2018/05/30
〜この装幀・このネーミングで良いのだろうか?〜

「キラキラ共和国」
〜小川糸〜

『キラキラ共和国』:小川糸(おがわ いと):2017年10月25日:\1400:幻冬舎:県立CSRD高校図書館
 結婚していきなり母となり、週末婚を終え、文具店で家族生活を始める代書屋の女性とQPちゃんとカフェ経営者
〜文通相手のQPちゃんのお父さん、ミツローと結婚し、姓も守景と変わった。とはいっても週末婚、ツバキ文具店の側の出物に手を入れ、一緒に暮らすつもりだ。ある日、派手な身なりの有名人・レディ・ババが訪ねてきて、小遣いをくれという。理由は母親だからというのだ…〜
 結婚のお知らせ「このはる わたしたちは かぞくに なりました ちいさな ふねにのり 3にんで うみへ こぎだします どうか あたたかいめで みまもって ください」/盲目の小6少年の母の日の手紙「おかあさんへ いつも、おいしいお弁当を作ってくれて どうもありがとう。 おかあさんが僕のおかあさんで、よかったです。 おかあさん、これからはたくさん山に登ってください。 あと、ひとつだけお願いがあります。僕は来年、中学生です。 ほっぺのチューは、卒業したいです。 多果比古より」/祖母がイタリア在住のペンパルへ「静子さんへ こちらは日に日に風が冷たくなり、そろそろ、お茶の花が咲く季節となりました。静子さんは、お茶の花をご覧になったことがありますか? 私は、お茶の花が大好きです。秋になると、白くて小さい、椿みたいな花が咲くんですよ。 おいしいお茶を作るためには、葉っぱが大事ですから、花は切ってしまった方がいいんですってね。でも、私はなかなかそれができません。かわいくて、つい甘やかしてしまうんです。イタリアにもお茶の木はありますか? もし見つけたら、ぜひ作ってみてください。発酵させる手間はかかりますが、紅茶だってできますよ。でも私は日本人なので、やっぱり緑茶党ですが。忘れないうちに,作り方をざっとメモしておきます。来春、機会があったらぜひ! 自家製の新茶の味は格別ですヨ。 ≪お茶の作り方≫一、一芯二葉をつむ 二、洗わずに、セイロで少量ずつ蒸す。(だいたい30秒から1分の間) 三、いい香りがしたら火を止め、笊に広げてウチワであおぐ 四、フライパンで空煎りする(弱火でじっくりと) 五、ある程度水分が飛んだら、まな板の上に移して両手でもむ(火傷に注意!) 六、四と五を交互に繰り返して、完全に水分を飛ばす 七、乾燥させて、できあがり カシ子」QPちゃんの母の日の手紙「ぽっぽちゃん あいしています」/事故死した放蕩夫の妻への詫び状「葉子、悪かった。ふがいない夫で、ごめんな。 こんな結果になって、本当に本当に申し訳ないと思っている。謝って許されることではないけど、今、とても後悔している。 夫らしいことも、父親らしいことも、何ひとつしてこなった。 その罰が当たったんだな。自分でも本当に情けないよ。お願いだ、今すぐとはいわないが、いつか、再婚して欲しい。そして、今度こそ、幸せな結婚生活を送ってほしい。俺とは正反対の、良き伴侶と出会えることを、お乗っている。そしえいつか、俺の悪口を、娘と笑顔で語ってほしい。俺のこと、いっぱいののしってくれ。 最後に、今までのこと本当にどうもありがとう。こんな自分を最後まで見捨てずにいてくれたことに、心から感謝している。苦労ばっかり書けて、本当に悪かった。」/Jクレオパトラの夫への三行半「今まで、本当にありがとうございました。三十年という歳月を、あなたと共に過ごしたことは、私の人生の誇りです。 あなたのおかげで、私は多くの幸福を味わいました。子ども達を育てたことは、大きな冒険であり、希望でした。あなたと出会わなければ経験できなきことばかり、本当に感謝します。 けれど、私はもう限界なのです。 これ以上、あなたのそばにいることはできません。 理由は、わかっていると思います。 私達は、もう十分、お互いのために尽くしました。 これ以上あなたに傷つけられたら、私は生きていけなくなります。 至らない妻であったこと、どうか許してください。 正直、三十年も一緒にいたので、あなたと離れて生きていけるのか、まだ自信がありません。 でも、そうしなくてはいけないのだと思います。自分のためにも、あなたのためにも。 あなたにとっては、寝耳に水の話かもしれませんが、私は、この選択肢について、長い間、冷静に考えてきました。