2015/7
〜7月に読んだ本〜

掟上今日子の推薦文 ☆☆☆ デブを捨てに ☆☆☆☆ あん ☆☆☆☆ 希望の海へ ☆☆☆☆
ラストワルツ ☆☆☆☆ ペンギンが教えてくれた物理の話 ☆☆☆☆ ラ・ミッション−軍事顧問ブリュネ− ☆☆☆☆ 宰相A ☆☆☆☆
乙女の家 ☆☆☆ 自閉症の僕が跳びはねる理由 ☆☆☆☆ 決戦!大坂城 ☆☆☆ 教団X ☆☆☆☆
閉門謹慎 ☆☆☆ マインド・クァンチャ ☆☆☆☆    

冊数が多いのは真面目に仕事をしていない証拠

読書記録の目次に戻る

15/07/31
『マインド・クァンチャ』:森博嗣(もり ひろし):2015年4月25日:\1800:中央公論新社:県立M高校図書館
★★★★
 The Mind Quencher
〜馬の息が聞こえ,小屋が囲まれたことに気が付いたゼンは,トビヒと名乗る武士に命を貰うと言われた。軍勢に囲まれたゼンは,追いつめられ,赤い面を被ったアカシの力量を読み,自分が及ばないことを悟ったが,相手の出方を必死で読もうとしたが,数カ所を斬られ,敵わないと覚悟し,崖縁から下へ飛んだ。次に気が付いたのは,野原で横たわっている状態だったが,名前も何も思い出せない。十くらいの少年はケジロと言うが,その姉・マサイは人も通わない山間で貧しい暮らしをしているが,山の奥の仙人が薬や食い物を置いていったと言い,自分は武家であって,あなたも一廉の武士だという。川で魚を掬うケジロに付いていくと,刀が滝壺にあるという。泳げるか否か分からないが,潜りを繰り返す内に,刀を拾うことができ,その刀で,ケジロを襲ってきた熊を撃退することもできた。刀を持つと落ち着く。川縁で倒れていたのは一月前だと言うが,どうやら滝の脇から落ちたらしい。滝の上に道を辿り,小屋の中で草鞋を見つけると,これは自分のものだということが分かる。一晩,小屋で泊まり,マサイの小屋に帰ろうとすると,影が語り掛け,自分をゼンノスケと呼び,マサイの小屋が盗賊に囲まれているという。盗賊は11名,頭はケジロと同じように白髪だ。ゼンが預けておいた金をタンバという盗賊が持ち去ろうとすると,マサイは自分の弟・ケジロに小刀を向け,撃退しようとするが危ない。ゼンはマサイに,タンバらを斬って良いか訊ねると頷き,あっという間に,11名を冥途に送った。翌朝,武器も遺体も一人で土に返し,その翌朝は都に通じる里・宿場に出向いた。馬問屋では,赤い鞘を持つ侍が来たら渡せと預かっている文を渡されたが,どうやら私の名はゼンで,手紙を残した三味線弾きはノギらしい。宿屋に泊まり,様子を見るが,マサイの小屋に戻ろうとすると,馬問屋から盗賊に奪われた馬が還ってきたと礼金を送られたが,ナナシによると,都から役人がやってくると言う。こうなったら,役人が待ち構えている道を辿らず,北から都へ至ろうとして,ノギが待つというちえんてらに行き着いた。住職は,若い僧に剣術の手ほどきをしてほしいと願ってきた。不遜な物言いだが,相手の剣を受けたりかわしていては,いずれ倒されるから,無念無想で相手の太刀筋と同じ場所を素早くなぞってより遠く速く剣を走らせて,敵を倒すしかないと言ってしまった。都に出て最初に声を掛けてきたのは,マサミチと名乗る。天下人の対する軍勢が整い,天下人は東の御殿に退いたという。トビヒの顔を確認しに宮に出向き,御前試合を見物するが,検分役のトビヒが気になり,思わず試合場に乗り出してしまい,トビヒと真剣の試合を行うが,無念無想の一太刀でトビヒを倒し,到底敵わないと踏んでいたアカシも一太刀で倒した。マサミチに連れて行かれた料理屋で待機し,眠っていると,迎えが整ったと言われ,自分は上様と呼ばれる。数千の行列で堀を越え,幾つも城門を潜り,供が減っていく中,玄関で迎えに出たのは母・茜の丸だと直感で分かる。天下人は出家し,ミカドの前の儀式で正式に自分が,その地位に就いたが,誰でも良いような気がする。ある日,お付きの女性が体調を崩して伏せっており,母は影武者を立てるべきだと言う。外に出ると言っても,すぐ近くでの鷹狩り。ナナシがノギが母と面会しているという。押しかけると確かに自分を見知っているノギという女性なのだろう。金は不要で都を出て行くというが,名残に三味線を鳴らして貰った。その夜,芸妓が呼ばれて歌舞音曲を味わうが,その夜,影武者に留守を命じ,次々に現れる門番に門を開けさせ,堀を泳いで越えて,チエンテラでノギと再会を果たす〜
 いやすもの?心を抑制する? ヴォイド・シェイパシリーズは,この5冊目で終わりだろう。将軍とは双子で,母によって担ぎ出された。ミヤコというからてっきり京だと思っていたら,江戸で…しかも天皇も居る? まっ,架空の国の話だろうけど。ミヤコには田も畑もないというが,それも架空の話ですね。カバーの写真は何だろうと思っていたが,当然の桜で!そう,桜って満開で撮っても,こんなもんなんだよね。目に映るというか,日本人の頭の中で再生される桜って,フィルターが掛かって居るんだよね。「無効の型削り盤」「血を掬うもの」「頭蓋破壊者」「霧隠れ」そして「無心」?

