2012/6
〜6月に読んだ本〜

鋼の魂 ☆☆☆☆ ブラッド・スクーパ -The Blood Scooper ☆☆☆☆ ワンス・アホな・タイム ☆☆☆☆ 道化師の蝶 ☆☆☆
ピエタ ☆☆☆☆ ジョン・マン 大洋編 ☆☆☆☆ 世界一のあきらめない心 ☆☆☆☆ オルセー印象派ノート ☆☆
パスタでたどるイタリア史 ☆☆☆ ジョン・マン 波濤編 ☆☆☆☆ 下山の思想 ☆☆ 喋々喃々 ☆☆☆
もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら ☆☆☆☆ 弁護士探偵物語 天使の分け前 ☆☆☆☆ 人類の歴史を変えた8つの出来事T ☆☆ 迷子のアリたち ☆☆☆☆

冊数が多いのは真面目に仕事をしていない証拠

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12/06/26
『迷子のアリたち』:ジェニー・ヴァレンタイン:田中亜希子(たなか あきこ)訳:2011年4月18日:\1400:小学館:県立M高校図書館
★★★★
 原題"The Ant Colony" 小学館のSUPER!YAシリーズ
〜17歳の家出少年サムは田舎からロンドンに出てきたが,スーパーのアルバイトをみつけアパートも格安物件をみつけて入居した。持ってきたのは数枚の着替えとマックスから貰った2冊のアリの生態に関する本で,人と係わりを持たずに自分を消してしまいと考えているが,おしっこ犬・ドアマットを飼っているおせっかいばあさんのイザベルがアパートの住人と引き合わせようとし,10歳の赤毛の女の子・ボヘミアがうるさくまとわりついてくる。停電をきっかけにサムとボヘミアは接近し,ボヘミアの母親・チェリーが男や酒やドラッグの問題を抱え娘を学校にも通わせていないことを知ると,サムも少しずつ自分の事を話さざるをえない。家出の理由をうるさく訊かれたサムがボヘミアを傷つける発言をして遠ざけるとボヘミアはアパートから姿を消してしまう。大家のスティーヴもチェリーとくっついたミックもボヘミアを心配するが,金を持たずに家出したボヘミアは帰宅せず,警察にも連絡できず,チェリーは憔悴している。家出の理由を訊かれたサムは,友達だったマックスにやらかした非道いことの数々を語り,マックスがポンコツをリペアした車を共有地で乗り回した挙げ句に衝突させてマックスが首を折って重傷を負った経緯を喋らざるを得なかった。家出したボヘミアがアリの本を持ち出し,その本の中にへそくりの200ポンドがあったことが判り,どこにでも行ける可能性に心配は増す。イザベルの滅多に鳴らない電話はサムの母親からの呼び出し音だった〜
 最初は静かな立ち上がりで,サムの家出の理由を知りたかったが,だぶだぶのトレーナーに犬を抱えた赤毛の女の子がアクセントになっていて厭きさせない。少女の家出からは急展開。緩・緩・緩・急急急・・・ハッピーエンド! やっぱり幸せな結末が待っている方が良い。地球上の全てのアリを集めると,その重量は全人類の重量を上回る・・・というのは面白い。緻密な計算(構造)を持つ小説だった

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12/06/24
『人類の歴史を変えた8つの出来事T』:眞淳平(しん じゅんぺい):2012年4月20日:\880:岩波書店:県立M高校図書館
★★
 ジュニア新書だから,こんなものかな
〜言語・宗教・農耕・お金編〜
(有)エコ・パブリッシング代表。編集者・ライター。1962年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。青山学 院大学大学院国際政治経済学研究科、法政大学大学院社会科学研究科修了。国際政治学修士。経営学修士。集英社勤務を経て独立。環境問題、社会問題、国際関 係等に関する書籍の企画、取材・執筆をおこなう。大学の先生なら学生に研究成果を書かせて盗むという方法もあるのだが,まあ勉強好きで本が好きなら苦にならないのだろう。新たな事実は,大衆が「たいしゅう」でなく「だいじゅ」と読むこと,勉強好きで結婚が遅れたのか,彼の子が男で5歳であること。本用の写真もWikipediaやphotolibraryで調達するんだねえ

