2016/09/03
〜深く考えられないが巧い表現のような気がする

「ひらいて」
〜綿矢りさ〜

『ひらいて』:綿矢りさ(わたや):2015年2月1日:\430:新潮社:県立M高校図書館
 光浦靖子が感想文を書いているが,素直な読者である光浦さん率直な反応が,綿矢さんの巧さをよく示している
〜自信満々で怒りの感情を持て余す高3の<愛>が気になっているのは<たとえ>だ。階段の隅で白い便箋を読み,読み終えた手紙は封筒に突っ込んで机の引き出しにしまっている。塾帰りのマクドナルドで隣の馬鹿高校の連中が自分の学校に忍び込むという話に乗って,門をよじ登りアクロバット張りに窓から自分のクラスのある棟に入って,<たとえ>のひきだしから手紙を1通抜き出した。差出人は<美雪>。<美雪>というと,高一の時,糖尿病対策の細い注射を弁当に時間に腹に刺して,皆に引かれたあの美雪しか思いつかない。<美雪>の後を付けると人気のない理科室に入って行って注射を取り出した。何気ない振りを装って声を掛け,友だちのいない<美雪>の家に行くまでに接近し,付き合っている男はいるだろうと問い詰めると,<たとえ>の名前が出てきた。やっぱり,そうか…でも,手を握る先へは行っていないようで,無性にからかいたくなり,吐き気を堪えてディープキスに及んでやった。実行委員になって臨んだ文化祭準備で,モザイク絵を作っていて<たとえ>と二人きりになり,<美雪>から付き合っていることを聞いていること,自分では駄目なのかと告白すると,嘘を吐いているからだめだとすげない答だ。二度目に盗んだ手紙から,二人揃って東京に出て行く積もりらしい。<美雪>に家に呼ばれて,遂に着物を脱いで<美雪>と寝てしまった。勉強に身が入らず,成績はがた落ちになり,発作的に<美雪>を抱きたくなって,終わって水を汲みに行った<美雪>の携帯のメールで,<たとえ>を学校に呼び出して,制服も下着もすべて脱いで<たとえ>の机に座って待ち,やってきた<たとえ>に裸で抱きつき<美雪>と寝たことを伝え,キスをせがんだが,気持ちを表せと言われ,その表情さえ本物でないと突っぱねられた。<たとえ>は東京の難関大学に合格し,<美雪>は付いていくらしい。<美雪>に近づいたのは<たとえ>との仲を裂くためだったと告白したが,暫くすると<美雪>から手紙が届けられた。卒業式の説明をしているホームルームの最中に<たとえ>と<美雪>に決別を告げ,ポケットに入った小銭で電車に乗り込み,くしゃくしゃになった折り鶴を広げ始め,それを覗き込んできた野球帽の男の子に「ひらいて」と告げた〜
 最後の科白,僕なら「ひろげて」だ! 京都出身の1984年生まれ。早稲田在学中の04年に「蹴りたい背中」で芥川賞。巧いね,受賞は嘘でなく,流石だ。どういう意味だろうと頭が4度ほど傾くが,考えるのを已めちゃうんだけど,そうやって綿矢さんの魔法に掛かっていくのかも知れない…光浦靖子のように

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最終更新日 : 2016.09.03

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