読書記録の目次に戻る

15/07/30
『閉門謹慎』:佐伯泰英(さえき やすひで):2015年4月28日:\690:角川春樹事務所:茂原市立図書館
★★★
 鎌倉河岸シリーズ26
〜享保二年師走,半月後に正月を控えた大掃除の夜,八百亀が寺坂毅一郎の出世の話があるかと大親分に尋ねる。宋五郎は知らんぷりだが,直々に北町奉行・小田切に相談されていた。この話が漏れると出世の道が途絶えるかもしれない。噂の出所は八丁堀の同心の敷地で開業する医師だった。家主の無役の同心に吹き込まれたという。毅一郎は清廉潔白で知られた人物。同心から与力に上がると,五人しかいない定廻り同心になれるかも知れないのだ。しかし,縄張りの金貸しから金銭を強請っているという流言も飛ぶ。小田切は北町奉行の地位を狙っている旗本の存在や,金を強請っている同心たちに心当たりがある。敵の出方を伺うため,寺坂を役宅に軟禁し,その間に政次と宋五郎が動き回るが,事情を知っている医師が胸を一突きされて殺され,不審な動きをする同心も殺され,それを尾行していた八百亀も頭を殴られた。筆頭老中の用人に数千両の金を貸している名主が浮かび上がる…〜
 何だか,話がすっきり解決して,エピローグが長すぎる

読書記録の目次に戻る

15/07/29
『教団X』:中村文則(なかむら ふみのり):2014年12月20日:\1800:集英社:県立M高校図書館
★★★★
 これで1800円とは,値段の基準は何なんだろう?
〜30代の楢崎透は立花涼子を探し求めて松尾正太郎という宗教家?の屋敷に行くが,教祖?は痔で入院中。吉田という坊主,峰野という美女,よっちゃんという奥方が居る。第二土曜の集会で松尾が話しているDVDを見ている内に,松尾と同じ師を持つ沢渡という宗教家の元に立花はいると知る。松尾の許から,高野君という男が沢渡の主催する教団Xに連れて行かれ,代わる代わる女と性交を繰り返す。スパイとして楢崎は連れ戻されるが,松尾の生い立ちを知り,量子の揺れと運命論が染みこんでいく。高野は父に捨てられ絶対的な飢餓を経験し,当時の父の彼女だった立花の母に救われ,13歳で恋人同士になった義理の兄弟だ。涼子は実に父の悪口を言われ続け,責められ続けていたのだ。高野はアフリカでNGOの活動中に現地を食い物にするODA企業に抗議しようとして原始宗教団体に拉致され,殺されそうなところを教祖に救われ,テロリストとして育てられたが,テロ直前で逃げ出した。日本でも死人のでないテロを企画し,資金を教団Xに求めていた。勿論,教祖には内緒だ。沢渡は系列病院を経営する医師の父の許から,発展途上国の無医村で診療にあたり,13歳の少女の結核を治して陵辱し,ついには心臓手術中に心臓に傷を付けて殺してしまった。自動的に貯まる資金を使って,性産業から娼婦を救い,自分の所有するマンションを教団の拠点にしている。高野の意図など既に承知していて,途中からテロ計画を乗っ取る。松尾は最後の説話を残して家に帰る途中で病死し,沢渡はマンションの21階で炎に包まれながら頭をピストルで撃ち抜いた。公安がテロを煽って,日本を全体主義に向かわせようとしていたが,死人は二人,教団が機動隊に囲まれながら手にした武器も模造銃だった。高野は上司から後を託された30代のハンドルネーム・子育て侍にピストルで撃たれるが,それをスマホで撮っていた立花の動画で世の中に知らされてしまう。松尾の平和主義が受け継がれるか?〜
 いやいや,確かに中村君37歳のすべてを読んだような気がする。最後の最後にフィクションだ!と書いておかないといけない怖さを感じる。p200の『「聖書」として編纂されました。中には当然,当時の教会に則さないものもあった。』…「則さない」ってこうやって使うんだっけ?

読書記録の目次に戻る

15/07/28
『決戦!大坂城』:葉室麟・木下昌輝・富樫倫太郎・乾緑郎・天野純希・冲方丁・伊東潤:2015年5月26日:\1600:講談社:県立M高校図書館
★★★
 競作第2弾
〜「鳳凰記」葉室麟(淀君)・「日ノ本一の兵」木下昌輝(真田信繁と影武者の幸村)・「十万両を食う」富樫倫太郎(米商人近江屋伊三郎が秀頼の子・国松を逃がす)・「五霊戦鬼」乾緑郎(後藤又兵衛を討った水野勝成)・「忠直の檻」天野純希(家康を嫌った越前藩主で家康の孫・松平忠直)・「黄金児」冲方丁(190cmの豊臣秀頼)・「男が立たぬ」伊東潤(千姫を落ち延びさせた福島正則の弟・正守は秀吉の位牌を坂崎直盛に託し,更に柳生宗矩に)〜
 詳伝社あたりの本かと思ったら,天下の講談社だったけど,講談って,こんなものだったよね