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12/06/20
『弁護士探偵物語 天使の分け前』:法坂一広(ほうさか いっこう):2012年1月24日:\1400:宝島社:県立M高校図書館
★★★★
 『このミステリーがすごい!』第10回大賞受賞:保坂晃一「エンジェルズ・シェア」を加筆
〜ノキ弁の俺は医師の妻子殺しの被疑者である内尾の国選弁護人となったが,鬼瓦のような警察官が作った供述調書に同意することができない。接見しても被疑者が分からない・憶えていないを繰り返すばかりだからだ。法廷で検察官が読み上げる供述調書に内尾は同意したが,同意できない弁護人は裁判長に呼ばれて翻意を促されたが,遂に辞任を余儀なくされ,弁護士会からは1年間の業務停止処分を受けることになり,ボス弁の許を離れざるをえ得なくなった。探偵の真似事でお茶を濁し,処分が解ける直前に受けたトマト缶男の追跡は,妻・笙子の魅力に惹かれたからかも知れない。尾行が終了し,元バーの鍵の掛からない事務所に帰ってくると,扉に足を挟んだ大男・寅田が酔い潰れて眠っており,妻子をザイルで絞め殺された夫であり父であることが分かった。強制入院措置を受けた内尾を訪ねてみる気になって,大野原病院を訪ねるが,体よく追い返されてしまった。翌日,弁護士を呼んでいる同病院の土屋という患者を訪ねる振りをして,内尾を捜してみるが,総務課長は脱出したと云う。用事を足して事務所へ帰ると,今度は本物の絞殺死体に遭遇し,被害者が内尾であると分かったが通報する方法を考えている内に,トイレから飛び出してきた大男に後頭部を殴られ,おまけに警察に通報され,殺人の被疑者として緊急逮捕されてしまった。黙秘を貫き,送検された後に,警察の捜査で自分が犯人ではないことを示す証拠が次々と現れ,処分保留で釈放された。事務所へ帰り,依頼主である佐藤笙子が訪ねてきたが,どうも何かが引っ掛かる。そうだ,トマト味のパスタの名を知らなかったのだ。実家を訪ねて,依頼主が笙子を名乗っていた別人であることを知り,寅田と話し合う内に,トマト缶男こと佐藤が製薬会社勤務で,大野原病院に出入りしていること,精神病院で自殺者が絶えないのは当然の事として,その隙に医療過誤があって,看護師が自殺したことを考え合わせると,擬似薬を納品させて患者に服用させ,よく効く睡眠薬は闇に流しているだけでなく,夫婦揃っての入院患者を殺しておいて,遺された保険金を残った片割れから病院に寄付させる大野原病院のあくどい手口が知れてきた。寅田の妻も出産前まで大野原病院に勤務する看護師だった。土屋を連れ出して,病院側に揺さぶりを掛けるしかない。それにしても,偽の依頼人・ショウコは一体,何者なのか〜
 1973年福岡生まれで京大在学中に司法試験合格した現役弁護士。弁護士への相談料は単価は5,250円。憲法に書いてある人権は絵に描いた餅のようで,裁判所も検察庁もお役所,警察は法知らずの法の番人。弁護士が書いているから真実味は増すけど,22口径は良いとしても,45口径が出てくると嘘くさくなってしまう。ええ,面白かったですけど,続編はどんなもんだろう。こんな経験は一世一代の大冒険ではなかろうか。犯罪者だって,あの弁護士が出てきたら勝ち目はない・・・早めに降参しましょう・・・罪を重ねる必要はないと・・・手を挙げてしまうのではなかろうか? 現役弁護士でペンネームを作ったのか,変えたのか

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12/06/19
『もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら』:工藤美代子(くどう みよこ):2011年5月20日:\1300:メディアファクトリー:県立M高校図書館
★★★★
 1950年生まれのノンフィクションライター
〜不思議体験のエッセイ〜
 新潟から早稲田大学に入学し立ち上げた出版社が成功した父と下町生まれの母の間に生まれ,小学校の時に両親が離婚,仕送りがたっぷりあって不自由のない生活を送って,高校卒業後,東欧の作家に目を付けていた父の命令でチョコに留学,カナダに移住し物書きを目指す。二度目の結婚はカナダの大学の先生で,物書きとして芽が出始めて日本とカナダを往復する内に夫婦仲が冷え込んで離婚,その一年後に日本人のサラリーマンと再婚。腹違いの兄がいて,日本脳炎から心身障害者となった兄や唯一の次世代を産んだ姉がいて,腹違いの兄弟がまだいる。複雑な家族関係だなあ。出入りが激しくて,母親と同じ墓に入るという母の片腕の女性もいて,もう大変。霊的な体験をしても後で気が付くので役に立たない。絶対に嘘を書かない。真実を書くという気持ちで,事実を掬い上げる

