2012/05/29
良いと思うね〜

「蜩ノ記」
〜葉室麟〜

『蜩ノ記』:葉室麟(はむろ りん):2011年11月10日:\1600:詳伝社:県立M高校図書館
 これで直木賞
〜豊後羽根藩の奧右筆・檀野庄三郎は臨席の同輩に墨を飛ばして諍いになり,脇差しを抜いて迫る幼馴染みに咄嗟の居合いを振るって腱を断つ怪我を負わせ,向山村に幽閉されている戸田秋谷の監視に派遣された。幼馴染みの水上健吾の伯父は家老の中根,三浦家譜を命じた先代藩主は,江戸用人だった戸田が側室と密通し,藩士一人を斬り殺した罪を負わせ,十年後の切腹をも命じていたのだ。逃げ出すようであれば,一家を斬り殺せと庄三郎と指令を受けてやってきたが,妻と娘の薫,嫡男の郁太郎と穏やかに暮らし,あらゆる書類を集めて家譜の執筆に務め,村人の信頼も厚い。京から来た慶仙禅師とも親交があり,かつての郡奉行として藺草栽培を村々に根付かせた精勤振りも窺わせる立派な人物で,蜩ノ記という備忘録も見張りの庄三郎に隠すこともなく,夫婦仲も円満,側室と不義密通に及ぶいかがわしい人物ではなく,藺草を扱う商人と癒着している家老の方が怪しく見えてくる。江戸下屋敷で側室が襲撃され,どの派閥にも属さない戸田は襲撃者を撃退したが,味方はなく,上屋敷へ移動する際に一夜を商家で過ごしたことが罪に問われたのだった。秋谷の実家で側室が下女として働き,一つ屋根の下で生活した過去があることも疑惑の因とだが,先代の正室が死去して新たな正室を決める際,家老は茶人の娘を推し,藩主がそれを嫌ったことから,お気に入りの側室を亡き者にしようとする企みらしきものが見えてきた。秋谷に斬り殺された藩士一族は度々刺客を送ってくるが,何が狙いかは解らない。向山の百姓は不作となっても年貢を免除しない郡方に不満を抱き,一揆を計画しているらしい様子を掴み,秋谷と庄三郎は相談の行われている水車小屋に扉を開けずに説得を試みるが,鎖分銅での威嚇はあった。闇祭である夏の祭では,藺草を取り扱い,金を貸しては田畑を取り上げる商人が酒を振る舞って,村人と揉め事が起こり,その夜に番頭が鎖分銅で殺された姿が田の中に発見される。慶仙禅師は庄三郎を呼び出して,元側室・松吟院に引き合わせ,現藩主の母・美代の方の由来書を戸田に渡すように依頼する。二人で調べても,初代が家を継ぐ際に本家筋と分家筋が入れ替わり,本来の本家筋の子孫が茶頭となっていて娘を側室にあげたらしいと知られるだけであった。江戸に遊学していた水上が村に顔を見せ,蟠りなく接する姿に感じ入った庄三郎は,美代の方の出自を博多で調べるよう依頼したが,水上は結果は伯父である家老にも伝えると断りを入れ,向山の二人は同意する。秋に大雨が来ると踏んだ秋谷は村人に早めの稲刈りを指示するが,郡方は頑なに拒否し,秋谷は説得に乗り出す。しかし,その郡方は鎖分銅に絡め取られて殺された姿で発見された。更に,美代の出自が博多の商人であるとの結果は向山と家老に伝えられ,由緒書を取り戻したい家老は,郡方殺害の犯人を捕らえる名目で捕り方を送り込み,荒くれ者が拷問で郁太郎の友を責め殺してしまう。友の死の原因を家老であると決めつけた郁太郎は夜中に家を抜け出し,察知した庄三郎が道案内に立つ。面会を許された郁太郎は庄三郎の牽制を受けて家老を追い詰めるが,村人を磔にすると脅され,投降を決意する。家老はこれを人質に書き付けと交換しようとして甥を使いに立てるが,知らせを受けた秋谷は自らが家老宅に乗り込んで書き付けを渡し,二人の引き渡しを受ける。秋谷は写しを禅師に預け,寺の記録として残すように依頼していたのだった。家譜は書き換えられても,寺の記録に家老でも手を加えられない。村に戻った庄三郎と薫は祝言をあげ,郁太郎の元服も終え,三浦家譜も完成し,8月8日,寺で割腹した秋谷の仇を藩政の場でとるべく義兄弟は誓うのであった〜
 複雑で書いていても判りにくい。じっくり読みたいところだが,凛とした武士の姿に惹かれて一気に読んでしまう。著者は元地方記者で54歳で作家デビュー,豊後と云うところは武士の名産地だろうか?

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最終更新日 : 2012.05.30

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