読書記録の目次に戻る

15/07/23
『自閉症の僕が跳びはねる理由』:東田直樹(ひがしだ なおき):2007年2月28日:\1600:エスコアール:県立M高校図書館
★★★★
 副題:会話の出来ない中学生がつづる内なる心−巻末:短編小説「側にいるから」
〜1筆談とは<お母さんが考えてくれた文字盤で意志を通じさせることで今はパソコン・話すという神経回路は使い慣れない>2大きな声は<独り言が反射的に出るのだ・呼吸と同じように>3同じことを尋ねるのは<聞いたことを直ぐ忘れてしまうからで,言葉のキャッチボールとしての遊びの要素もある>4質問されたことをオウム返しするのは<場面として思い出そうとするため>5何度言っても分からないのは<やっているときは前のことが思い浮かばない>6小さい子相手の言葉は<赤ちゃん言葉は嫌だが難しい言葉を使って欲しいわけでもない>7独特の話し方は<話しながら自分の言いたいことを纏められないため>8返事が遅れるのは<なぜか分からないけど,時間が掛かるのだ>9言葉をよく聞けば良いかというと<はい・いいえも言い間違えることがあるから,余り信用しないでほしい>10上手く会話できない訳は<関係ない言葉がどんどん出てくるのが不思議,体さえも自分の思い通りにならない>11目を見て話さない理由は<相手の目が怖いからで,見たいのは人の声>12手を繋ぐのは嫌いなのかというと<嫌いじゃないけど,他の気になるものを見掛けると手をふりほどいてしまう>13ひとりが好きかというと<嫌いなわけがなく,自分のせいで他人に迷惑を掛けているかも知れないと思うと,つい一人になろうとする>14声を掛けられて無視するのは<直ぐ近くでも気がつかないから>15表情が乏しいのは<楽しいおかしいが皆とは違うからだと思う>16体に触れるのが嫌いかというと<僕は大丈夫だけど,良い気持ちがしないから嫌いだという人もいる>17バイバイの時に手のひらを自分に向けるのは<真似が難しく,自分の目で見て確かめられる部分を動かすことが最初の模倣であるから>18ハイテンションはうれしさの表れかというと<思い出し笑いの強烈なものと思ってほしい>19フラッシュバックって<バラバラの記憶がついさっき起こったように頭の中で再現され,嵐が起こる>20少しの失敗も嫌なのは<感情が抑えられないからで,津波が押し寄せる>21言われて直ぐやらない理由は<何をやるか・どうやるかイメージする・最後まで自分を励ます・という気持ちの折り合いが付かないから>22何かをやらされるのは<嫌いじゃない,見ていてくれると強くなれる>23一番辛いのは<自分のせいで悲しんでいる人がいること>24普通の人になりたいかというと<自分を好きになれるなら,普通でも自閉症でもどちらでも良い>25跳びはねるのは何故かというと<気持ちが空に向かっていて,縛られた縄をふりほどくよう籠の鳥のように羽ばたきたい>26空中に文字を書くのは<覚えたいことを確認するため>27耳を塞ぐ理由は<人が気にならない音が気になるから>28手足の動きがぎこちないのは<手足がどうなっているのかがよく分からないからで,手足がどこに付いていてどうやったら思い通りに動くのか分からない・触覚にも問題があるかも>29みんながしないことをするのは<気持ちが感覚の異常を引き起こしているのではないかと>30痛みに敏感だったり鈍感だったりするのは<ジグソーパズルのような記憶の中に他のピースが混じって今までの記憶が壊れる>31偏食は<自分で食べ物だと感じたもの以外は食べても美味しくない・美味しいと感じられるまで時間が掛かる>32ものを見るときは<最初に部分が入り込んでしまう・普通は全体から>33衣服の調整は<暑くて倒れそうでも服を脱げば良いと云うことを忘れてしまう>34時間の感覚は<区切りがなくて戸惑う・次の一瞬,自分が何をしているか不安>35睡眠障害はなぜ起きるのかというと<分からないし,時間が経てば直るかも>36ものを回すのは<回転するのが刺激的で規則正しく動くから>37手のひらをひらひらさせるのは<光を気持ちよく取り込むため>38ミニカーを一列に並べるのは<並ぶのは愉快で快感>39水の中が好きな理由は<静かで自由で幸せだからだが,僕たちは原始の感覚を残したまま生まれた人間だから,そこに帰りたいのだと思う>40TVCMが好きなのは<別に好きじゃないけど繰り返し見て短いし,結末を知っているから安心>41好きなテレビ番組は<お母さんと一緒,ストーリーが単純で安心>42時刻表やカレンダーを覚えるのは<数字の意味するものが単純明快で好きだからで,曖昧な表現は苦手>43長い文章が嫌いなのは<根気がなくて苦手なだけで嫌いじゃない>44競走が嫌いなのは<速く走るためにどう動かしたら良いか考えていて手足が停まっちゃい,順位を付けるまでは理解できても勝つと言うことの楽しさが分からない>45散歩が好きなのは<自分の命と同じくらい緑が好きだから>46自由時間は<いつもやり馴れていることをして安心していたい>47楽しみは<自然相手に遊ぶこと>48すぐにどこかに行ってしまうのは<タイムスリップみたいに,いつの間にか体が動いている>49迷子になるのは<その場所の居心地が悪いから・森の奥深くとか海底だと良いのに>50家出のわけは<何かに誘われるとしか言えない>51繰り返し同じことをするのは<脳が要求するからで,それに従わないと地獄に落ちるような感覚>52何度注意されても分からないのは<官でしたようなピリッとした刺激がある>53こだわりは<こだわりが他人の迷惑にならないなら放っておいて,迷惑なら周りの人の力でやめさせてやってほしい>54合図がないと動かないのは<信号が青にならないと横断歩道を渡れないように,どうぞ・いいよ・でようやくスイッチが入る>55いつも動いているわけは<魂が体から抜け落ちるような不安で,出口を探しているから>56視覚的なスケジュールは<強く記憶に残りすぎて気になるのでやめてほしい>57パニックになるのは<複雑な感情は持っていて繊細なのだ>58自閉症についてどう思うかというと<自分が作った物語だけど,文明の支配を受けずに自然のまま生まれてきた人なのだ>:短編小説「側にいるから」スーパーに行く途中で車に撥ねられた僕は嘆き悲しむママが気の毒で生まれ変わりを神様にお願いした〜。
 会話はできないけど,筆談は出来るようになった1992年生まれの男の子が中学時分に書いた。7年で18刷を重ねる。短編小説はよく書けていた。あらすじを書いたら35字程度だけど