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12/06/17
『喋々喃々』:小川糸(おがわ いと):2009年2月5日:\1500:ポプラ社:県立M高校図書館
★★★
 凝った料理やグルメが愛するスイーツが登場する純愛不倫物語?
〜谷中の長屋で着物の古着屋を営む栞はお茶会に着る着物を探しに来た春一郎に惹かれる。北陸からデザインの専門学校に進学するため上京してきた時は,雪道君と同じアパートの隣同士の部屋に住んだが,イラストから着物に関心が移り,古着屋を開業し,雪道君は年上の女性と結婚したが,年賀状と暑中見舞いの交換だけは続いている。母と妹・花子とタネ違いの楽子が都営住宅にいて,外国人相手のコンパニオンをしている花子は着物を借りに来るのだが,楽子は母が美容師との不倫で生まれた子で,これが原因でバスの運転手をしていた父と離婚し,実家に帰った父は自給自足の生活を送り染織家の女性と再婚している。父が万引きしたと聞いて驚いて深夜バスで父を訪ねると義理の母の姿がない。鶏が狐に殺された事をきっかけに不便な暮らしを嫌って家を出た妻をトイレの改装で呼び戻そうとしているらしい。東京に戻り,春一郎に呼び出されて食事に出掛けたり,店舗兼住宅で同じ時を過ごすと,彼が町田の一軒家で妻と娘と三人暮らしをしている事が判ってくるが,気持ちは益々春一郎に惹かれていく。暑中見舞いの返信が一段落しても雪道君からの返事は届かず,立秋を過ぎた頃に店を訪ねて封筒を置いて帰った女性は雪道君の奥さんで,封筒の中の手紙は4年前に夫が亡くなっていて,病床で知り合いに未来に出すことを求めたはがきを作り続けていたが,この夏に出すべき暑中見舞いの宛名の住所は台東区と書くのが精一杯だったと知り,墓の住所を知ることができた。隅田川の花火の夜に訪ねてきた春一郎に出掛けたい場所に付き合って欲しいと栞は話す。御殿場線で墓参りに行った帰りは小田原で別れるが,谷中には春一郎が待ち構えていて,古い日本旅館に付き合わされ,二人は初めて結ばれる。都営住宅で花子が好物とする栗ご飯を炊いたが,楽子の風邪を貰って,時間も分からず寝込んでいると夢現の中に自分の名前を呼ぶ声が聞こえる。心配して訪ねてきたのは春一郎で,カレーうどんを作ってくれるが,優しくされればされるほど春一郎の家族の事が思い出され,もう来てくれるなと帰そうとする栞に春一郎は抵抗しない。12月は着物で過ごそうとする客で忙しく,雑誌の仕事も入って忙しく過ごし,母・妹の為のお節も用意し,雑煮の準備も整った。大晦日の夕方,春一郎がやってきて栞は招き入れる〜
 何だか面白くない。誰でも一度は失敗する? まあ,そうかも知れないけど,栞は男にとって都合の良い女になっているのではないか? 奥さんと娘が気の毒なんだけどなあ。純愛といえば純愛かも知れないけど,世間的並みに考えれば,ただの不倫。男は不倫,女は純愛という擦れ違いだな

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12/06/15
『下山の思想』:五木寛之(いつき ひろゆき):2011年12月10日:\740:幻冬舎:県立M高校図書館
★★
 何で新書なのか解らない雑文集・・・新書にすると売れるんだろうけど
〜日本がギリシャ化するのも間もなくだという人がいる・日本は病人大国だ・民とは真実に行き当たれない人々だ・登山に譬えると下山に掛かっており足許を確かめながら歩かなくてはならない〜
 五木寛之を読んだのは本当に久し振りで,ああ彼は70台後半で,僕の上の世代・叔父くらいの人。宗教に注目しているらしく親鸞を描いた本を出しているが読んでいない。親鸞の師・道元にも思索を巡らせていて,聖フランチェスコと同世代だと気が付いた。フランチェスコというのはフランスっl子ぐらいの意味らしい。父親はイタリア人だが母親がフランス人,道元も母親が渡来人であったというシンクロが面白い