今が、その時です。 私達、これからは別々の道を歩みましょう。そしていつか、お互いがおじいさんとおばあさんになって、それぞれの伴侶を得ていたら、その時はまた、笑顔で茶飲み話ができるかもしれません。 離婚届を同封します。 私の方はすでに署名も判も済んでおりますので、あなたの方を書いて提出してください。 よろしくお願いします。」/三行半を突きつけられた夫リチャード(半)ギアから妻への詫び状「酒は飲んでも、飲まれるな! わかっちゃいるのに、ついつい楽しくなって、度をこして飲んでしまうんだ。 でも、君が言うように、俺ももう還暦間近だ。暴れて、怪我でもしたり、もしくは誰かに怪我をさせたりしたら、それこそ君に迷惑をかけてしまう。 自分だけの体ではないことを、ついつい忘れて羽目を外してしまうんだな。 大バカものだといいくら言われようが、俺に弁解の余地は全くない。 いい年したジジイが、酒に飲まれて、愛する妻に暴言を吐いて傷つけるなんて、あってはならない話だ。この間のことは、本当に反省している。 もう二度とあんな真似はしないと、約束する。 今後酒は、ほどほどに、たしなむ程度にする。(飲まない、とは言い切れない自分が情けない限りだが…)君が再三言うように、俺はもう完全にジジイだ。若い頃とは違って、モーロクしている。あんなふうに酒を飲んだら、道端に倒れて頭を打って、悲惨な人生の終わり方をするかもしれない。 今回のことできみがどんなに傷ついたか、本当によくわかった。だから、離婚というのを考え直してほしい。お願いだ。お互い、冷静になろう。 あんなことで、今まで築き上げた三十年が無になってしまうのは、正直、耐えられない。 世間体とか、子ども達のことを考えてそう言っているんじゃない。 俺にもう一回だけ、チャンスを与えてほしいんだ。」/七夕の短冊「おとおおとか、いもとがほしい。もりかげはるかQP」「商売繁盛 守景蜜朗」「家族が健康で、平和で、毎日笑顔で過ごせますように。鳩子」/鳩子からミツローへ「ミツローさんへ この間は一方的にミツローさんを責める形になってしまい、ごめんなさい。 あの後、家を出てしまったことを、後悔しました。せっかく家族三人で過ごせるはずだった日曜日の朝を、台無しにしてしまいましたね。 QPちゃんも、朝起きて、みんなでむかごご飯の焼きおにぎりを食べるのを楽しみしていたのに、本当に悪いことをしてしまいました。あんな身勝手な行動を取った自分を、反省しています。でも、今回のことで気づいたことがあります。 やっぱり、私たち、一緒に暮らさなきゃダメです。ひとりぼっちがこんなに味気ないものだということを、思い知りました。 ひとりでいても、自分の体温はわかりません。でも、自分以外の他の誰かと肌をくっつければ、自分の手があったかいとか、足先が冷たくなっているとか、感じることができます。 ミツローさんとQPちゃんと家族になれたことが、私の人生を思わぬ方向に押し広げてくれました。私は今、魔法のじゅうたんに乗っている気分です。知らなかった世界を見せてくれて、本当にありがとう。こうなったら、どこまでも行って、まだ見ぬ世界を見てみようと思うのです。 よく考えると、こんなふうに落ち着いてミツローさんに手紙を書くのは、初めてですね。 プロのシェフが、家で料理をしないのと一緒で、私も日ごろ仕事で手紙を書くことが多いので、プライベートでは、逆に筆無精になってしまいました。ごめんなさいね。 でも、本当は私がもっとも手紙を書かなきゃ、いえ、書きたい相手はミツローさんなんだって、今、手紙を書きながら気づきました。 私、ミツローさんが大好きだよ。 そうそう、美雪さんのダイアリーに関しては、私がミツローさんから引き継ごうと思います。それで、どうですか? そうすれば、ミツローさんは手放せるし、私は手元に残すことができます。 簡単なことなのに、そこにたどり着くまで時間がかかってしまいました。 ミツローさんにはちょっと不思議にきこえるかもしれないけれど、私は、モリカゲ家は、四人家族なんじゃないかと思うのです。ミツローさんとQPちゃんと私と美雪さん、四人で暮らしているのです。 ミツローさんにとっとは、夢のハーレム状態! さっき、祖母の仏壇の脇に、美雪さんの仏壇を置く場所を作りました。 私もミツローさんもQPちゃんも、木の股からある日とつぜん生まれたわけではないもんね。 そのことを、高知に行ってから、ぼんやりと考えるようになりました。 