読書記録の目次に戻る

15/07/20
『乙女の家』:朝倉かすみ(あさくら):2015年2月20日:\2000:新潮社:県立M高校図書館
★★★
 女三世代が暮らす
〜若竹若菜は高校2年生,中の上の高校で,中の上のグループに属している。今日も「あの人」がやってくる。一人になりたいと言う父の希望を入れ,母・あゆみは私と二つ下の誉を連れて祖母・洋子の家に戻ってきたが,普通の家庭と同じようにするため,銀行勤めの父(がきっちょおやじ・功)が平日の夕食を家族で摂るという要求を受け入れたのだ。今晩,12時に図書室で知り合った図書委員の文学少女・高橋さんと家出を決行する。家の目の前のコンビニに行く振りをして,待ち合わせの駅に行くが,電車もバスもなく,始発までファミレスで待つことにした。行き当たりばったりで,女の武器を使えば過ごせると話していると,黄土色・赤茶色・黒のヤンキー3人組が馴れ馴れしく迫ってくる。初代R総長である祖父安藤の名を出すと恐れだした。行き場所がなくなった二人は,曾祖母が暮らすマンションのエントランスで夜明けを待ってそれぞれの家に帰らざるを得なかった。仲良しグループの手帳を見ると予定がびっしりで,若菜も予定を書き込みたく,高橋さんと一緒にバイトをしようと,純喫茶ウィーンで話を切り出すと,高橋さんは既に定食屋をバイト先と狙いを定めていた。募集1名だというので,若菜はスーパーに狙いを切り替えたが,レジは埋まってしまい鮮魚部で刺身をトレイに盛る役を振られた。定食屋のバイトに不採用となった高橋さんは,純喫茶でバイトを開始した。年末は忙しく,クリスマスは若菜の家で高橋さんと過ごすが,誉は高橋さんを見て上気しているようだし,祖母・洋子さんはスナック・ルイジアンナに行く前にわざわざ若菜の部屋にやってきた。洋子さんが若い男と腕を組んで歩いている様子を高橋さんは見たと言い,男性とつきあい始めるかもと言い出す。高橋さんは幼稚園の頃,好き嫌いのある友達に替わって何でも食べてやり,猿の物真似が得意な活発な子だったが,病弱キャラに憧れて挫折し,文学少女キャラに収まったのだという。若菜はどんな集団にいても主人公にはならず,キャラのない脇役だ。高橋さんの恋を成就させたいし,祖母と安藤との仲も回復させたいし,父母も元鞘に収めたい。高橋さんの好きになった相手というのは,あのファミレスで絡んできた黒・五木元重で,インテリア安藤でクロス屋の修行をしている20歳で,夕食はバイト先に定めた定食屋で摂っているのだ。洋子さんと腕を組んで歩いていたのも五木,通称ひろしだ。スナック内の様子はマンションへ帰る父に偵察を依頼し,若菜は確実にあのファミレスに来るように念を押すようにインテリア安藤に赴き,曾祖父・祖父と初対面を果たす。父の報告で,通称ひろしは病弱で,病院で准看護婦として働く洋子に色々相談し,就職先も斡旋して貰っていたのだ。報告を聞くついでに,父母は只の別居ではなく2年前に離婚している告白を聞かされる。翌夕,スナック・ルイジアンナに赴き,祖母洋子さんと篩知り合いのマスターとママに事情を聞き,後から来た祖父は,思い切って復縁を切り出すと約束した。家に帰ると,カレーを食べながら,誉にすでに離婚していること,こうした生活はもうやめるべきだと両親から切り出される。父の暮らすマンションで鍋パーティーをやると計画して,両親が話し合いの機会を持つという作戦も通じそうにない。祖母と曾祖母から,洋子が結婚するという報告がもたらされる〜
 「乙女の家」というのは,シングルマザーばかりが暮らす家ってことで,高橋さんの命名。その高橋さんって若菜から見ると少々風変わりであるが,誉から見ると美少女ってこと,がやっぱり女の子の視点だ。科白と科白の間で頭が激しく回転しているのが描かれているが,確かに頭の良い人ってグルグル高速回転するのだろうけど,それを文字にされて読まされるのは疲れるのです。朝倉さんは書く(キーボードを打つor口述)のも速いのだろうけど,読むのはそうも行かないので,疲れます