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12/06/14
『ジョン・マン 波濤編』:山本一力(やまもと いちりき):2010年12月31日:\1600:講談社:東部台文化会館
★★★★
 ちぇ,こっちが一冊目だったか!
〜ニューベッドフォードの捕鯨船・ジョン・ハウランド号は大西洋で鯨が激減したことを受け,太平洋に出漁することを決めた。土佐国・中の浜・12歳の少年・万次郎は遠目が利くことで周囲から妬まれ,大喧嘩をして,宇佐浦へと逃げ出す商人船で筆之丞と知り合い,網元・徳右衛門に厄介になることになった。いないはずの海上に鳥山が立つのを見つけて,鰹漁を成功させ,仲間に認められた万次郎は,かしき役として新造舟・徳右衛門丸の初漁に参加したが,延縄に慣れていないせいで初日の水揚げはなく,室戸岬沖で最終日に豊漁に恵まれたが暴風雨に見舞われ,漂着したのは絶海の孤島。百数十日後に通り掛かった大型の船からは小舟が漕ぎ出された〜
 中編が「大洋編」であったが,なに「大洋編」が頭でも不思議ではない。米国船の話は,それなりに格好をつけた表現を用いれば良いのに,依然とした一力節。それでもサクサクと読めてしまうのは流石ではある。新聞小説かと思ったら書き下ろしであったので吃驚

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12/06/13
『パスタでたどるイタリア史』:池上俊一(いけがみ しゅんいち):2011年11月18日:\980:岩波書店:県立M高校図書館
★★★
 岩波ジュニア新書699
〜古代メソポタミアで栽培され始めた小麦は,ギリシャやローマでは粉にされてパンの材料になるとともに,練り粉をラザーニャのようにして食べることも始まった。中世では初期に小麦文化が衰退し,雑穀や野菜・豆類のミネストラが農民の日常食になる。水との結合の食品が登場したのは11〜12世紀で,乾燥パスタがシチリアで,生パスタが北方イタリアで作られ始めた。小麦が機長だったので普及しなかったが,徐々に増産され,新大陸から南瓜・トウモロコシ・ジャガイモ・香辛料などが導入され,トマトソースが創造されて17世紀に野菜食いからパスタ食いへと市民が変貌したが,近代の経済危機や貧困化でパスタ消費は減り,1861年の政治的統一は食・料理の国家統一を担う要素にパスタはなった。20世紀前半,パスタは国家の発展を阻害するというキャンペーンもあったが,消えることはなかった〜
 面白い視点だが,タイトルが気を持たせすぎ。内容はしっかりしているだけに残念。庶民は雑穀,ブルジョワは肉という時代が長かった。最近はマンマの味が失われてきたかも

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12/06/12
『オルセー印象派ノート』:辻仁成(じつ ひとなり):2010年5月25日:\1700:世界文化社:県立M高校図書館
★★
 2010年5月から8月に掛けて六本木・国立新美術館で行われた「ポスト印象派」のオフィシャルBOOK
〜《ボール:ヴァロットン》《戦争:ルソー》《階段を上がる踊り子:ドガ》《赤毛の女・化粧:ロートレック》《ベッドでまどろむ女:ボナール》《木々の中の行列:ドニ》《愛の森のマドレーヌ:ベルナール》《レ・ザリスカン:ゴーギャン》《日傘の女性:モネ》《星降る夜:ゴッホ》で綴るある女の一生とオルセーの画家たち印象派・旅手帖〜
 私には彼が気持ち悪い。ちびでやせで,長髪。女と見間違えるが結婚しているんだものね。フランス在住のお洒落な作家はフランス文化を日本に紹介するのに持ってこい。絵を見に来て,気に入ったら,フランスにも遊びに来いという手法で,1700円。私はわざわざ行かないけど

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12/06/11
『世界一のあきらめない心』:江橋よしのり(えはし):2011年9月5日:\1500:小学館:東部台文化会館
★★★★
 なでしこジャパン栄光への奇跡
〜2011FIFA女子ワールドカップを文字で再現〜
 感動し,よろこんだ記憶が甦る

