2013/02/11
日本人とは思えない〜

「黒王妃」
〜佐藤賢一〜

『黒王妃』:佐藤賢一(さとう けんいち):2012年12月6日:\1900:講談社:茂原市立図書館
 フランス王アンリ2世妃カトリーヌ=ドゥ=メディシス
〜メディチ家からフランス王フランソワ1世の次男に嫁いだカトリーヌは,料理を始めとする文化を持ち込んだが,地味な女として知られ寵姫ディアーヌ・ドゥ・ポワティエの陰に目立たない存在だった。ディアーヌはスペインに父の身代わりに人質となる7歳以来,母親の愛情に飢えていたのだが,ディアーヌだけは優しく額にキスをして送り出したのだ。北西と南東と西に戦いに駆けめぐり,大元帥の保身の為に煮え湯を飲まされ,王妹の輿入れのための馬上槍試合で試合に勝ったにも拘わらず相手の折れた槍が面貌内に入り,右眼を失って命を落とした。そもそも一つ年上の兄フランソワが生きていれば王になることもなく,冷遇の故に無口になった夫だった。フランス王家で喪服は白と決まっていたが,カトリーヌが黒を使ったのは王家こそが我が家であると自覚できたからだった。長男フランソワ2世の年上の嫁マリー・スチュアールはスコットランドから我が家を奪いに来た女に見える。中耳の膿が脳に回ってマリーは必死に開頭手術を求めるが,我が子に余分な苦しみを与えないことが母の愛だと断念した。嫁はそうそう郷に帰す。次男のシャルルを王にして実質摂政と地位の占めるが,新教徒も旧教徒も王家の権限を奪いに来る。シャルル9世を数年に及ぶ行幸を続け,体格に優れた王となったが,新教徒との戦いに王家を担ぎ出そうとする勢力にはうんざりだ。精力は外に及ぼすべきだが,力を注ぐべきは長女の嫁ぎ先であるスペイン・フェリペ2世ではなく,反乱を起こしているゴイセンのネーデルラントでもなく,半島であるべきなのだ。子の中でしっかりしているのはスペインに嫁いだエリザベトだが,すっかりスペイン人になって死んでしまった。一番可愛いのはアンジュー公アンリで,シャルルを抑えて戦功を挙げさせることができたが,男色に走っている。次女マルグリットは兄たちと関係を持ち,新教徒のキーズ公アンリとも関係を持っているとなれば気が気でない。シャルルは新教徒のコリニィ提督を父の様に慕ってネーデルラントに誘い出そうとしている。気を変えるためには,マルゴとナヴァル王アンリの婚礼で,コリニィの暗殺を仕掛け,母か父代わりかを選ばせ,狂喜に走らせるしかなかった〜
 イタリア女にとって最も大切なのは家族。店屋の娘と蔑まされたカトリーヌ=ドゥ=メディシスにとっては,夫の寵姫が威張り散らしている一家を夫の死に際して自分のモノとすることだけが大事だった。世界史の中で出てくるサン=バルテルミの虐殺を詳細な検証により,旧説を覆らせる大胆な試みだ。でも・・・王母の回想があちこちに飛んでしまって,しかも登場人物が多くて,関連が複雑だから,ちょっと視点が元に戻せないなぁ

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最終更新日 : 2013.02.11

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