読書記録の目次に戻る

15/07/18
『宰相A』:田中慎弥(たなか しんや):2015年2月25日:\1600:新潮社:県立M高校図書館
★★★★
 宰相Aは安倍だ
〜いくらエッセイを書いても小説を書きたくても書けない苛々が募り,30年前に蛸のぬめりを塩でしごいて取っている最中に心臓発作で死んで,O町の教会に葬った母の墓を参れば,小説を書けると列車に乗った。金メダル確実と言われたアメリカの女性フィギュアスケート選手が転んで金を逃し,笑みを浮かべていることから始まる僕の生まれた年の話を母の声で聞いたが,これは夢に違いない。目が覚めると目的のO町だったが,O町はOとだけ表記され,列車から降りると,周りの人々は驚愕の表情を浮かべているが,皆が皆,緑の制服を着た人々は金髪・蒼眼を持っていて,英語を喋っている。N・P(ナショナル・パス)を持たないため,軍に連行され,ようやく話が通じる女性が説明するには…日本国にときどき紛れ込む旧日本人がいる…平和の為の戦争をアメリカと共に展開している日本に旧日本人は協力するでもなく反抗するのでもなく,同化するのを拒んでいる…旧日本人が日本人になる道がない訳でなく,首相は旧日本人のAである…間もなく釈放され居留地へ連れて行かれるであろう…。居留地に行くと,伝説の反逆者Jの生まれ変わりだと言われ,肖像写真と手記を教会内で見せられる。確かに僕Tとそっくりで,僕の出現を予言している。緑の制服を作る工場で働くことになったが,工場長と同僚によって虐げられ,緑の制服も手に入らない。何よりも母が飲む薬を手に入れねばならないのだ。制服代を天引きされつつ,もう一着分を支払って制服を手に入れて帰宅すると,母は自ら命を絶っていた。翌日,鉈を手に職場へ向かい,手当たり次第に斬りつけて,捕まった…裁判に期待できず,間違いなく死刑だ。勝手にJの生まれ変わりだと期待されても,こちらは只の小説家だ。墓を探して小説を書きたいが,紙と鉛筆がない。紙と鉛筆が欲しいだけだ。飲み屋でかつてJの生まれ変わりと期待されて飽きられた痩せた男が翌日捕らえられ,橋の上で吊された。暴動の雰囲気に,例の軍に所属する女が,居留地で僕の身柄の引き渡しを求めてきた。旧日本人は議論するだけで何も結論は出せない。居留地に掛かる橋に,交渉役の女が車を乗り入れてきた。僕は話し合いのために車に乗り込むが,女は僕を相手に性的欲求を満たしたいだけだ。話し合いは進まず,緑の軍団は包囲網を縮めてくる。最後の拠点,教会も崩壊し,僕の上にJの肖像画が落ちてきて気を失った。皮製の拘束衣を着せられて連れてこられた映画館の舞台では肉体関係を持った女が逆さに吊られ,気持ちを通じさせただろうと拷問を受ける。最初は水で,次は汚物で,最後に性器に熱した油を掛けられて…。僕に対しては電極を通じて電流が送られ続ける。僕は…認可作家だ〜
 宰相Aは戦争主義的世界的平和主義に基づく平和的民主主義に基く平和的民主主義的戦争の既決たる,戦争及び民主主義が支配する完全なる国家主義的国家…ま,ナンセンスっで事!

読書記録の目次に戻る

15/07/15
『ラ・ミッション−軍事顧問ブリュネ−』:佐藤賢一(さとう けんいち):2015年2月25日:\1850:文藝春秋:県立M高校図書館
★★★★
 フランスものだが,舞台は日本
〜幕府の軍事顧問団として来日したブリュネ中尉は,大阪に練兵場を作ると聞いてきたのだが,薩長軍と将軍が鳥羽・伏見で戦闘に及び,大坂城に退却したが,諮問があるかと待っていても,慶喜自らが江戸に逃げ帰ってしまったのだ。江戸に帰っても,巻き返しを図るでもなく,小栗を更迭して,主戦派を遠ざけて,勝安房を起用している。当然,フランスからの軍事顧問団も用済みとなり,ヨコアマで無聊を託っている。新撰組の土方やオランダ帰りの大鳥,榎本などは意気盛んで,ブリュネは休職して伝習隊と行動を共にしたいが,ロッシュの代わりの新公使ウートレーは,タイクン政権に肩入れして敗れた穴を,イギリスの尻馬に乗ることで失地回復を狙っているから許されるはずがない。イタリアの新公使館披露目に和装で出たブリュネは,ナポレオン3世にまで手紙を遺し,横須賀から開陽丸を旗艦として2500名の旧幕臣と共に北を目指した。海は荒れ,開陽丸の直径24cmの心棒を持つ舵は捻じ切れた。仙台で,会津から撤退した連中も乗り込み,蝦夷が島でアコダテを人質に取る作戦だ。イギリスが乗り出してきても,海軍力では劣るが,陸軍力で負けるわけはない。鷲の木で上陸して,45kmを転戦しながら函館からミカド軍を追い払い,松前藩も青森に追い払った。蝦夷共和国は榎本を総裁に選び,軍備を固めたが,開陽丸は遂に座礁し沈没した。蝦夷平定記念に来航したフランス海軍のデュプレクス号のトゥアール中佐は,ウートレーから妻トミが窮地に立たされているのを知り怒りに震える。局外中立を放棄したイギリスの思惑で,アメリカからストーンウォール・ジャクソン号がミカド政府に引き渡され,内陸3kmの位置にある五稜郭は,艦砲射撃の的になる。回天丸ほか3隻でストーンウォール号の乗っ取りを宮古で仕掛けるが,嵐でバラバラになって外輪船の回天一隻で拿捕できるわけはなかった。五稜郭が艦砲射撃の的になっても五稜郭が陥落したわけではない。イギリス人は突撃などやらないからだ。現に陸軍でもイギリス士官が指揮している。しかし,兵は薩長!勇猛なサムライだった。士官の命令を無視して突進してくる。ブリュネは負けを覚悟し,何としてもヨコアマに帰って,停戦の仲介をフランス公使にやらせる腹を決めた。ヨコアマに帰っても上陸は許されず,トゥアール中佐が受けた命令は本国送還だった。中佐の銃を奪い針路を北に返させ,死んだカズナーブ伍長の代わりに,イジカタを乗せた一行は,フランスで大歓迎を受ける〜
 フランス人は熱血漢が多い!フランス人はHを発音できない。久し振りの佐藤賢一モノでした