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12/06/10
『ジョン・マン 大洋編』:山本一力(やまもと いちりき):2011年12月19日:\1600:講談社:東部台文化会館
★★★★
 ジョン・マンジロウのお話
〜土佐国・宇佐浦の新造船・徳右衛門丸は天保12(1841)年正月に36歳の筆之丞を船頭に出航し,難破し鳥島に漂着した。筆之丞の弟・23歳の重助は脚に怪我を負い,その弟で17歳の五右衛門・24歳の寅右衛門,そして14歳の万次郎はアメリカの東海岸・ニューベッドフォードの捕鯨船・ジョン・ハウランド号に救出された。礼儀正しく,姿勢を崩さない彼らを乗組員として乗員に加えたが,重助の脚の具合は悪く,妙な病気を移されたくない銛鍛冶職人が騒ぎ立て,料理人の手によって切開・縫合することが万次郎と絵描きとの筆談で通じ合えた。鯨が姿を見せず,疫病神だと思われ始めたころ,万次郎の遠目の利くのが幸いして,73フィートのマッコウクジラを仕留めることができ,信頼を勝ち得ることに成功した。万次郎以外の4人はハワイに入港して船を下り,万次郎が暫く捕鯨船に乗って琉球まで行く船賃を稼ぎ出すことになり,捕鯨船はグアムにも寄港して,母港へ帰った〜
 有名人だよな。結構,高知県って有名人が出るよね。後半は「波濤編」

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12/06/09
『ピエタ』:大島真寿美(おおしま ますみ):2011年2月18日:\1500:ポプラ社:県立M高校図書館
★★★★
 ヴィヴァルディの謎
〜ヴィヴァルディが旅先のウィーンで亡くなったとヴェネツィアの慈善院ピエタに伝わり,<合奏合唱の娘たち副長>のアンナ・マリーアと共に事務方を任されているエミーリアは深い悲しみに陥る。捨て子を世話するピエタは公演活動でも資金を得ているが,永遠にヴィヴァルディ先生との縁が切れてしまい,更に心配だ。貴族の娘でありながら合奏に加わり嫁入り時にたくさんの楽器を寄付したヴェロニカは夫が死んで実家に戻り,先生の死を悲しみ,エミーリアを屋敷に呼んだが,自分のために先生が書いたパート譜を見つけてくれれば,大きな寄付をする用意があると申し出,あなたが兄嫁になっていたら人生が変わっていたと嘆く。妹たちに訪ねてみても譜面はなく,先生のお気に入りの歌い手ジロー嬢も知らない。コルティジャーナのクラウディアなら何か知っているかも知れないと尋ねてみると,彼女はエミーリアの事も承知していたが,譜面については覚えがないという。先生の妹たちから譜面を買い漁ったものがいるとヴェロニカに報告すると,それは兄嫁が手を回したものだと決めつけ,気に入らない兄嫁を詰るヴェロニカにクラウディアを紹介すると,エミーリアとの縁談が途絶え,嫁の持参金で持ち直した実家の実情や,先生の思い出で話に華が咲く。数年後,見知らぬ男性の訪問を受けたエミーリアは,クラウディアが死の床に就いていると知らされ,痛みに苦しむクラウディアの為に薬屋に嫁いだジーナを頼ると,先生を承知していて,薬は自分が都合するとの申し出を受けるが,薬は高価なアヘンであり,資金はヴェロニカに頼るしかない。ヴェロニカは窮地のクラウディアを屋敷に引き取り,アヘンの効果で起きあがれるようになり,ゴンドラの漕ぎ手のロドヴィーゴの歌もアントニオが教えたもので,是非聞きたいと窓の下に訴える。自分を葬る際にはロドヴィーゴのゴンドラで運ばれ,歌を歌わせるようにエミリーナに約束させた翌日,クラウディアは亡くなった。質素なミサを挙げ,先を進むゴンドラから聞こえてくる歌を聴いたヴェロニカは自分が譜面の後ろに書いた詩であることに気が付いた。譜面は老いたゴンドリエーレの下にあったのだ〜
 よく調べましたねえ〜。ちょっとしたミステリーだし