いつか、こんなふうに、美雪さんにちゃんと手紙を書きたい。今はまだ書けないけど、いつか、きっと、と思ってます。 週末、会えるのを楽しみしています。でもその前に、引っ越しの荷物を運べそうだったら、いつでも持ってきてください。 早く、かわいいムスメにも会いたいなあ。 はとこ」/生後8日乳幼児突然死症候群で死んだ赤ん坊の喪中葉書「喪中につき、年末年始のご挨拶を失礼させていただきます 十月二十日、息子真生(まお)が永眠しました たった八日ほどの生涯でしたが、真生は人生を全うし、天国へと旅立ちました 真生の誕生を祝福してくださった多くの方々に、感謝を申し上げます 今はまだ、真生との別れを惜しんで悲しみに暮れる日々が続いておりますが、いつかまた、笑顔で皆様と再会できる日が来ることを願ってやみません それまでの間、どうか私たち夫婦を、温かい目で見守っていただけますと幸いです」/新幹線代を立て替えていて返して貰うための入院間近な友へ「月日の経つのは早いものですね。みずほさんと奈良に旅行したのは、もう何年前になるかしら? 楽しかったわね。ところで、あの時、私が二人分の往復の新幹線のチケットをまとめて買ったのですが、その分のお代を実はまだいただいていないのです。みずほさん、あとで銀行に行っておろすわねっておっしゃって、そのままになってしまったの。 私がきちんとお伝えすれば佳かったのですが、なんだが、妙に遠慮しちゃって。ケチくさい人間だって思われるのが嫌で、黙ったまま先延ばしにしてしまいました。 あなたがご病気だっていうのを知りながら、こんなタイミングで申し出るのは本当に失礼だと思うのですが、でも私、これからもきちんとみずほさんとお付合いを続けていきたいので、思い切って伝えることにします。 お金のことでうじうじするのは、私も嫌ですし、あなただって、知らないところでそんなふうに私に思われるのは、本意ではないと思うので。病気が治ることを、切に祈っています。 そして、私にできることがあったら、遠慮なく言ってください。元気になったら、またふたりでどこか温泉にでも行きませんか?」/祖母のペンパルから孫娘へ「Buongiorno! 鳩子さん、はじめまして!静子です。あなたのおばあさまと、長く文通していました。だから、あなたのことは、幼い頃からなんとなく知っていて、勝手に、遠い親せきのおじょうさんのような気持ちでありました。ご結婚なさったのですね。おめでとうございます! きっと、天国のおばあさまも喜んでいらっしゃることでしょう。 手紙にはいつも、鳩子さんのことが書かれてありましたので。あの手紙が、鳩子さんとかし子さんの関係を取り戻すお手伝いができたと知り、私もとてもうれしくなりました。鳩子さんは、あの手紙をもう一度私の元に戻すべきなのではないかと悩まれているようですが、それには及びません。あの手紙は私にとっても、大切な人生の記録であることは確かです。だから、息子に持たせる前に、コピーを取りました。お心遣い、ありがとうございます。原本(?)は、鳩子さんが持っていてください。かし子さんも、きっとそれを望んでいます。かし子さんと文通していた頃は、ミラノに住んでおりましたが、主人も仕事を引退したので、今は北イタリアにある山あいの小さな村に暮らしています。娘も息子も独立し、今は主人と二人暮らしです。 もうすぐ、長女が出産するので、そうなると、私もいよいよおばあちゃん! これまで、かし子さんには、本当にたくさんの悩みを聞いてもらいました。主人にも、実の母にも相談できないことも、不思議と、かし子さんには打ち明けることができたのです。かし子さんに、どれだけお礼を伝えても足りません。 最後の手紙をいただいてから、私は毎日、祈るような気持ちで郵便受けをのぞいていました。来る日も来る日も、かし子さんからの次の手紙が来るのを待っていたのです。けれど、ついに届きませんでした。かし子さんが最後と書いていた手紙は、本当に最後になってしまったのです。あの時の寂しさを思い返すと、今でも涙がこぼれます。かし子さんは、私の心の友でした。 けれど、思わぬ形で、今度はかし子さんが大切に育てられたお孫さんと、またこうして文通が再開できるとは、なんというfortunaでしょう! この年になると、サツバツとした世の中に嘆くことも多くなってきますが、こんな時代でも、こんな素敵なことが起こるんですね。 