読書記録の目次に戻る

15/07/08
『ペンギンが教えてくれた物理の話』:渡辺佑基(わたなべ ゆうき):2014年4月30日:\1400:河出書房新社:県立M高校図書館
★★★★
 バイオロギングという手法
〜鳥,マグロ・サメなどの魚類,クジラなど哺乳類は片道5千キロから1万キロの大移動をしている。鳥は中〜高緯度の偏西風で東に飛び,低緯度の貿易風で西に飛ぶ。高緯度地方のオキアミなど大量発生で地球の南北を移動する。鳥は終わらない夏を享受できるが海の生き物は阪急内の南北移動だ。大洋を泳いで横断する猛者は体温の高いマグロ類とネズミザメ目のサメである。バイオロギング機器には@人工衛星に電波を飛ばしドップラー効果で測位するアルゴスシステムA鳥に使われる1年間の照度を記録し天測の原理を使ってアラク測位するジオロケータB魚の追跡用で,設定した日に切り離され水面に浮かび人工衛星にデータを送るハイブリッドのポップアップタグがある。息をこらえて泳ぐ動物でホオジロザメ,エンペラーペンギン,シロナガスクジラが平均8kmで及ぶ。大きな体の動物ほど速く泳ぐ。ダイビング界の優はウェッデルアザラシは300〜400を繰り返し潜っていて,1回20分ほど,最深は741m長さ67分。ゾウアザラシは1753m,マッコウクジラ(脳油を冷やしたり温めたりは外れらしい)は最深記録は2035mだが,外洋性のアカボウクジラ科はもっとだろうし,アカウミガメは10時間潜水する。アザラシは息を吐き出して,肺が潰れて容積が小さくなると重力に従って沈み,必死で浮かび上がってくる。インドガンは大きな肺や有酸素運動に特化した筋肉という体質で負担を小さくするコースとスピードで羽ばたいてヒマラヤを越え,ハチドリは小さな体と大きな心臓と胸筋を持ち花の蜜という糖分の塊を摂取することに特化。アホウドリは長い翼で多くの空気をゆっくり動かし,減速しながら舞い上がり,加速しながら舞い降りる振り子運動をする。羽ばたきは,翼の周りに前縁渦という特殊な渦を発生させている。アホウドリは46日間で地球を一周,ウェッデルアザラシは1時間近く息が止められ,クロマグロは太平洋の端から端まで横断し,グンカンドリは三日三晩着地することなくふわふわと舞い続ける〜
 生態学に物理の考え方を導入した方が良いってことをペンギンから教えて貰った?? ま,いいや。著者は1978年生まれの国立極地研究所の助教。飛ぶ鳥の対空速度を測る方法を鵜の泳ぐ速度の研究失敗から学んだ。バイオロギングの明らかにした野生動物のダイナミックな動きを紹介し,その背景にあるメカニズムや進化的な意義を明らかにすることをペンギン物理学と勝手に名付けてしまおう。3章の扉写真に使われているワニの話ってなかったような…

読書記録の目次に戻る

15/07/07
『ラストワルツ』:柳広司(やなぎ こうじ):2015年1月20日:\1400:KADOKAWA:県立M高校図書館
★★★★
 戦火の馬の作者でなかったら手を出さなかっただろう。ほかに何か読んだかなぁ?
〜「アジア・エクスプレス」瀬戸礼二は新京から大連へ向かう満鉄特急<あじあ>号で,ソ連領事館勤めのモロゾフと接触する予定だ。新聞を持って洗面所に行くモロゾフを確認したが,特別室には黒尽くめの者が入っていった。ソ連のスパイ狩人スメルシュはユダのカードを置いていく。特別室の客を炙り出すため,空調の弁を壊すのが良い。仕込み杖を上に突き出そうとする瞬間,車掌に呼び止められ,封筒入りの切符を差し出す瞬間,スポイトが付いている小さな針で突いた。「舞踏会の夜」五條侯爵家の三女は札付きだと思われている。姉二人が乗っていない送迎車の運転手を唆して駆け落ち未遂を計り,家出回数は数知れない。家出していく先は横浜のダンスホール。猥雑な場所で知り合った女のアヘン買いたさに,裏切られ,愚連隊に囲まれた顕子を救った軍人風に見えない男は,顕子の素性を言い当てて,いずれ会って踊ろうと約束した。男色の海軍中将と結婚して好き勝手なことをしている顕子は,戦争が迫り来る中,最後の舞踏会だと,張り切って皇紀二千六百年を祝うアメリカ大使館の仮面舞踏会に参加して,オペラグラスで男を捜しているが,なかなか現れない。ラストワルツに誘った相手は,少女時代の顕子を救った人物だ。耳元に囁きかけられたが,夫が家に持ち帰った機密を移したマイクロフィルムをペンダントの中から抜き取られ,男から渡されたオペラグラス型のカメラも持ち去られた。「ワルキューレ」在ドイツの日本大使館の内装屋としてやってきた雪村はスパイだ。大使の部屋から盗聴器を外すことが任務だ。大使の部屋に自由に出入りできる俳優の逸見も怪しいが,盗聴器はナチスが仕掛けたものに違いない。監督でもある逸見の現場にゲッペルスがやってきて,警告を発する。映画費用の私的流用か,女優を巡る諍いか。雪村は逸見が脅迫状を送られてあたふたしている場面で,自分がスパイであることを明かし,先手を打つことを勧める〜
 スパイを放っているのは,陸軍D機関だけでなく,海軍もだ!伊号作戦も絡めて! 中編三つで迫力に欠けるかな?