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12/06/05
『道化師の蝶』:円城塔(えんじょう とう):2012年1月26日:\1300:講談社:県立M高校図書館
★★★
 第146回芥川賞受賞作
〜「道化師の蝶」旅の間にしか読むことができない本があるという着想,着想を捕らえる銀糸で出来た小さな虫取り網は架空の蝶を捕らえ,A.A.エイブラハム氏は友幸友幸氏が各地に残した原稿で富を築き,死後も財団を作って足跡を追っている。手芸を各地で習い憶え手芸本をだす。「松ノ枝の記」十分な語学力がなく,辞書を引かずに翻訳したものは原本とは異なり,著者がそれを読んで翻訳し直す。それを互いにやっているものだから儲かるはずもはく,悪戯心も起こってくる。10時間掛けて時差が1時間しかない著者の住まいを訪ねると姉という人物が迎え,彼女の手は何かに取り憑かれるように彼への主張を筆談始める〜
 本当にこのような話だったのだろうか。まとめてはいけない気がするが,難解で途中読み飛ばしても飛ばしたことにも気が付かないから良いか。途中で寝てしまったら,夢の中で一つの数字,212,267,うん違うな,9で割り切れる数だったはずが浮かんでは消えて途中で目が覚めてしまった。精神衛生には害があるかも知れない

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12/06/03
『ワンス・アホな・タイム』:安東みきえ(あんどう):2011年11月:\1400:理論社:東部台文化会館
★★★★
 「頭のうちどころが悪かった熊の話」よりずっと良い
〜「おめざめですか,お姫さま」夜明け前に寝床を動かすと魂が別の肉体に移動することを知った退屈姫君が庶民の生活を体験すると,母親の女王の様子がおかしい:「バカなんだか利口なんだか」荷役の仕事がロバの死で断たれた若者は池で小人を釣り上げ,人参を貰ったのが気に入らず,泉に投げ入れると泉の精は金と銅と普通の人参を投げ返す。金の人参を手に入れたい仕立屋が金の人参と引き替えに若者にぴったりの服を着せて見違える程立派になった若者に恋をした姫君が城に連れて行くと,黒馬に乗る首なし騎士を倒す試練を王は課す。馬に人参を与えようとして取り出した胴の人参の輝きは騎士のバランスを崩させ,断崖に消え,残った黒馬に普通の人参を与えて仲のよくなった馬を連れ帰ることに成功した若者の荷役の仕事は大きな利をもたらした:「きみの助言」森の中で育った双子の妹姫は我が儘な姉姫に直言することを憶え,世継ぎの姉姫は皆から疎まれる:「ウミガメの平和」几帳面で我が儘な王子はウミガメのまん丸な卵が気に入って,それを食べると言い始め,ウミガメの産卵砂浜で夏休みの初日を過ごすと既に絵日記に記す:「呪われた王子たち」双子の兄王子は自惚れが強く,弟王子は同じ顔をしているのに何にも自信が持てす,17歳の誕生日の前日のパーティーに来た美しい少女が,誕生の際に悪い魔女が掛けた鏡の呪いを語る:「木霊の住む谷」母親と二人で村に暮らす少年は森の中で旅芸人の一座と知り合い仲良くなるが,魔物だと信じて疑わない村人との間に挟まれ,村側に立たざるを得ず,山に向かって「もう合わない」と大声を張り上げるが,木霊は「また会おう」「会いたい」と返すのだった〜
 意地悪な気持ちをぐっと抑えて・・・という感じのお伽噺。気に入ったのは木霊の住む谷。タイトルを見て中身を思い出せなかった「バカなんだか・・」の粗筋が一番長くなった

