2010/07/22
そういうことか〜

「天国旅行」
〜三浦しをん〜

『天国旅行』:三浦しをん(みうら):2010年3月25日:新潮社:\1400:県立M高校図書館
 「心中」を共通のテーマにした短編集。タイトルと冒頭の歌詞はTHE YELLOW MONKEYから採る
〜「森の奥」:死んでしまえば良いのにと妻から云われ,樹海で首を吊ろうとするが惨めにも失敗し,青木と名乗る若い男と奥へ踏み出し,睡眠薬入りのウィスキーを呷るが。「遺言」:高校の時に知り合い,駆け落ちを試み,東京で大学生活を送ると,結婚をし,出版社勤務と高校勤務となったが,妻の口癖は「死のう」であり,駆け落ちの際に持参した青酸カリを持ち出して迫るのだ。「初盆の客」:祖母がなくなり,見知らぬ従兄が訪れ,佐賀で出征する男と結婚をしたが,折り合いが悪くて従兄弟の許に嫁いできたのだという。祖母がどういう女だったのか語り合い,茶を入れようとして台所に立った隙に客は消えていた。実際に従兄は存在していたが,訪れた客は既にこの世にはいない祖母の長男らしく,実際の従兄を婿に迎えることに。「君は夜」:昼は普通の学生だが,夜見る夢は小平という浪人と暮らしているのだ。昼間でも小平と巡り会おうとするが安易には発見できず,数歳上の上司がそれらしいと付き合ってみても妻子ある男との暮らしに矢張り幸せは見えないのだった。「炎」:憧れの先輩が高3の夏休み最後の日に,サッカーのゴール前で焼身自殺した。付き合っていたはずの同級の女は真相を突きとめようと近付いてくる。日本史担当の秋に結婚予定の教師が噛んでいるようだ。女は拡声器を持って屋上から責任者が名乗り出るように脅し,私も仲間に引き入れられた。「星くずドライブ」:郊外の医学部に通う僕にも同棲する文学部の彼女がいるが,迂闊にも彼女が死んでいることに気が付かなかったのは僕に霊を見る特殊能力があるからだ。彼女の体はゼリーのようで冷たく,途切れがちの記憶を辿ると,何者かの運転する82km/hの車で跳ね飛ばされて,山中に埋められたらしい。彼女はこれからもずっと一緒にいるのだろうか。「SINK」:小料理屋が上手く行かず,セダンでカーブに突っ込み海に沈んだ一家の中から僕だけが助かり,祖父に育てられ美術の才能を活かして門扉作りに励む僕の傍らには祖父の家に引き取られてからずっと心配してくれる友達がいて・・・車から抜け出す時に掴まれていた足首の感触だけが残っている〜
 「森の奥」がスカッと気持ち良い。「星くず・・」が深く考えさせられ,そうそう・・・という感じ。物語として良くできているのは「SINK」だ。「炎」は女の執念の深さが感じられるが,「遺書」のように男の立場で語られるとちょっと違うように感じる。それは「君は夜」や「初盆の客」のような一人称でも駄目な訳だ。小説新潮の発表順に載っているが,作者の好不調が読み取れるような気がする。随分,読むべき本として手許にあったが,ようやく読めて安心

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最終更新日 : 2010.07.22

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