読書記録の目次に戻る

15/07/05
『希望の海へ』:マイケル・モーパーゴ:佐藤見果夢(さとる みかむ)訳:2014年7月30日:\1680:評論社:県立M高校図書館
★★★★
 戦火の馬の作者でなかったら手を出さなかっただろう。ほかに何か読んだかなぁ?
〜第1部<アーサー・ホブハウスの物語>アーサーは孤児だった。キティという姉がいて,別れるときに小さな鍵を貰ったのを覚えているが,今では姉自体が想像の産物かもしれないと思っている。イギリスから他の孤児同様に船に乗せられ,船酔いで吐く度に仲間から非道い扱いを受けたが,首謀者のウェス・スナーキーを5歳年長のマーティーが殴り倒してから,アーティーが保護者となった。オーストラリアに着くとグループ分けされ,バスで辿り着いたクーパーズ農場で,主・ブタ・ベーコンから奴隷のような扱いを受けた。マーティーが,そしてウェスが鞭打たれ,一番の被害者はウェスでハンガーストライキの後,仲良しの馬・ビッグ・ブラック・ジャックに乗って脱出したが,首の骨を折って戻ってきた。妻のアイダは当初,夫に逆らえなかったが,子供らの肩を持つようになり,猟銃を夫に向けて,寮に火を付けようとしたが失敗した。その晩,僕とマーティーはビッグ・ブラック・ジャックに乗って逃げ出した。途中で黒い人々に拾われ,数日を過ごして置いてきぼりにされたが,それは野生の有袋類を保護して野性に帰しているメグズおばさんの牧場だった。7年を過ごしたぼくらは,メグズおばさんの知り合いであるフレディ・ドッズの小さな造船所に勤め始め,船のこと,海のことを学んだ。しかし,酷い不況を乗り切るために,ドッズは造船所に放火し,誤って警察がマーティーを捕らえると,堪らず自首していった。マーティーは荒れ,酒に酔って海に落ち死んだ。造船の仕事は見つからず,マグロ船に乗って多くの美しいマグロたちが殺されるのに嫌気がさし,海軍に入って駆逐艦乗りになったが,オーストラリアはベトナム戦争に参戦し,見えない所から北ベトナム兵士を殺している事に嫌気がさして除隊した。オーストラリア中を放浪し,最後に気が付いた時には,タスマニアの精神病院に強制入院させられた。人間扱いしてくれる看護婦・ジータに身の上話をする内に回復し,退院すると,造船業を営むジータのクレタ島から来た父に認められ,船の設計を任され,ジータと結婚して,アリーという娘を得た。アリーは造船所で職人たちと育ち,ヨットレースに出ては優勝してくる生まれながらの船乗りだった。幸運の鍵・キティの話をすると,ヨットでイギリスに帰って,キティを探す夢を持つに至ったが,僕の脳に腫瘍ができて,治療はできず,自分の物語をアリーに口述して残すことが精一杯だった。第2部<キティ4号の冒険>父アーサーが決して沈むことのないヨットを残してくれた。GPSも自動操舵装置も衛星電話もパソコンもある。16歳のアリーは父の遺志を継いで,東回りでホーン岬を迂回し,イギリスへ行くルートを選択した。嵐に何度もあって何度も転覆したが,キティ4号は立ち直った。ISSのクルーとも国際電話で話をし,メールで近況を送って,HPも更新して,じいちゃんの造船所の宣伝も十分以上にできたが,一番の支えは,一緒に来たアホウドリ。大西洋を北上する際,出し放しの釣り糸を手繰ると,心の支えを引き摺って殺していた。ただただ北上したが,間もなくイギリスが見える場所で嵐に遭い,転覆して復元する際に,腕を折ってしまった。自分で応急処置をしたが,誰かが落としたコンテナで舵を壊され,救助隊に助けを求めた。列車でロンドンに向かう際,オーストラリアから波を探して放浪しているマイケルと意気投合したが,ISSのメンバーだった博士が,テレビでキティ探しを呼びかけ,カナダに住む伯母と会うことが叶った。父に渡した小さな鍵は,ロンドン橋落ちたのオルゴールの螺子巻きだったのだ〜
 マイケルの話は必要だったのだろうか。帰りはどうしたのだろう? ま,蛇足になりそうだが。戦争で人口が減少した旧イギリス領植民地と本国との間で,戦争孤児を中心とした児童植民が当人たちの意思を無視して行われていた

読書記録の目次に戻る

15/07/04
『あん』:ドリアン助川(すけがわ):2015年4月5日:\600:ポプラ社:県立M高校図書館
★★★★
 樹木希林と永瀬正俊で映画化
〜千太郎は大麻で塀の中に2年いて,取り調べでも名を明かさなかった大将が,借金を肩代わりしてくれて,東京のはずれの町のどら焼き屋・ドラ春で働いているが,好きでやっているのはないので,皮は焼いても,餡は練らない。冗談半分で出したアルバイト募集の張り紙に応募してきたのは,70過ぎの指がひん曲がって顔が引き攣っている吉井徳江だ。断り続けても,持ってきた粒餡を食べて気が変わった。丁寧な作り方をしていて,評判が上がり,売れ行きは絶好調だ。客の前には出さなかったが,次第に客とも会話を交わすようになった。中学生のわかなちゃんという女の子は色々世間話をしているようだが,指の事を聞いてきた。それから次第に客足が途絶える。死んだ恩人の未亡人オーナーは,ハンセン病の老婆を首にして,お好み焼き屋に商売替えしようと提案するが,自ら身を引いた徳江に,わかなが飼いきれないカナリアを預けるために療養所を訪ねると,酒飲みで食べられる塩どら焼きはどうかと意見を貰う。塩どら焼きが巧く行かない時,オーナー夫人が甥を連れてきて,無理矢理お好み焼き屋に転換して,千太郎は店をやめ,塩漬け八重桜を使う夢を見て,療養所をわかなと訪問するが,徳江は肺炎で10日前に死去していた〜
 2時間で読めます。そうそう・・・ハンセン病も取り上げているんだっけね・と思い出した。自分の今の状態を巧く使うとは,流石の役者魂