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12/06/02
『ブラッド・スクーパ -The Blood Scooper』:森博嗣(もり ひろし):2012年4月25日:\1800:中央公論新社:県立M高校図書館
★★★★
 年に一冊なのか!
〜ゼンは道を歩いている内に雨に降られ,小屋で休んでいると鳥の夢を見た。人の気配で目が覚めると,侍二人が言い争いをしている。若い侍は今にも剣を抜きそうだが,年配の侍は金を渡して村から出て行くことを懇願した。年配の侍・クズハラは自分の仕事を助けないかと誘い,気が向いたら道場を訪ねるように言い残して去る。宿屋でうどんを食し,弟子が一人いるきりで,先程の若い侍が言いがかりを付けてくる。道場で見た弓を自分で作ってみたくなり,竹藪に入って竹を伐ると,庄屋の娘ハヤに引き留められ,離れでもてなしを受け,竹の石の話を聞いて,一晩を過ごすが,明け方気配を見せない人物にはやく立ち去るように忠告される。家宝である竹の石を伐りだしたのが師のカシュウであると聞き,それを狙う盗賊が庄屋宅を狙っていると聞いたゼンは,ハヤの身を守るために加勢する決心をする。縁談を持ち込んだ都の叔父に手紙を送るハヤを宿屋へ送る際に,姿を見せた侍キダとは立ち合わざるを得なくなり,後ろに控えた二人に斬りつけ,平常心を失ったキダも討ち果たすことができた。カジハラは祭で人が出てくる晩が危ないと云い,警戒するが,翌晩の雨をついて賊が東の塀をよじ登って敷地内に侵入した。数人に斬りつけたが,屋敷内に侵入した賊を追うが,主シシドと女は既に息がなく,竹の石も奪われていた。無用の闘いを避けようとするバサカの日本の太刀の筋を読み,剣を打ち合わせることなく倒したゼンは,闘いの最中に聞いたパンという鉄砲にクズハラと弟子が倒されたことを知る。14人を討ち倒したにも拘わらず,宝は見つからず,賊が残した馬に乗ると,賊の根拠地に連れて行かれた。そこには意外なことにクズハラが鉄砲を構える商人風の男と待ち構えていた。必死の筋を読んだゼンは,商人がシシドの弟であることを知り,竹の石を持ち帰るが,クズハラの剣はゼンの肩に傷を負わせていた。屋敷に帰ると,ハヤは全てを承知しており,竹から石を取り出す方法をゼンは教授する〜
 年に一冊かぁ・・・。ゼンがどう成長していくか楽しみだが

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12/06/01
『鋼の魂』:仁木英之(にき ひでゆき):2012年4月20日:\1500:新潮社:県立M高校図書館
★★★★
 年一回の刊行,但し100円アップ
〜ラクシアからチベットの医術に惹かれた一行はラサを目指すが,ジ海で南詔が行っている征服活動は目を覆うばかり,程海で釣りをしゃれ込むという僕僕先生と王弁は,馬銀槍という土地の顔役を湖に放り投げるが,不思議な雰囲気の漂う宋格之という者に,親を失った子供達が作った村に案内され,チベット僧で医者のドルマと再会する。ドルマはチベットの王位継承者であったが,雲南で治療にあたっていて,程海に毒を投げ入れた犯人と疑われていた。宋格之は劉欣の所属していた帝の暗殺・間諜集団である胡蝶で捜宝人として育てられた者で,成都の西の城で呉倫が持っている小箱に目を付け,回天鋤で倒したが,その娘につきまとわれ,南詔に親を殺された子供らを庇う呉紫蘭を救って村を作り,子供らを休みなく働かせているのだった。程海で僕僕先生は雨蛙を釣り上げるが,それは月の神・常蛾の付き人であるが毒を飲んで小さくなってしまったという。先生の丸薬を飲んで湖の底を進むとあっけなく女神は発見された。ドルマへの疑いは解けたが,嫌疑を掛けさせていたのは胡蝶の手の者であり,チベットに接近しないようにという唐の戦略の表れだった。宝が程海に沈んでいるとい聞いた開元皇帝は,南詔を動かして,神仙たちに鋼人という神を引き上げさせようと軍を催す姿勢を見せた。南詔やチベット・唐も兵を出すとなると大混乱になると王弁は,馬銀槍を説得し,僕僕先生と王弁,劉欣と蒼芽香と吉良の二組が湖の底を探索する。地上では南詔の軍が近付き,宋格之や馬銀槍が奮戦するが多勢に無勢。湖の底から蒼芽香の母を求める歌が呼び起こした首のない鋼の甲冑像に宋格之は取り込まれ,南詔を撃退した〜
 僕僕先生の第6弾。唐の開元皇帝・李隆基が出てきて,その支配を雲南にも広げようとする生臭さがある。次はチベットか?来年のお楽しみ・・・何せ書き下ろしだから

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12/06/
 
★★
 
 
 

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最終更新日 : 2012.06.27

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