戸棚を探したら、まだエアメール用の封筒がありました。かし子さんとの文通の際、よく使っていた封筒です。鳩子さんも、私のことを親戚のおばさんか何かだと思って、気軽に書いてください。私達の文通にイタリアと日本で、共に祝杯をあげましょう。In Bocca al lupo! Shiuko (In bocca al lupo!は私の大好きな言葉です。boccaは口、lupoはオオカミなので、直訳すると、「(幸運は)オオカミの口の中」です。鳩子さんのご多幸を、心よりお祈りしております!)」/川端康成から愛読者へ「菊子殿 先日の、白い帽子をかぶった大佛様は、ご覧になりましたか。あなたが、風邪などひいていないことを願ふばかりです。一生のうち、たった一人でも、あなたのような讀者と巡り合へた自分は、幸せ者です。また書きます。 康成 追伸。寒さを乗り切るには、牛肉を食べるのが一番です。」/亡くなった夫の前妻へ「美雪さんへ はじめて手紙を書きます。もう、私が誰か美雪さんにはつつぬけかもしれないけれど、一応、自己紹介させていただきますね。 私は守景鳩子といいます。ミツローさんの、二番目の妻になりました。 ミツローさんとは、鎌倉で知り合いました。ご近所さんから交際に発展し、去年の春、QPちゃんが小学生になった日に入籍しました。来月で、結婚してから一年になります。 私達の間をとりもってくれたのは、QPちゃんです。 QPちゃんといっても、美雪さんにはピンとこないかもしれません。」QPちゃんというのは、美雪さんとミツローさんの娘です。私は、彼女をこう呼んでいます。 美雪さん、QPちゃんを産んでくださって、本当に本当にありがとうございます。まずは、美雪さんにそのお礼を伝えたくて、この手紙を書いています。 QPちゃんが私の人生を変えてくれました。彼女が、私を明るい世界へと導いてくれたのです。もう、QPちゃんと出会わなかった人生を、想像をすることができません。 でもそのことに感謝すればするほど、私は美雪さんに対して、後ろめたさを感じてしまいます。美雪さん、本当に辛かったね。痛かったでしょう。 たくさんの血を流しながらも、最後までQPちゃんのことを気にかけていたんだよね。QPちゃんのことを、必死で守ったんだよね。 母親として、美雪さんを心から尊敬します。 初めて美雪さんの書いた文字を見た時、私、なんだか美雪さんのことを前から知っているような気持ちになりました。あー、私この人のことが好きだなって直感でそう感じたのです。会いたかったなぁ、美雪さんと会いたかったよ。 ミツローさんを抜きにして、友達になりたかったです。 一緒にお茶を飲んだり、旅行に行ったり、してみたかった。きっと私達、いい友情を育めたんじゃないかって、そう思うのです。だって、なんといっても、男の人の趣味が一緒ですから! ミツローさんをステキだと思う私達って、きっと、すごーく見る目があると思いません? 美雪さん、私、QPちゃんのこと、美雪さんと同じように、はるちゃん、と呼んでしまってもいいですか? 私が本気で、はるちゃんの母親になってしまってもいいですか? そうすることは、なんだか美雪さんをミリカゲ家からしめだすようで、心苦しかったの。でも、私もちゃんと、名実ともに「お母さん」になりたいな、って、この間、彼女の看病をしながら、はっきりそう思ったのです。どうか、私のわがままを許してください。 私は、モリカゲ家が世界一のキラキラ共和国になれるように、精一杯頑張ります。キラキラ共和国を、命がけで、守ります。 もちろん、美雪さんが帰ってくる場所は、いつだって、モリカゲ家に用意しておきます。約束します。 これは夢物語かもしれないけど、もしも美雪さんが、私達の赤ちゃんになってこっちの世界に戻ってきてくれるなら、それはもう、大歓迎です! だから、もしもいつか私が妊娠したら、赤ちゃんを、産んでもいいですか? 私は美雪さんの気持ちを一番にしたいな、と思っています。 もう一度言います。美雪さん、はるちゃんを産んでくれて、本当にどうもありがとうございます。 私、美雪さんのことが、大好きです。これからも、ずっとずっと好きです。 鳩子」

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最終更新日 : 2018.05.30

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