読書記録の目次に戻る

15/07/03
『デブを捨てに』:平山夢明(ひらやま ゆめあき):2015年2月25日:\926:文藝春秋:県立M高校図書館
★★★★
 非日常的だが…
〜「いんちき小僧」(MATURE BRAT)金がなく腹が減ってキャラメルを万引きして見つかった俺に,街路樹の葉っぱと犬の糞を混ぜた偽大麻を売るつける仕事に誘ったジュンイチローの出来過ぎた息子・キチザは,家族ごっこをやっていたのだ。「マミーボコボコ」(DIRTY WOMB, CRAZY NUTS)35年会ってない娘と再開するのに付いてきてほしいというオッサンは,再開の場をテレビが撮ることに興奮しているが,娘一家は七男五女の大家族<痛恨・ジャンボパイー>だった。まともに見える聖琉翔君が推薦されたにも拘わらず,学級委員長選挙で一票も入らず,学校を飛び出して,飲酒無免許運転で事故を起こしたら,プロデューサーも見放した。「顔が不自由で素敵な売女」(CHASING MANQ)マンキューの酒場でアルバイトをしている俺は,風俗店で,頭が禿げていてるチョチョミのジョブを受けたが駄目で,店デベソに来いと言ったら本当に常連になった。元高校の担任でポン中の男に貢ぐために風俗で働いているが,髪はその男に頭皮ごと毟り取られたのだという。デベソにはウチダユキを愛した仲間というオヤジが来て,マンキューに俺も遠ざけられた。その男は,中学の時に仲間とプールで溺れ死なせた娘の親だという。精神的に追い詰められているマンキューの店に耳を男に囓り獲られたチョチョミが誘う。「デブを捨てに」(DUMP THE FATTY)謝金返済に詰まり,ゴーリーの娘を捨てに,ビンテージもののオープンカーを走らせるが,トイレに行くために降ろすために一苦労。血糖値が下がって嘔吐すると,俺も車も反吐まみれ。8千円で洗車する間,農家の婆さんに風呂を使わせて貰うと,その家の者でなく財布を持ち逃げされた。客をクソ豚呼ばわりする店で大食いに挑戦したデブ娘は賞金を手にするが,俺の服代までは出ない。最中200個に挑戦したが,店主は10万の賞金を出し惜しみ,5千円でケリをつけようとするから,デブの反吐で反撃した。走って逃げて,ラジエーターの故障とガス欠により峠で停まったが,ガソリンを買いに行っている間に,昔工務店だった兄弟に車を奪われそうになって殴られ,痩せていたときの写真を取り戻そうとして,地震で重機のキャタピラに潰されそうになる末の妹を助ける羽目に。行き着いたサガガワ米穀店で待っていたのは,ゴーリーの手下の残忍なケムリだった…〜
 ありそうもない話だが,猟奇的な事件の報道を聞いていると,あるかも知れないと思ってくるなぁ。パーパーバックの体裁も面白い

読書記録の目次に戻る

15/07/02
『掟上今日子の推薦文』:西尾維新(にしお いしん):2015年4月22日:\1300:講談社:県立M高校図書館
★★★
 備忘録と挑戦状を繋ぐ?
〜僕・親切守は念願叶って警備会社に就職し,美術館に派遣された。よく訪れる白髪の女性は一枚の絵の前で1時間佇む。思わず理由を訊ねるが,2億の価値があるという。別の日,同じ女性がスルーするので聞くと,前回のことは憶えておらず,価値は200万だと百分の一になってしまった。探偵で推理するなら有料だという。その前後,スケッチブックを持ってクロッキーで模写している男の子は,箔井陸であり,抽象画は母なる大地を描いているのだと教えられる。次に来た袴の老人は和久井と言い,いきなり杖を絵に振るった。取り押さえたが,美術館長の知り合いらしく,僕が規定以上の退職金を貰って身を引くことで一件落着した。この泡銭で掟上今日子に推理を依頼する。和久井翁は,額縁制作所の警備を依頼してきた。所有する高層マンションに画家の卵を無料で入居させ,地下で200万の絵を2億にする額縁を制作しているのだ。今日子に警備の手伝いをさせようと相談すると,現場を見てアドバイスはできると言う。和久井翁は電話に出ず,呼び出しにも応えないため,今日子は事件が起きたと,セキュリティを突破して,下腹にペインティングナイフが突き立てられた瀕死の額縁匠を発見し,一命を救う。犯人はこの中にいると32階から各戸を訪問し30階では市役所から来たという今日子さんの嘘を箔井君に見破られた〜
 台詞と台詞の間の心風景が余計だなぁ。これで嵩増ししているようで,冗長。天才少年がどう絡んでくるかと思ったが………まあ妥当な決着だ

読書記録の目次に戻る

15/07/
 
★★
 
〜〜
 

読書記録の目次に戻る

最終更新日 : 2015.08.01

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送