恐れられ,オッゲによってすり減らされたらしい。赤ん坊を流してしまったメルは徐々に命をすり減らして1年1日後に痩せ細って死んでしまった。その姿は母の願いによって一目だけオノックは見ることができた。荒ぶるギフトでオッゲに対し仇を討ちたい気もするが,そもそも自分が父から一族のギフトを受け継いだか否かも定かではない。母が遺した本を読みたくて,母の寝室から持ち出した本を夜明けの淡い光の中で見ても何も発現せず,盲導犬としてグライから貰ったコーリーを見ても何も起こらなかった。グライとの会話から,荒ぶるギフトが出現した時には必ず父が後方に控えていたことを思い出し,オッゲがロッドマントに略奪に来るという噂に助太刀に出る時,オノックは目隠しを外した。父はオッゲの配下の放った大弓の矢に倒れたが,オッゲとその跡取りを戻していた。役立たずのギフトを持っていても何も起こらないと考えたオノックとグライは低地に移ることを決断した〜
 カリフォルニア在住だが本はイギリスから出いていて著者の名はフランス風。怪しさが漂うが,テイストは矢張りイングランド風。西の果ての北方だからスコットランド的かというとそうではなく,ドルイドや魔法使いが出て来るノルマンが来る前のケルト的雰囲気が漂う。要らない知識がある所為で素直に読めないが,ヤングアダルトには受け入れやすいのだろうか? 二冊目のヴォイスも読んでみましょう

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13/02/01
『パワー<下>』:ル=グウィン:谷垣暁美(たにがき あけみ)訳:2011年4月20日:\850:河出書房新社:県立M高校図書館
★★★
 西のはての年代記Vの下巻
〜バナーの率いる森の心臓に攫われてきたイラードはメルと云う名の妹を連れていたが,バナーから逃れるためにイラードがカヴの部屋に隠れていたことで命を狙われると恐れる周囲が森を出ることを勧めた。行く場所は故郷である水郷地帯しかない。14・5年前に攫われた時の姉と自分の名前だけだったが,すぐに伯母が見つかり,伯父の許へ送られた。水郷では男と女が別れて村を作り,男は狩りや漁で手に入れた水鳥や魚を持って女の許に行き,料理をして貰うのだ。大人の儀式と釣りの腕で認められたガヴは暫く後,自分の力の話を始めるが,伯母が同じ力を持っている事を知り,他の大人に葦の島に連れて行かれる。カヴは偉大なる目になれるという目使いのドロドは麻薬効果のある茸を使って思い出しをさせる。死に掛けているところに伯母が現れ,小さな子を連れて追っ手に迫られつつ二つの川を越えていく姿が見えたという言葉で,自由を求めて旅立つ。預けた金の入った巾着を取り戻そうとクーガの洞窟を訪ねると,クーガは小川の中で半ば白骨化した姿をしていたが,居間となる洞窟には彼の宝の塩箱が置かれ,きちんと巾着も納められていた。クーガを埋葬し,バナーの森を訪ねると,多くの死者を出した戦乱の果てにエトラとカシカは同盟を結び,不足した奴隷を補うために,森の心臓を焼き払い,イラードも連れ去られていた。メルを救い出したカヴィアは大学のある北東のメサンを目指すが,行く先々で吟遊詩人とも云う逃亡奴隷を執拗に追い掛けるエトラの者の噂で持ちきりだ。カヴィアは追っ手がホビーであることを直感し,村や町を避けて二つ目の川を目指す。渡し場近くでホビーを現れるのを見て,慎重に二つ目の川を越える。後ろを向こう岸に着いて振り返ると乗り手を失った馬が溺れかけている姿を見る。メサンに着いた二人は,自由の詩を書いたオレックを訪問し,自由と家と仕事と大学での学生という身分を得る〜
 あれっ,これで終わり?

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13/02/01
『パワー<上>』:ル=グウィン:谷垣暁美(たにがき あけみ)訳:2011年4月20日:\850:河出書房新社:県立M高校図書館
★★★
 西のはての年代記Vの上巻
〜ガヴは西のはての都市国家群のひとつであるエトラのアルカ家の少年奴隷だが,幸せなことに姉がいて面倒を見てくれエヴェラ先生から目を掛けられ次の教師としての教育を受けている。そして,これから起こることを思い出す特別な力がある。思い出したのは,緑の幟を立てた兵士がエトラの町を荒らして回っている様子だった。2歳年長の主人の次男トームと同じ日に生まれた奴隷のホビーは戦争ごっこで苛めに来る。ホビーの目の上を木の剣で傷つけた後は奴隷達によって井戸に逆さ吊りにされ殺され掛けた。トームは奴隷に武器を持たせたことと幼い奴隷の男の子を叩いて殺したことにより夏の農村でのバカンスに同行を許されず,ホビーも男奴隷のバラックに移って力仕事を担うことになる。長男のヤヴェンは優しい陽気な人柄で20歳の士官となると慈愛に溢れる女主人により姉のサロを与えられ,姉も幸せだ。南の都市と抗争が起き,北のカシカーが城壁に迫り,市には独裁官が置かれ,食糧は配給になり,悲壮感が増していく中で,奴隷はバラックに閉じこめられるか,公益の為に使役される。ガヴは城壁防備のための石班に配属され,班長になっていたホビーに執拗に苛められる。姉はヤヴンの子を産んだが月足らずと栄養不足で1時間後には亡くなり,ガヴは知識を頼りにされて書物を父祖廟地下に移動させる任を与えられる。他の館の者から自由に関する詩を教えられ感銘を受ける。南に展開していた連隊が漸く引き上げて市内からの攻撃でカシカー軍を撃退し,姉とヤヴンの幸福な時間が訪れたのも束の間,ヤヴェンが軍務で町を後にした隙をついて,トームとホビーは姉ともう一人の乙女を他の館の別荘に無理矢理連れて行き,姉はプールで溺れて殺された。姉の埋葬後,墓地に留まったカヴは茫然自失となって町に帰らず,荒れ野に赴いた。野人クーガと一夏を過ごし,冬はブリギン一統と,春には森の心臓・バーナの所へ移動し,知識を愛されてカヴは新しい国造りの相談相手として遇される〜
 ル=グウィンと云えばゲド戦記。暗いお話だったが,彼がカリフォルニア生まれ,私の親と同世代だとは知らなかった。西のはての年代記は「ギフト」「ヴォイス」とこの「パワー」。ギリシアやローマの奴隷制がヒントだな。それよりも細かい描写なのは,どうしたら奴隷制を維持できるか,安定させられるかを作者が考えた末だろう。例えば,生まれた子はすぐに交換に出され,母と子の絆を断つとか。絹の囲いに門番を立てるとか。さあ,下巻に取りかかろう

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13/02/
 
★★
 
 
 

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最終更新日 : 2013.02.26

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